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雪原の龍  作者: RERITO
4/5

スノードロップ

スノードロップ時刻

午後八時くらい


〜前回までのあらすじ〜

スノードロップ・シェリアク、二人の男に出会う。

ホーンラビットと戦うために、どうにかしなくちゃいけないっ!


新キャラ登場 スクトゥム 悪態ばかり吐くモブ....だけど、貧しいそうな髪の毛モジャモジャ女の子に出会う。



「その光る奇妙な狐は、強いのか?」



 初めは、馬車に囮になってもらいつつ、私だけでもどうにか逃げようとか考えてたのに、どうしてこうなった....いや、それとなく...強い人いるかな?って思って、見に来ただけだったのに...


 私は、足を曲げて コメカミにグリグリと拳を突きつける。背後で、困ったような顔をしているザウラクに...私は気づかない。



 見るからに危なそうでしょ。すぐに離脱できない....死ぬ可能性が上がる....あぁああああ!!


 いや、それもこれも、あのザウラクとか言う男と、本当に貴族なのかよく分からないあのでっぷりと太ったおっさんのせいでしょ。



「スノードロップさん?大丈夫ですか?」


「大丈夫なように見えますかね?」


「いや....見えないね」



「すまないが、急を要するんだ。お前の反省回は一旦置いておいて、まずはあれのこと対処をしなければならない。それは、分かるよな?旅人殿?」


「.......そ、そうですね。」



 キレてる。表情に一切変化はないけど、なにか...モノも言わせない。みたいな...初めてあった時とは違う圧力を感じた。



「それで、もう一度言うが、その奇妙な光る狐はあのホーンラビットの群れの中で、どれほど戦える?」


「いや....戦闘力は、皆無。こんな可愛い狐を、あんな中に投げ捨てたら、毛皮も残さず食べられて、突然変異で体の光るホーンラビットが産まれちゃうと思う。


あぁ.....いや、光るホーンラビットは、知らないけど....戦えそうな雰囲気はないよね」



「コン?」「コンッ」「コンコンッ!!」「コン」



 狐たちの、合唱....可愛い。


 そんな愛くるしい姿に、ザウラクは顔をしかめる。



「では、質問を変えさせてもらう。あの、素早い走り....いや、移動?俺は、見たことがないんだが。」



「いやいや!!あれは、やめた方がいいと思うかな。こっちに来る時もそうだっだたけど、かなり危険な移動の仕方だと思う。


ライトを二体使って、引っ張られたら上手くいくかなって試してみたりしたんだけど....上手くいかなかったし、ほら、雪でしょ?ここ」



「なにか自分を支えるもの無しで、移動するのは危険だと思ったから....狐を四体使って、走ることにしたわけだな。」


要領を得ない私の喋りに、上手く話を要約してくれるザウラク。

そこまでは、考えてなかったけど...



「じゃあ、二体の狐を使って....舞い踊るように戦う...とか、やったことないのか....いや、でも...あのスピードだと、強風にあおられて飛ばされてしまう可能性が高そうだな。」


そこまで、ライトたちを信用できるのかどうかっていう問題もあるけど...



「ちなみに、その狐は何体まで出すことができる?」


「十体までなら.....」


「...........」



 なにかを考えるように目を瞑るクジハ。

私は、狐の毛をもふもふしながら、そんな姿に見る。



「なにか、案はないか?トリー」


「いや...俺かよ。今、完全にクジハがなにか案が思いつく流れだったよな。」



「俺は、そんなに頭がいいわけじゃないからな。」


「そう....だったのか」



 昔からの仲みたいな雰囲気を出している二人なのに、なぜかそんなにお互いを知らないのかな?どういう間柄なんだろう....



「そうだなー......案かぁ」


「おいっ!!結局、お前らは救えんのかよ!!」


『なにっ.....!?!?!』



 いきなり、背後で声がして、驚いた表情になる私たち。


話に夢中で気づかなかったけど、やっぱりモタモタしてるせいで耐えきれなくなった人が出てきたのかな。



 確か、さっきから悪態ばかり吐く人だったかな。


さらに、奥にいる黒いモジャモジャした子と少し話をしてたみたい...この人...大きい。少なくとも、身長がザウラクと同じくらいデカい。



「す、凄い勢いだな。少し落ち着かないか?俺たちも、どうやっていいか考えてる最中だから」


「お前らは、あの貴族に言われたんだろ!!だったら、なんとかしろよ」


「いや、それはいくらなんでも......」


「おい」


「なんっ....うっ.....」



 すると、ザウラクがその男へと詰め寄ると、胸倉を思いっきり掴んで、馬車の壁へと思いっきり、叩きつけた。


 男は、苦痛で顔をゆがめる...



さっきから、イラついてるようだったから....刺激してしまった結果かな。



「な...っ!!なにか凄い揺れたような気がしたんだが....お前たちちゃんと考えておるんだろうなっ!!」


「すまない。雇用主.....別に、大したことではない」


「今は、争ってる場合じゃないのだぞっ!!はいやっ!!」



 より、大きくバシンッと馬に鞭を打ち付ける貴族様。

大男たちが、喧嘩してる中で、よくあれだけ活き活きとしてられるなぁ....



「........貴族の犬風情が」


「黙れ....お前がいると、空気が悪くなる。俺の直感が言ってる」


「首を、しめんじゃねぇっ!!」



 隻腕の男は、無理やり腕を振り払って、ザウラクと距離をとる。


その荒々しさとは対照的に手元を器用に振り払っていたことに、少しだけ目を細めるザウラク。



「.....はぁはぁ....無駄に、筋肉だけはありやがる。」


「お前ら、カッコつけて出てきたわりに、なにかをしようとするまでが鈍いんだよっ!!主人公共のやってることに付き合う筋合いなんかねぇだろ」




「なら、お前にはなにか策があるのか?この、寄せ集めの冒険者と、奴隷と旅人がこんな小さな空間で、あのホーンラビットの群れを突破できる策がお前には、あるのか?」


「......そんなん......おま、お前の炎であの群れに穴を開けて、そこを通ればいいだろ。」


「.....ほう?」




「クジハ....結構、まともなことを言ったみたいだけど、実際できるのか?」


「.....いや、できないな。少なくとも、火力がそこまでない。」



 ザウラクは、肩をすくめる。私は、その一連の話を見ながら、少し無茶を言いすぎていると思った。


魔法は、便利なものだけど、そこまでたいそれたものじゃない。



 そもそも、魔法に頼ること自体あまり、いいとは言えない。

 人間の持つ魔力量とは、そんなものなのだ。だけど....




「あの...私、いい案を思いついたんだけど」



 男たちが、言い争ってる中で私は狐たちをモフりながら、そっと手を挙げた。


「移動をする時に、ライトの上に立って動くのが危険だというのなら、誰かが下になってザウラクさんが戦えばいいじゃないかな」



「確かに、事実上はできなくもない。」




「....その案だと、下に誰かがいないといけない。それに、何度も踏みつけられる可能性がある。


そんな尊厳すら、失うような真似をわざわざ....」






「そこは、どっかの声を張り上げている人でも、踏み台にすれば」



「は!?!絶対やらないからな。」



 私の案は、確かにやろうと思えばできるかもしれないけど、やりたくない人が出てくるだろうことは、予想していた。


 誰かを踏み台して、ザウラクに戦ってもらう。という至ってシンプルな案なんだけど....



「俺も、やりたくないかな....どうせ死ぬなら、尊厳は守って死にたいから」



「.......お、お前らの誰かがやるんだよな?」



「もし仮にこの案を、やるとしてもあなたは、やらないでしょうね。腕が一つないから、不安定でしかたない。それと、あなた体格のわりに筋肉が....」



「俺が入らないなら、いいんだ」



 そう言って、どかっとモジャモジャの人の隣に座る。


家族...か、なにかなのかな。


 この案は、別に人がそこに立たなくてもいいんだけど、立ってくれたら多分ライトたちも喜んでやるかなぁ...やってほしいなぁ...という願望が含まれてる。



「というか、一回その狐二匹を使って....」


「コン?」


「いや...その二匹をお願いをもらって、動けるかどうか試してみたいんだけどな。話は、それからでも遅くない気がする。」





「....別に、いいけど....さっき呼び出したライトたち」


「コンッ」「.....コン」



「あのイケメンの男の人と仲良くなってきてもらっていい?」



 なんだか、凄い嫌そうな顔をしているライトたちに、お願いしてみるんだけど....だ、大丈夫?いいよね?



「こういう時なんて言えばいいのかな?クジハ」


「......いや、俺も分からないが」


「とりあえず、おいで〜とかモフモフさせて〜とか言ってみたらいいと思う」


「....お、おいで〜」


「目線を合わして」


「........う、うん。お、おいで〜」



 私の言葉に、ラグジャーはそっと腰を屈めて、手を前に突き出すっ!!


 チラッチラッと眺めるライトたち。


 ラグジャーは、ぎこちな気ににこっと微笑む。


 ......数秒して、一歩足を踏み出した片方のライト。


「お、おぉ......」



「おい、クジハなにも言うな。これでも、俺は真剣なんだからな。」



「す、すまない」



 もう一匹のライトにも、にこっと少し伸びた髭が強調されるような笑顔を見せる。


 Aライトは、ちょっとずつちょっとずつ接近していくが、Bライトはあくびをしながら眠ってしまった。


 ラグジャーを、少しだけ頬をピクピクと引き攣らせたがAライトだけを見つめる。



「コンッ!!」(ライトA)


「こ、コンッ」(トリー)


「コンコンッ!!」(ライトA)


「コ...コンコンコンッ!!」(トリー)




「お前らっ!!ホントに、生き残る気があんのかよっ!!」


「ビクッ!?!コンッ!!」(ライトA)


「コーンッ!!モフモフモフモフ」

(何度でも言おうトリグリー・ラグシャー氏である。)



 ブチ切れた、隻腕の男にびっくりしてか飛び上がってきた狐に、顔を埋めるラグジャー....


私と、ザウラクは苦笑いしつつも、一匹を確保できたことを喜んだ。


 よろこん.....よろこ......喜んでる場合じゃないよね。



「これを....あと、四体......」



 ザウラクは、思わずと言った風にため息を吐く。


すると、奥の方から何かがバコーンッと爆発するような音が響くと同時に、一体のホーンラビットが吹っ飛んできた。



「えっ!?!」


「もふもふ...もふ....っ!?!?」(トリー)


「.......っ!?!」




「うぁあぁぁあああ!!肩がァ!!」



 その突如としたホーンラビットの射出が、馬車の中にいる一人の男の肩目掛けて飛んでくる。


 鮮やかな鮮血が、飛び散る。

 ラグジャーと、私は固まっていたが、ザウラクは思いっきり木刀を帯から取り出して、フーッと口から白い息を吐きながら、肩を深く抉るホーンラビットを壁に向かって、刺突を放つ。



 バキッという壁に穴が出来上がるほどの威力が、ホーンラビットの胴体を貫き....一瞬のうちに絶命する。



 赤赤とした憎悪を想起させるホーンラビットの目を、私は見ていた。


 バタリッと、体を床へと打ち付けて倒れる男....そして、ふっと言いながら、木刀の血糊を床へと飛ばす。



 すると....間髪入れずに、再び爆発するような音と同時に、ホーンラビットが飛んでくる。


 どこから取り出したのかラグジャーが短剣を取り出して、ホーンラビットの顔面に突き刺す。



「....っ......はぁはぁ......やばすぎる.....」


「何語を話してるんだ。トリー」


「食われるところだった。って、ことだよ」



 私は、硬直していた。なにが、なにが起きてるの?いきなり、飛び出してくる?さっきまで、そんなことなかったのに...


 そんな異常現象が、起きた直後にさらに...ホーンラビットの雪崩は加速し始めた。



それこそ、もはや一刻の猶予もないくらいに....




「こ、怖い.....」


「....アレに、俺らは生き残れるのか?」


「.....スクトゥムさん.....最後に、僕の名前を」


「だから....そういうのが、イライラするって言ってんだよ。生き残る。絶対に...俺は、死なない。」


 私は、なるべく魔力を残しておいて、いつでも逃げれる準備をしていたかったけど...


あんな速度で、飛んでくるホーンラビットに、即時対応できるかどうか...と言われたら、無理と断言出来る。



 つまり、この馬車の中に入っておいて正解だった。



 内心、ほっ...と、安心しつつ...全く安心できない状況に、さらに複雑な思いを感じながら、ここで...ここで、全ての力を出し切ろうと、決意した。



「....今から、ライトをあと四体召喚します。ザウラクさん。ラグジャーさん。そして、スクトゥムさん....もう、ライト二体に乗っかって、死ぬ気で、ライトたちの背中に立って戦ってください。」



「.......やるんだな?」


「あの、中に入っていく.....の?俺ら....想像するだけで、ガクブルなんだが」


「なんで、俺まで入ってるんだ?」






『生成っ!!ライト!!』『生成っ!!ライト!!』『せいせ....』



 白い光が、灯しだし....新たな命がここに生まれていく。


 俺は、その光景を目の当たりにして、これは魔法なのか?という疑問を抱いていた。



 ハッキリ言って、常識を、超える魔法だと....そういう風に、思う。

 これが、召喚魔法....なのか?



 言葉には、言い表せないなにかをその魔法の中に感じている。


それは...そう、生物の想像と同じようなものでは....



「いや...ないな」



 そんな...神のような所業が、目の前で起こっていることに、俺は深い拒絶を本能的にしてしまう。



「コンッ!!」「コンッ!!」「コンッ!!」



 その狐たちに、触ってもいいのか?

果たして、触ることによって、なにか俺に良からぬことがあるのではないのか?


いや....でも、トリーがモフモフとかいう訳の分からないことをしていたじゃないか....



「......なぁ....クジハこれって」


「あぁ...この女は、殺させちゃいけない。それだけは、分かる」



 もはや、それは....人類が定義する魔法ではなかった。





 荒野を走る。駈ける。駆ける──翔ける。




 そのスピードは、馬車を本気で走らせた時よりも速く。鳥が空を飛ぶよりも疾く。


 安定した動きを見せながら、そのライト(狐)は足を振り上げる。




 その胴体には、ロープが括り付けられていて...上に乗る男が、すぐには落とされないようになっている。


 と言っても、本当に心もとないものではあるのだが...



 腰を屈めた状態で、俺を支えている小さな動物頭を鷲掴みにしている。


 時折、ピクピク動く耳がなんだか....申し訳なさみたいなものを感じさせる。



「..........」



 このライトたちに振り落とされれば、雪の中....完全なリタイアいや、ゲームオーバー.....死が待っている。



 そうして、目の前のホーンラビットたちに少しでも噛みつかれてもゲームオーバー...


俺は、あえなく負傷を置いながら、深い雪の中へと真っ逆さまに落ちていくだろう。




 脇に刺してあった鞘は、口にくわえ...木刀は片手に持っている。



 そうした状態で、俺はその群れの中へと接近する。


キャッだの、シュワッだの、シャーだの...よく分からない鳴き声が、いくつもいくつも聞こえる。



 突如として、鳴り響く爆発音と同時に、飛び出してくる俺の命を狙う暗殺者を、前かがみになりながら絶妙なバランスで、木刀を上へと切りつける。



「っ...!!うぉぉおおおおお!!フッ!!」



 上手く力が、入り切らなかったが...相手のスピードをそのまま使いこなすように殴りつけた。



 ホーンラビットは、フワリと舞い上がり...どこかへと飛んでいく。




 恐らく、馬車の更に奥へと....




 やるぞ...俺。



 フワリと、長い長髪を舞い上がらせながら、風に煽られないように鞘を片手に持って、その群れへと突っ込んだ。






「クジハ、頑張るんだぞ」



 トリグリー・ラグジャーは、ビビりである。


 いや....ビビりというよりは、繊細と言ったほうがいいと思う。



 さっきの、ホーンラビットが突っ込んでくる時は、上手く反応....できたと思いたいけど、内心バクバクと心臓音が耳に鳴り響いていた。



 弱いな....弱い。



 俺は、このクエストは強制的に参加させられた。


龍の卵を取ってくるとかいうヤバい仕事をやらざるを得なかった理由があった。



 こんな危機的な状況に追いやられたのは、一重に自分の不甲斐なさが原因なような気がする。



 あの時....彼女と共に、学校でのんびりと過ごすという決断をしていたら、こんなクソみたいな人生にはならなかったのだろうか....



「.....やめよう。過去のことは、全部捨てた」



 俺の役目は、ホーンラビットの群れに突っ込んでいったクジハの援護だ。




「ライトたち、俺の足は君たちに任せてるからな」

 

「コンッ!!」「.........コッ」



 結局、ライトAと、ライトBに乗ることになった。さて....やるか。





 と言っても、魔法はウォーターボールと、水の塊を前方に出すことくらいしかできないけど....



 できるだけ、より鋭いウォーターボールを放つように。


 より、痛みを感じるような水を。




『水よ。弾け飛べっ!!ウォーターボール』


 より...鋭く、より繊細に.....


『水よ。弾け飛べっ!!ウォーターボール』



 今日を、生きていけるように....







「おいおいっ!!走れ走れっ!!ゴン助っ!!吉郎!!」


「コンコン」「コンコンコン」



 なにかを訴えるようにゴン助と、吉郎が声を出す。


 非常に、不服そうだ。


 スクトゥムは....陽動。少しでも、ホーンラビットの群れを寄せ付けるようにする。


 悪夢のようなボーンッと弾けるような音が、奥の方でしたかと思ったら、どうにか避ける。



「シャーッ!!!」


「きぇえええええ!!!ゴン助ぇええ!!吉郎っ!!」



 ホーンラビットが、ボロボロになった服をビリビリッと噛みちぎって飛んでいくのを、見ながら....なんども失神しそうになる。



 俺は、先刻無理難題をふっかけてきたスノードロップ・シェリアクとの会話を思い出す。







「あなたには、魔物を引きつける粉をかけます。それで、囮になってください」


「は?だから、なんで俺が、あの恐ろしいホーンラビットの群れに飛び込んでいく話になるんだよ」



「.......あなたは、生きたいですか?」


「そりゃ、生きたいに決まってる」



「後ろの人も助けたいですか?」


「......それは、別に.....」



「.........」


「.....助けたい」



「じゃあ、少しでも勝率を上げれるように、あなたにも戦いに行ってもらいます。


この粉...かなり、高かったんですよね。月下の魔法使いって、聞いたことありませんか?」


「....ないな」



 外へと、飛び出していくあの男二人を横目で見つつ、考える。周りのやつらも、動けるような....ものじゃない。


だけど、俺は出たくなんかない。命を大切にしていたい。



 なにか自分に降りかかる災いがあるなら、素通りしてしまいたい。



「スクトゥムさん。これは、あなたのためでもあります。」


「俺の?」



「はい。あなたも、陽動をすることによって...少なくとも、このモジャモジャの人の命は、助かる。意味わかりますか?」


「いや...それは、俺にはなんの関係も」



「それら、巡り巡って、あなたが生きることのできる力に変わると思います。


つまり、あなたは生きることができる。そうです。わかりますか?」


「生きる....ことが、できる?」



「はい。生きることができます。」


「わ、分かったよ。やりゃあ、いいんだろやりゃあ!!」



 そうして、なんだかよく分からないキラキラした粉を袋を掛けられて、今....なんだかよく分からないまま、ゴン助と吉郎と一緒に走らされている。





「いや!!よく考えたら、おかしいっ!!おかしいだろっ!!俺の命が、危なくなるだけだろぉおおおおお!!」




 俺は、背後に迫ってきているホーンラビットに、最大限の注意を寄せながら、走る。


 ザウラクとかいうやつと、ラグジャーとかいうやつが魔法でなんとかしてるけど、俺を犠牲にして...逃げようっていう魂胆だろうがっ!!どうせっ!!




「あぁああああ!!ふっ!?はっ!?!ほっ!?!」



 肩に向かって、飛んでくるホーンラビットを、かわす。


 足に噛み付いてこようとするホーンラビットをゴン吉が、飛んでかわす。



 頭を、噛みちぎってきそうなホーンラビットを、頭を倒してかわす。



「うわぁあ....はぁ....はぁ......はぁ.......」



 こんなこと、やってたらいつ殺されるか分かったもんじゃない。クソ.....



「魔女がよぉ......」






「ふぅ.....これで、なんとかなりそう。」


 私は、揺れる馬車から身を乗り出して、三人の行方を見る。


 スクトゥムという人は、割と頭が悪かったのか....強引にでは、あるものの、囮役になってくれた。



 ここが一番肝である。



 髪がゆらゆらと、風に流れながらライトたちの行方を見守る。



 スクトゥムが....ホーンラビットに食われるだろうことは、ほぼ間違いないような気がする。



 つまり、死に行ってもらった。私の言葉で....



「あの....」


「ん?どうしたの、えぇと....モジャモジャの子?」


「名前は、なんでもいいです」


「女の子?男の子?」


「......女です」


「じゃあ、モジャ子ちゃんね。どうしたの?」



 服を引っ張ってきたモジャ子ちゃんに、私は目線を合わせて話を聞く。



 日頃から、一人旅をしてきたけど...こんななりでも、女の子同士で話をする機会って滅多にないから、少しだけ嬉しさのようなものがあった。



「スクトゥムさんは....戻ってきますか?」


「.......スクトゥムさんって、さっきの隻腕の男の人?」


「そうです....あの人、凄い優しい人なので....」



 私は、スクトゥムを見据える。


もう、どこかへと走り去ってしまった隻腕の男を.....もし、私の彼を見ている目を、誰かに見られたら怯えてしまうかもしれない。




 それくらい、心が冷めきっていた。




 だけど、その瞳は一瞬のことで、すぐにモジャ子ちゃんと向き合い、明るい顔にする。



「大丈夫だよ。あの人は、絶対に生きて帰ってくる。ね?私と一緒に信じようよ」


「.....う、うん」



 長い髪の中から、戸惑ったような目で私を見つめる。



 よく、私に合った人はこういう....光魔女だと...そう言われた時、私はよく分からない。



「ね、ねぇ....魔女さん。あの人を、助けることはできないの?」


「......彼次第かな」



「お願いです。あなたの口実に乗せられたあの人が悪いことは、分かってます。


だけど、どうか....あの人だけは、死なせないでほしいです」


「........そんなこと言われても、私はなんて言ったらいいか分からないよ?」




「......な、なら....私も.....私も、向こうへ」


「それは、ダメ」



「なんでっ!!」


「彼の意思を私は、尊重するからって言ったら、分かるかな?」




「............」


 モジャ子ちゃんなにか、言いたげな雰囲気を出していたけど....結局、なにも言えずに、座り込んで泣いてしまった。



 まだ、死んだかなんて...分からないのに....

次回『ホーンラビット亜種』 明日12時に、投稿予定


忘れては、いけねぇ...夜中の出来事だと言う事を...




〜スノードロップ・シェリアクのノート〜


現在地 ラディシェン雪原


魔物 滅多に現れないサル (ドレットエイプ)

ゴブリン

ホーンラビット(雑食)


吹雪が続き雪が積もっているため、歩いて進むのは困難を極める。(ヤバすぎる場所)


new!!ホーンラビットの群れ


たまに飛び出してくる。通常のホーンラビットの群れは、(いやそもそも、本来群れるものではないが)飛んで来ない。


私の情報


顔は、普通くらい(自分基準でっ!!)

身長 156cm

私の魔法 光魔法 召喚魔法 ライト(白くて光る狐

10体まで)

移動に便利

※どうやら、おかしな魔法らしい


光の盾 (硬めの板)

ライトカーテン(便利なカーテン) ライト・ヒール (小回復)


音魔法 声を響かす。

パンチ強化


装備品 ジャイアントラビットの毛皮 巨大バック

持ってると暖かくなる赤い石



(龍の卵パーティー(仮))


クジハ・ザウラク 木刀と、火魔法を使う魔法剣士?

180cm

長髪で、鞘を携えているラグジャーには、劣るが顔は整っている。


トリグリー・ラグジャー 水魔法使い

175cm

イケメン・(彼女いっぱいいる)・new!!短剣使い


new!!過去に学校でなにかがあった?


※魔法使いは、惹かれ合う。



スクトゥム・スプリンガー

自分の身の程を知りすぎて、卑屈になった男 普通の一般人

もじゃ子を、守りたくなった。


new!!ごん助・吉郎 ライトの愛称(一時的)


new!!モジャ子(仮) 僕っ子

女の子 皮と骨だけしかないような不健康女子

スクトゥムが、気になる...


デラシ・ラリアット・ラディシェン 貴族(御者)

金好き・モンスターコレクター

(愛称 ラリアット様、雇い主、クソウザジジィ)



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