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王宮世界・絶対少女王政ムジカ  作者: 狩集奏汰
一章
20/97

20話

「これってそういう名前だったんだ……」


「だから【道標】を『これ』とか言うな。【ムジカの上王】にしか見えないものをあたしの魔法で特別に見せてやってるんだぞ」


 だって浮いている板なんだから【浮いている板】としか呼びようがないじゃないか……

いや、そうじゃなくてこの【浮いている】改め【道標】がわたしにだけ見えるものじゃなかったという事実が問題だ。

わたしだけじゃなく、【ムジカの上王】も自分にとって都合のいい未来をつかもうとしているはずだから。

む?そうなると変なところがあるな。


「なぜあなたはそんな特別なものをわたしに見せてくださるの……?」


 どうして【ムジカの上王】に仕える【魔法使い】が彼女のライバルを増やすようなことをするのか?

わたしの疑問にムーサ・カメーナエはにこにことした笑顔を取り戻して答えた。


「そう、あたしが【地母神ヴィルトゥオーソ】の祝福である【道標】を君に見せている理由だよ――()()()()()()()()()()が【ムジカの上王】の望む最上の未来でもあるからさ」


 得意げな顔で、彼女は更に続ける。


「【道標】を読んで、君の未来が困難なものになることはもうわかっているだろう?」


「……ええ、どうやらわたしは随分な()()みたいですね」


 上手くやらないと国は戦争に負けるし家は没落するしわたし自身も悪女扱いされるしで大変だ。

【道標】に記載されている他の人物は自国シナリオに入ればそこそこ上手く行くみたいなのになんか酷くない?と正直思っている。


「だったら君に【道標】を見せれば、君は必死になって()()()()()()()()()()を目指すだろう?さっきも言った通り、それは【ムジカの上王】が目指す未来なんだ。君はまず【ムジカの上王】と自分がそれぞれの望む未来を実現しようとして競合する敵同士だと思っただろうが、そうじゃなくてあたし達は同じ未来を目指す同志だってわけだ」


 ムーサ・カメーナエは余裕たっぷりに話す。

だがわたしにはそれをすぐに信じることが出来なかった。


「どうして、わたしが幸せになる未来を【ムジカの上王】がお望みになるのですか?そんな都合のいいことをにわかには信じられません」


「それはそうだろうな。その通り、【ムジカの上王】が君の幸せを願っているなんて都合のいいことはない。」


 ないじゃないか。

じゃあさっきからなに適当なことを言っているんだこの【魔法使い】は。

わたしの不審な目つきを見て、ムーサ・カメーナエはけらけら笑ってこう答えた。


「まあそんな顔すんなって、まだ話には続きがあるんだよ。【ムジカの上王】にとって君一人の幸せは関係ないが、【ムジカ大陸】に生きる多くの人々の幸せは大いに関係がある」


 そして彼女の表情が真面目になる。


()()()()()()()()()()は結果的に、三年後に起こる【ムジカ大陸】全土を巻き込む戦乱・【竜王戦役】が民にとって最も少ない被害で集結する未来になる」


 【竜王戦役】、どのシナリオでも必ず起こる三国が【ムジカ大陸】の覇権を争う戦い。


「【ムジカの上王】――ムジカ・オルガノ・コンチェルト十五世は心から民の平和を望む善き王だ。例え実権を持たずともな。あたしは上王陛下を心から敬愛している。だから君に【道標】を見せるという計画にも協力した」


 その言葉には信じるべきではないかと思わせる迫力があった。


「【ムジカの上王】のお望みになる未来、とりあえずは……信じましょう」


「おう、話が早くて助かるぜ。それで君を訪ねた本題なんだが……」


 む、今のが本題じゃないのか?


「なんで早速レガート・カデンツァと仲良くなったり女子生徒ハーレム築いたりしてんの?仲良くならなきゃいけないのはマリア・フォン・ウェーバーだぞ?」


 あっはい、マリア・フォン・ウェーバーと仲良くになるためには無駄というか邪魔になりかねない状況を作り出してしまってますね……

でも待ってこれは事故みたいなものだから!!



 少し後、【オルガノ大聖堂】、玉座の間。

ムーサ・カメーナエは愉快そうに【ムジカの上王】――ムジカ・オルガノ・コンチェルト十五世のもとに帰還した。


「いやぁ、メロディくんは思った以上に()()()()だったぜ」


「機嫌がいいということは、こちらの意向を伝えることは出来たのか?」


「ああ、っていうかこっちの意向は伝わってたのに()()()()ハーレム築いちゃったんだってよ」


 ムーサ・カメーナエは思い出し笑いをする。


「どういううっかりだ……?まあいい、()()()()()()()()()()()――【メロディトゥルーエンド】へ向かってくれる意思があるなら今のところはそれで十分だ」


 ムジカ・オルガノ・コンチェルト十五世はほっとため息をつく。

それが勘違いだと気がつき頭を抱えるのは、まだ先の話である。



 ムーサ・カメーナエに事情を説明して帰ってもらってから、わたしはもう一度【道標】にある未来を確認していた。

確かに他のシナリオでは【竜王戦役】は混沌としたものになるにも関わらず、リズムの【個別シナリオ】では【トライアド帝国】の快進撃で早期に終結することになっている。

わたしの【個別シナリオ】なんか急に【地母神ヴィルトゥオーソ】が降臨して神と人との戦いになって意味分からないことになるのに。


 やっぱり【リズムトゥルーエンド】が最高の未来だね。

【ムジカの上王】のお墨付きも頂けたことだし、気を引き締めて目指しますか!

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