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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
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36話

「あら……お久し振りね、レゾナンスくん。わたしが充実した学校生活を送っていることになにか問題でも?」


「あはは、問題なんてあるわけありませんよ。僕は素直に貴方が侵略ではなく友好を望むようになってくれたことを喜んでいるんです」


「聖都に世俗の争いは持ち込まない、それだけよ」


 なにが『侵略ではなく友好』だ、【宰相派】は【大将軍派】が功を立てるのが嫌なだけだろう。

わたしとレゾナンスの間に漂う不穏な空気に周りにいた帝国の生徒達もざわめき出す。

リズムとオクターヴがこいつをどう黙らせます?と目線を送ってくるのでどうしようか考えていると、さっきまでぼーっとしていたブルースが仲裁に入ってきた。


「二人とも落ち着いて、他国の方も見ていますよ」


 なんだかんだで婚約者、わたしが引っ込みやすい理由を用意してくれるものである。


「……そうね見苦しい真似をするところだったわ。ありがとう、ブルース」


「ご心配をかけてすみません、ストレインくん。それでは帝室に近しい()()()()帝国を代表して、他国の生徒達にご挨拶をしてきましょう」


 こいつはやっぱり腹立つな……

しかし家格からいえばレゾナンスが代表となるのが妥当なのは事実、わたしはリズムとオクターヴに目配せしてレゾナンスの後に続かせた。


 レゾナンスが最初に挨拶することにしたのは公国の方だった。

公国の中心人物にはもちろん現公王であるクレシェンド・ピアノ・コンチェルト公。見たところ優しげな雰囲気だが、所作がいちいちぎこちない。

【道標】の記述では能力を隠しているようだったが、細かい所作まで演技しているとすると実に恐ろしい。

隣には婚約者であるレガートが寄り添っている。

そして帝国からの亡命者――地母神に託宣を授けられたらしいノイズ・マイナー・セブンスコードも近くにいた。

ノイズは最後に見たときと比べてかなりやつれているようだ。

事情を知っているので大変だな、と思いつつその隣の人物に目をやったときわたしは衝撃を受けた。


 この子、わたしと同じくらい強い。

所作から伝わるノイズの隣に立つ少年の強さに驚くわたしに、【道標】が表示を変える。

そこには彼の情報――『攻略キャラ』であることを示す記述があった。


『ロック・モード 攻略キャラ 所属:【ピアノ公国】-

  【ピアノ公国】の若き騎士。

  摂政フォルテに将来を嘱望される俊才。主人公と同学年。

  帝国風の名前にコンプレックスがあり、過剰に帝国を敵対視している。

  ノイズとは互いに唯一腹を割って話せる関係。

  自軍ユニットとしての性能は範囲攻撃スキルを持つアタッカータイプ。』


 いろいろと書いてあるが、そんなことはどうでもいい。

今年と来年の剣術トーナメントで彼と手合わせできるかもしれない可能性にわたしの胸は高鳴った。



 メロディが本来の目的を忘れかけていたその少し前。

マリア・フォン・ウェーバーは従士であるヨハンとヨハンナと共に幼馴染のリタ・ワーグナーから挨拶するべき相手の紹介をしてもらっていた。


「帝国は宰相テンポ公爵の子息であるレゾナンスくん、大将軍ビート侯爵の子息であるリズムくん、それにブルースくんっていう伯爵家の子息にマリアとの運命的なものを感じるかな。それと……」


 メロディが予測した通り、ワーグナー家に伝わる先導者(コンダクター)とは【道標】にある『主人公』のこと、即ちマリア・フォン・ウェーバーのことである。

大陸の運命を握る彼女は、リタの説明を遮り問う。


「リタ先輩、わたしと噂の彼女に()()()()()()はありますか?」


「うん?メロディ・ドミナント・テンションのことなら……ばっちりあるね!」


 リタの答えにマリア・フォン・ウェーバーは瞳を輝かせる。

そしてメロディに向かって運命の一歩を踏み出し……つんのめった。


「えっ?えっ、え~~~っ!?」


 バランスを崩したままとん、とんと前へ進んでいく主を支えようとヨハンが前に出る。


「マリアお嬢様!って、うおぁっ!?」


 そして彼もつんのめった。

倒れるヨハンの手がマリア・フォン・ウェーバーにぶつかり、()()()()()()()


「えっ、えっ!?あわわわわわわわ」


 もはやどちらに進んでいるかもわからなくなった彼女だが、しっかりとメロディの方に進んでいる。

そしてその瞬間正にメロディはロック・モードに気を取られていた。



「メロディ様!危ない!!」


「回転する王国の女の子が!!」


「こっちにやって来ます!!」


「へっ?」


 取り巻きの女子生徒達からの謎の警告に王国の生徒達がいる方へ振り向くと、まさに回転する女の子が激突する寸前だった。

謎の光景に気を取られうっかり避ける暇がなくなってしまったわたしは踏ん張ることで耐えることにした。

どすんっと、わたしと女の子の体がぶつかり、女の子が倒れそうになるのを腕を掴んで防ごうとする。

無事掴むことができ、ホッとしたその瞬間――かきんっと音がなる。


 鞘と鞘がぶつかった音だった。

……いや、なんだこれ!?

なにがどうしてこうなった!?


「えーっと、みなさん、何が起こったのか見ていました?」


 とりあえず周囲に尋ねてみる。


「女の子の悲鳴が聞こえたと思ったら!」


「その子が回転しながらこちらにやって来て!」


「メロディ様とぶつかって鞘が当たりました!!」


 うん、何もわからない!!

ぶつかってきた女の子の方を見てみると、体勢を整えてこちらを振り返った彼女の顔は紛れもなく【道標】で何度も確認したマリア・フォン・ウェーバーのものだった。


「あの、えっと……」


 彼女も何が起きたのかわかっていないようである。

頭を抱えたくなるが、『()()()()()()()()()()()決闘を受ける』のが今回のわたしの任務。

なんとかここから決闘に持ち込まねば!!


「あー……こ、ここまで堂々とわたしに決闘を挑んでくるとは大したものね!その挑戦状、受けて立つわ!!」


 わたしの大声に周囲がどよめく。


「なんだ!何が起きたんだ!?」


「メロディ・ドミナント・テンションが決闘をするって!」


「わたし見たわ、王国の新入生が回転しながらメロディ様に鞘当てしたの!」


「なんて?」


 本当になんて?だよ!!

でもここは決闘するしかないのだ、いい感じに続けてくれマリア・フォン・ウェーバー!

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