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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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37話

 わたしの決闘宣言にまず答えたのはマリア・フォン・ウェーバー……ではなく、リタだった。


「メロディ!あなたも驚いていると思うけど話を聞いてよ!」


 リタはマリア・フォン・ウェーバーに駆け寄りながら説明をする。


「マリアはただ、こけそうになっているところをこっちの従士が支えようとしたら従士もこけてぶつかって、それで回転がついたままあなたにぶつかっちゃっただけなの!」


「……ごめんなさい、素直な感想なんだけどそれでこうはならないでしょ」


「だよね!」


 どうやらリタは一部始終を見ていたようだが、その彼女の説明でも状況がわからないってどういうこと?

ムーサ師匠が地母神の定めたことは必ず起きるって言ってたけれど起こし方が無茶過ぎる。

というかこの状況、わたしが決闘を受けるんじゃなくて決闘を挑む方になってない?先走り過ぎた?

不安になりつつマリア・フォン・ウェーバーの様子をうかがう。


 改めて見ると彼女は可憐な雰囲気の美少女だ。

その所作から鍛錬を積んでいることがうかがえるが積極的に決闘(ケンカ)を売りに来る人間には見えない。

リタに続いて従士らしき少年と少女――【道標】によると少年の方は『攻略キャラ』らしい、も駆け寄ってきて心配そうに彼女を見ている。

……やっぱりこれわたしの方が難癖をつけて決闘を持ちかけているみたいじゃないか?

少し冷や汗が出だしたところでマリア・フォン・ウェーバーは口を開いた。


「メロディ・ドミナント・テンションさん、まずは非礼をお詫びします。そして……」


 わたしを真っ直ぐに見つめる瞳には、わたし好みの強い光が宿っていた。


「わたし、マリア・フォン・ウェーバーの挑戦を受けてくださったこと、心から感謝します!」


 堂々とした決闘宣言。

講堂内はざわめき、リタと従士の少年少女が慌ててマリア・フォン・ウェーバーを止めようとする。


「どうしたんですかマリアお嬢様!事故なんですから決闘なんてしなくても!」


「そうだよ、メロディだってちょっと混乱してるだけでゆっくり話せばわかってくれる子だよ」


「マリアお嬢様……もしかして運がいいとか思っています?」


「えへへ、そうだよヨハンナ。リタ先輩、ヨハン、心配してくれてありがとう。でもこんな機会、わたしは絶対に逃したくないの」


 会話の感じだと、ぶつかって鞘当てをしてしまったのは完全に事故だが関係ない戦いたいと?

事故とはいえ無礼の後にこれとは、この娘見た目によらず大胆不敵。

これは未来のことに関係なく返り討ちにしてわからせてやらねば。


「話は聞かせてもらった、決闘をするなら見届人が必要だな?」


 王国の生徒達の中からセバスティアン王太子が歩み出てきた。


「ええ、まさか止めに来たわけではないのでしょう、王太子?」


 わたしの答えにセバスティアン王太子が苦笑しながら返す。


「まさかだろう、フロイライン・メロディ。このセバスティアン・ヴァン・クラシックが見届人を務めよう。二人とも構わないな?」


「もちろん構いません。よろしくお願いします、王太子」


「ありがとうございます、王太子」


 マリア・フォン・ウェーバーは不敵な行いとは裏腹の可憐な微笑みをセバスティアン王太子に向ける。

それを見た彼は、わかりやすく顔を真っ赤に染めた。

前々から迫っているんだったか、でも見た目に騙されてない?



 生徒達が場所を開け、わたしとマリア・フォン・ウェーバーは距離を取って向かい合う。

わたしを応援する黄色い声が聞こえてくる中、見届人であるセバスティアン王太子が決闘開始の合図をした。


 その瞬間、マリア・フォン・ウェーバーが後ろに飛び【飛燕剣(ソニック・ブレード)】の衝撃波が届かない距離まで退いた。

怖気づいて逃げた、わけではないことが【魔弾(フライシュッツ)】の存在を知るわたしにはわかる。

それは【飛燕剣(ソニック・ブレード)】では届かなくとも、【魔弾(フライシュッツ)】なら射程範囲。

マリア・フォン・ウェーバーが剣を突き出すと【魔弾(フライシュッツ)】が放たれ、恐るべき速さでわたしが立っていたところに着弾する!


 もちろん回避するわたしだが、そのくらい当然だろうというようにマリア・フォン・ウェーバーは【魔弾(フライシュッツ)】を連射する。

そう【魔弾(フライシュッツ)】とは、【飛燕剣(ソニック・ブレード)】より遠くまで、早く届き、威力も高くおまけに連射性も損なわれていない上位剣技。

【古代超帝国オーケストラ】よりも更に以前、歴史から消された超古代に地母神が定めた理により()()()()()()()()()()()()()()()()()

しかし【魔弾(フライシュッツ)】はその理を完全に無視しているのだ。

それは魔法でしかできないはずのことであり、剣技でそれを成したのは正真正銘彼女一人だけだとムーサ師匠は言っていた。


 というわけで【飛燕剣(ソニック・ブレード)】の衝撃波は牽制に使うものだが【魔弾(フライシュッツ)】の衝撃波は遠距離から一方的に相手をなぶり倒すことが出来る。

今のところなんとかしのげているが、うん、これムーサ師匠との特訓がなかったら攻略法わかっていても負けてたな!

皇帝陛下ならこの距離を一瞬で詰めて接近戦に持ち込むのも余裕だろうが、陛下以外にはもうどうしようもないんじゃないかこれ?

だがわたしは負けられないし、負けたくないし、負けない方法をもう掴んでいる。

だからわたしは、足を止めて【魔弾(フライシュッツ)】を受けた。



 誰もがみなメロディが攻撃を食らった、と思った。

しかし次の瞬間、攻撃を食らったのはマリアの方だった。

なぜなら【魔弾(フライシュッツ)】は【飛燕剣(ソニック・ブレード)】の上位剣技であっても、()()()()()()()()()()()()――跳ね返すことが出来るという特性を持っていたからだ。

もちろん跳ね返すには繊細なタイミングと位置の調整が必要だが、メロディはそのコツをムーサ・カメーナエとの特訓で習得しており、だからこそマリアは【魔弾(フライシュッツ)】が跳ね返されるものだとは知らなかったのだ。


 跳ね返された【魔弾(フライシュッツ)】を食らって生まれたマリアの隙を放置しておくメロディではない。

その隙に距離を詰めて【飛翔剣(ソニック・ストライク)】で斬りかかる。

マリアは咄嗟に剣を構え受けるも――受けきれない。

衝撃で体が浮き、そこにメロディの追撃【斬空剣(レイジング・ブレード)】が襲いかかる!


 避けられない敗北、それを悟り――マリアは笑った。

その笑顔を見た瞬間メロディは、そこにマリアのまだ高みを目指せることに喜びを見出す強き精神を察し――やはり笑ったのだった。


 【斬空剣(レイジング・ブレード)】で地面に叩き落されたマリアは剣から手を離す。

それは敗北を認めたことを示す作法だった。

魔弾(フライシュッツ)】が攻略されたことに驚いていたセバスティアンも、それを見て我に返り判定を下す。

決闘はメロディの勝利に終わったのだ。

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