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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
二章
36/97

35話

 【道標】によれば、入学式はマリア・フォン・ウェーバーが『攻略キャラ』達を認識するだけで【勢力フラグ】などの変動は起きないらしい。

 本番は夜の歓迎パーティー、ここで起きる『出会いイベント』と『チュートリアル決闘』で最初の【勢力フラグ】、【キャラフラグ】そして【カルマポイント】の変動が起こるそうだ。


「『出会いイベント』――歓迎パーティーでマリア・フォン・ウェーバーに一番強い印象を残せた『攻略キャラ』に対応した【勢力フラグ】と【キャラフラグ】が貯まる。最初の一回目だから大した量が貯まるわけじゃないが、ここで強い印象を残せば今後の学校生活でもマリア・フォン・ウェーバーは君らと親しくする選択をするだろうな」


 指を振りながらムーサ師匠が説明する。


「ええ、そのために学校中の女子生徒にモテモテという状況を維持してきました」


「……確かに印象に残りやすい立場だけどさ、本当に趣味じゃないんだよな?」


「おい【魔法使い】、姉上を疑うのか!?」


「リズム、わたしの師に対して無礼な態度はやめなさい」


 ムーサ師匠に食って掛かりそうだったリズムだが、わたしの一言ですぐに退いてくれた。

まあリズムがいなかったら自分で食って掛かっていた可能性もあるんだけれど。

そんなわたし達をじとーっとした目で見つめつつ、ムーサ師匠は説明を再開する。


「話を戻すぜ、もっと重要なのが『チュートリアル決闘』だ。メロディ、君とマリア・フォン・ウェーバーの決闘の勝敗で今後の展開はがらりと変わる」


 『チュートリアル決闘』――入門書(チュートリアル)の名の通りマリア・フォン・ウェーバーがあっさりとわたしに勝利してしまう確率が非常に高い(めちゃくちゃ悔しいが【魔弾(フライシュッツ)】の攻略法を知らなければそうなってしまうと認めざるを得ない)決闘が今夜の歓迎パーティーで起こる。

そこでわたしが勝利すればわたしとリズムの【キャラフラグ】、そして大量の帝国の【勢力フラグ】が貯まるのだ。


「あたしがお前につけた修業のおかげで【魔弾(フライシュッツ)】対策は万全だ、だから今日君らは()()()()()()()()()()()決闘を受けて、なんとしてでも決闘に勝利しろ」


 ムーサ師匠はわたしを指差して強い口調で告げた。

わたしはそれに深く頷き、リズムは少し考える仕草をする。


「カメーナエ卿、()()()()()()()()()()()と言いましたが、具体的にはどういう流れで歓迎パーティーでいきなり決闘なんてことになるんです?」


 うん、リズムの疑問はもっともだ。

わたしは去年うっかりやってしまったが普通はいきなり決闘なんて起きない。

【道標】の『シナリオ』のページを開き、【共通シナリオ】の項目を見ながらリズムに説明をする。


「【道標】によると……『主人公は不幸な事故からメロディに鞘当てをしてしまい決闘に発展。チュートリアル決闘が始まります』とのことね」


 鞘当て――佩いている剣の鞘を人の剣の鞘に当てることで非常に無礼な行いである。


「鞘当てですか、それなら決闘も致し方ない……でもわざと以外で鞘当てをしてしまうなんてありえるんですか?」


 リズムの言う通り、鞘当てが非常に無礼な行いである以上わたし達は万一にもそれを行わないように躾けられている。

それが起きてしまうような()()()()()と言われてもわたしだって想像し難い。

しかしムーサ師匠は当たり前のように肯定した。


「【道標】に書かれていることは地母神が定めたこと、万が一どころか億が一の確率も平気で飛び越えて必ず起きる」



【オラトリオ騎士学校】 講堂

入学式が開かれる中、マリア・フォン・ウェーバーは胸をときめかせていた。

今この学校には大陸中の若き騎士が集まっている。

例えば帝国の列にいるあの少し幼く見えるが整った顔立ちの少年。

例えば公国の列にいるあの周囲への警戒を隠さない神経質そうな少年。

あるいはここにはいないけれど、既にその噂を何度も耳にした先輩の女子生徒。


 彼らの剣技を知れば、自分はもっと強くなれるかもしれない。

勉学や芸術のお稽古だって欠かしたことはないけれど、自分にとって一番夢中になれるのはいつだって剣だったから。

マリア・フォン・ウェーバーの胸のときめきは高まるばかりだった。



 今年は新入生を迎える先輩として参加する歓迎パーティー。

マリア・フォン・ウェーバーが気になるがまずは帝国の新入生からの挨拶を受ける時間である。

真っ先にリズムがわたしのところに飛んできて、次にオクターヴがやってくる。

わたしが急に部屋に戻ったあと取り巻きの女子生徒達がオクターヴに校内の案内を代わりにしてくれたらしく、彼と彼女達はなんだか仲良くなっていた。


 そして少しぼーっとした様子でやって来たのがわたしの婚約者であるブルース・ストレインだった。


『ブルース・ストレイン 攻略キャラ 所属:【トライアド帝国】-

  【トライアド帝国】ストレイン伯爵家の跡取り息子。

  聡明な母により文武両道の好青年として育てられた。主人公と同学年。

  侯爵家令嬢と婚約しており、その弟のリズムからは敵視されている。

  入学式の日に主人公に一目惚れし、何かと世話を焼く。

  自軍ユニットとしての性能は味方をかばうディフェンダータイプ。』


 なんかぼーっとしていると思えば、そういえばこいつマリア・フォン・ウェーバーにもう一目惚れしてるのか……

彼には悪いがマリア・フォン・ウェーバーの恋人の座はリズムのもの。

せめて婚約者のよしみでこれからは少し優しく接してやろう……と声をかけようとしたそのとき。


「お久し振りです。噂ではずいぶん楽しそうにやっているらしいですね、メロディ先輩?」


 聞き覚えのある、あまり聞きたくない声が響いてきた。

声の主はレゾナンス・マイナー・トライアド――『攻略キャラ』の一人で、お父様と対立する帝国宰相テンポ・マイナー・トライアド公爵の跡取り息子だ。


『レゾナンス・マイナー・トライアド 攻略キャラ 所属:【トライアド帝国】-

  【トライアド帝国】宰相の跡取り息子。

  皇帝と近い血縁にある帝国内でも最上位の貴公子。主人公と同学年。

  派閥の違いからドミナント・テンション家のきょうだいとは仲が悪い。

  三国の友好を夢見る平和主義の人物。

  自軍ユニットとしての性能は継続回復スキルを持つサポータータイプ。』


 なんかいい感じに書いてもらってるなこのお花畑野郎。

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