21話
【クラシック王国】、ウェーバー伯爵邸。
一人の少女と一人の少年が剣の鍛錬をしていた。
少女の名はマリア・フォン・ウェーバー、本人は知らないが【ムジカ大陸】の命運を左右する存在。
『マリア・フォン・ウェーバー 主人公 所属:【クラシック王国】
【クラシック王国】宰相の娘。
前向きで何があっても諦めない性格の少女。
【オラトリオ騎士学校】入学後、騎士としての才能を開花させていく。
様々な出会いが彼女を【ムジカ大陸】の覇権をめぐる戦いへと導いていく。
自軍ユニットとしての性能は遠距離攻撃に長けたアタッカータイプ。』
少年の名はヨハン・ブラームス、ウェーバー伯爵家に従士として仕える平の【騎士】である。
『ヨハン・ブラームス 攻略キャラ 所属:【クラシック王国】-
ウェーバー伯爵家に仕える従士。
【剣帝】を目指す小柄な少年。主人公と同学年。
主人公とは幼馴染でいつもいっしょに過ごしてきた。
同僚のヨハンナからは子供っぽさをよくからかわれている。
自軍ユニットとしての性能は敵視を集めるディフェンダータイプ。』
剣を打ち合う二人。
一見体格に優れるマリアの方が有利に見えるが、ヨハンは彼女の攻撃を的確にいなしている。
そしてマリアの決着を狙った上段からの攻撃に【斬空剣】でカウンター、そしてマリアの動きが止まった瞬間、すかさず胴へ追撃を叩き込む。
決着。
ヨハンの勝利だ。
「はあ……やっぱり近接での打ち合いじゃヨハンには敵わないね」
マリアは打たれた場所をさすりながらも、すぐに立ち上がりヨハンを称えた。
「当然です!俺は【剣帝】になる男ですからね!!」
得意げに胸を張るヨハン。
「どうしますマリアお嬢様、もう一本やりますか?それとも一旦休憩して……」
「マリアお嬢様、リタ様から手紙が届きましたよ」
屋敷の方からやって来た少女がヨハンの言葉を遮る。
彼女の名はヨハンナ・シュトラウス、ヨハンと同じウェーバー伯爵家に仕える従士である。
『ヨハンナ・シュトラウス サブキャラ 所属:【クラシック王国】
ウェーバー伯爵家に仕える従士。
大人しいが芯のしっかりした少女。主人公と同学年。
主人公とは幼馴染で良き相談相手でもある。
自軍ユニットとしての性能は味方を回復するサポータータイプ。』
彼女が言う「リタ様」とはマリアの友人で、今年【オラトリオ騎士学校】に入学したリタ・ワーグナーのことである。
「おいヨハンナ、そんなの後でいいだろ。マリアお嬢様は鍛錬の途中なんだ」
ヨハンは機嫌を悪くするが、マリアはそんな彼をたしなめた。
「いいのヨハン。わたしがリタ先輩からの手紙が来たらすぐ教えてくれるように頼んでたんだから」
「その通りです。それにもうすぐ座学の時間になりますし」
「座学なら少しくらい遅れてもいいだろ。俺達は【騎士】なんだから何より剣の鍛錬をさ……」
「いいわけないです。ヨハンもそろそろ【剣帝】になるなんて子供っぽい夢を言うのはやめて、しっかり将来のために勉強しなきゃ」
「子供っぽい夢じゃねえ!俺は本当に【剣帝】になるんだよ!!」
ヨハンとヨハンナの「いつもの喧嘩」が始まろうとしていた。
「夢ですよ、マリアお嬢様に勝てるのだって剣の届く距離から始める『打ち合い』のときだけで、決闘の形式ではいつも【魔弾】で一方的に負けてるのに」
「マリアお嬢様の【魔弾】は特別だろ!?それにあともうちょっとでなんとかなりそうなんだよ!!」
「負け惜しみは見苦しいです」
「負け惜しみじゃねえし!!」
「まあまあ、二人ともその辺にしよ?二人だって【オラトリオ騎士学校】のこと楽しみにしてたじゃない」
仕える主人であるマリアの仲裁に、二人は不満を残しつつも喧嘩をやめた。
それを確認してマリアはヨハンナから渡されたリタの手紙を開封する。
「えーっと、リタ先輩は元気で楽しくやってる……えっ!?」
「どうしました、マリアお嬢様?」
「うん……歓迎パーティーでセバスティアン王太子が【トライアド帝国】の女子と決闘して、負けたって」
「「えっ!?」」
ヨハンとヨハンナも驚きで目を丸くする。
「そりゃいい気味……じゃなくて、セバスティアン王太子が負けた!?」
「あんな方ですが、既に【幻影剣】を習得なさっているほどの腕前ですのに……」
「それもあっという間の決着だったって……その人は座学も優秀で、今は女子生徒にいつも囲まれてるんだって」
他国の実力者の存在にただ驚愕する三人……
いや、マリアの心中にだけは別の感情も浮かび上がっていた。
(すごいな、その人ならもしかしたらわたしの【魔弾】も攻略できるのかもしれない……)
それは期待、興味、かすかな好意。
(わたしも【オラトリオ騎士学校】に入学すれば会えるんだよね、メロディ・ドミナント・テンションさん)
まだ小さな感情だが、マリアの心がメロディに向いた。




