出会い
マイペースすぎないか?って言われたら、ぐぅの音もでない
(魔法使いの詠唱....好きだけど、段々覚えられなくなる。)
スノードロップ時刻
午後八時後半くらい
〜前回のあらすじ〜
火魔法を使う木剣士 クジハ・ザウラクと、水魔法使い トリグリー・ラグジャは、出会う。
関係は、あまりよくない。
スノードロップ・シェリアクは、雑食のホーンラビットの群れに追いやられながら、龍の卵を狙う馬車を発見する。
「シッ.....!!!」
木刀を手に持った俺は、ドレットエイプ三匹に踊りかかり横になぎ払う。
ドレットエイプは、軽い身のこなしで背後に跳躍する。
胴体部分を、少しだけ....かすった程度じゃ軽く表情を歪めるくらいの攻撃にしかならない。
とはいえ、ドレットエイプの自然の鎧 体毛に衝撃を吸収されて痛みすら与えられないだろう。
木刀を確実に、当てるためにさらに地面を蹴る。悔しいが、速さは向こうの方が早いため、追撃をかけてもやはり当たらない。
「ハァッ!!」
声を張り上げて、それとなく見事な空振りを見せる。
屈強な男の間抜け面に、ドレットエイプたちはキャキャッと耳障りな笑いをあげる。
そうして、すかさず敵(俺)に鋭い爪をお見舞いしようと踊りかかる。
「なにを、しているっ!!ザウラクもっと、シャキッと戦わんかっ!!」
傍から見たら、ピンチに見えるような場面で、案の定というか....雇い主は、野次を飛ばしてくる。
内心ため息をしつつ、木刀から片手を即座に離して、腰にさしてあった剣の入っていない鞘を掴む。
「ふぅ.....」
『キャアァアアア』
手元に魔力を集める。
鞘の中に濃密な炎の魔力が、巡る。
そうして、その鞘を即座に抜き放とうとしたが...
『水よ。弾け飛べ。ウォーターボール』
背後から放たれたウォーターボールが、ドレットエイプたちの顔面に直撃する。
水魔法は、攻撃用じゃない。
本人が一番分かってるだろう。なのに、わざわざ打ってきたのは、見せつけたいからじゃない。
「お前がこんなところで死なれたら、俺たちの希望が無くなっちまうだろっ!!しっかりしてくれ」
「...........」
意表を疲れたドレットエイプは、困惑で一瞬固まる。
「ウヒャッウヒャッヒャヒャッヒャ!!」
「キャアァアアアッ!!ウヒャッ!!」
水という存在を初めて知ったのか。
よく分からないものを、手で払うように上下左右に飛び跳ね回る。
あまりにも、滑稽な姿に...なんとも言えない気分になる。
手元に貯めていた魔力は、既に霧散している。
トリーの作ってくれた絶好の機会を逃すまいと、木刀を叩きつけて意識を刈り取っていく。
「よくやった。下賎の者」
「.......」(仲間がピンチだったから、助けただけだっつうの)
ボソッと小声でなにかを呟くトリーに、構わず雇い主である男はザウラクに駆け寄る。
「危なかったではないかっ!!なにをしてるんだっ!!」
「あぁ」
「あぁ...では、ないわっ!!お前がいなくなったら、儂を守るものがいなくなるではないか。しっかりしろ。」
雇い主は、そう言って御者に戻っていく。
俺も、後に続いて御者の中に入ると、トリーが近寄ってきた。
「なんだよ。アイツ....貴族っていうのは、あぁいうのばっかなのか?」
「雇う側は、大抵あんなものだ。」
「そういうもんか。」
俺は、差程 気にしていないが....しかし、バトルの介入は、なにかモヤッとしたものがある。
戦闘中に、基本的には余計な介入しない方がいい。
それは、冒険者であれば自然と察するものだ。
常日頃、命の危機にさらされている者にとっては、やはりそういうお節介はトラブルのもとにしかなり得ない。
「さっきのウォーターボールは、やめておいた方がいい」
「....は?おいおい、ピンチだったから助けたんだろ」
「いや、その点に関しては、感謝しているが....やはり、不和の原因になりかねない。」
「.........お前は、どう感じたんだよ」
「あの状況は、俺なりの駆け引きのつもりだった。多対一の場合は、警戒されると上手くいかない。」
「違う。違うそうじゃない。お前がどう感じたかの話だ」
「別に、なんとも思ってないが」
トリーは、少しだけ顔を曇らせていたが、俺の答えを聞くとふっと表情が軽くなった。
「なら、いいだろ。俺たちは、仲間。ピンチの時は、助け合う。そう言うものだろ?」
「........仲間か」
「そう...か」
今度は、俺の表情が固くなる。トリーは、眉をひそめながら、肩を叩いてくるが....今までの経験上、そんな言葉などあまり響いてこない。
困惑に近いような...絶対的に、相容れないような....そんな距離を、トリーに感じていた。
「ふむ....ドレットエイプの収穫は、実に幸先がいい。あぁ、実に実に....だが、ギルドの情報だとこのラディシェン雪原では滅多に魔物の姿など見ないと、聞いていたのだが」
御者の方で、ブツブツと呟きながら馬を動かす雇い主。
俺も、おかしさとようなものを感じていた。
雇い主の呟きよりも、もっと直感的な部分で....
「なんか言ってんなぁ...あのクソウザジジィ」
「そうだな」
「.....アイツの名前.....なんだったかなぁ...依頼の受注の時にチラッと見たような気がするんだけどなぁ」
「依頼内容を、きちんと見てないのか?」
「そうだなぁ...見ていないと言えば、嘘になるけどな。内容は、知ってるぞ。それとアイツに関する、汚ぇ噂くらいなら耳にした。けど...名前まで覚えるほどはなぁ.....」
「変な部分を知っているんだな。普通は、逆じゃないか?」
「いや、対したことじゃねぇ....前カノが教えてくれたんだよ。」
「..........そうか」
「通称、金の亡者だの...モンスターコレクターだの言われてやがるよな。汚ぇことにしか手を出さないへっぽこ貴族とも呼ばれている。」
「雇い主の情報なんて、興味ない。名前は、デラシ・ラリアット・ラディシェンだ。」
「そうかぁ?まぁ、あんなデブジジィなんて知りたいやつなんかいねぇよな。ウォッと....」
ガタガタガタガタッなにか強い揺れを感じる。
たまに、ドレット・エイプが掘り起こした木の枝に揺れても、雇い主の風魔法で長く続く揺れというものは感じないはずだが...
「な、なんだっ」
「地震か?」
馬車内は、少しだけ混乱する。
地震か....それとも、大型のモンスターでも、現れたのか。
だが...揺れるにしても、少々長すぎるような気がする。
まるで、いくつもの動物が地面を何度も蹴りつけているような。
俺たちの目的地 青の龍窟の東から馬車を動かしていたが、南東の方角からなにかの光がこっちに向かってきている。
一見....超高速で動く蜘蛛型のモンスターのようにも、見える。
でも、それにしては色彩豊かな気がするような?
真っ白い雪を巻き上げてくるなにかを、どうにか視認しようと目をこらす。
「ありゃ...なんだ?モンスターではないよな?」
「地面が光ながら、高速で動くモンスター...それは、中々強そうだが....」
「いや...待て。それも、ヤバそうだが、それ以上にこの地震の原因はもっと奥の方にありそうなんだが....」
そうして、徐々にクリアになっていくと見えてくるヤツとヤツらの姿。
「女か?」
「そのようだ。それに、あれは」
「なんだか、分からんけど...やべぇ。おいっ!!ラリアット様....早いとこ、馬を走らせた方がよさそうだぜ」
「おいっ!?!おいとは、なんだっ!!なぜ馬を走らせなければ....っ!?!?」
そこで、ようやく背後の猛烈な勢いでやってくる何か確認して...その顔を一気に青ざめさせる。
その様子には、無理もないとは思うが...
「急げ。雇い主」
「そ、そうであるな。はいヤッ!!」
そのブヨブヨした贅肉を、もったいぶらんばかりにブルブルン動かしながら鞭を打つ。
そうして、よくやく現らはになったのは...ホーンラッビットの群れ...いや、雪崩とでも言おうか。
「終わりだ....俺たちに、天から罰が下ったんだ」
「赤い目がうようよいいるんだが...ひ、ひっ!?あ、あんなのに、飲まれたくないいやだっ!!いやだっ!!」
「おろせっ!!今すぐ、下ろしてくれ...こんなところまっぴらゴメンだ」
....他の乗員も、悲鳴を上げたり、ヒステリーを起こしている。
これは...中々に、酷いな。
俺は、次いでトリーに目を向ける。
「ハァ.....フゥ......ハァ........フゥ」
それがニードルラビットの群れだと分かると、トリーも似たようなように、困惑....いや、恐怖で体が硬直しているせいか、息が遣いがおかしくなっている。
俺は、気休め程度にしかならないかもしれないが...トリーの背をドンッと強めに押してやる。
「ウェッ.....痛てぇ...なにすんだよ!!クジハ」
「緊張すると、失敗が増えるぞ」
「.......いや、そう...だな」
ついで、馬車の付近に四つん這いの女が近寄ってくる。
奇妙...というか、シュールな格好だし、本当によく分からない光景ではあるが、よく見えてみると、肩の部分が少しだけ下がっている。
なにかにぶつかったか....なにかしたんだろう。
「そこの馬車に乗っている人で、一番偉い人って誰ですか?」
強風が彼女の声をかき消していく。
周りにいる人が、なにか答えようとするわけでもなく。トリーも、ホーンラビットに目が釘付けでなにかをしゃべれるような心境ではなさそうだ。
「すまないがぁあ!!よく聞こえないんだっ!!」
「?」
「よくぅううう!!!聞こえぇぇぇぇぇ!!ないんだぁああああ」
「!!!!」
女は、なにを理解したかのような素振りを見せると、少しだけ形のいい眉を潜めると、なにかを閃いたように口を開ける。
なんだ?なにをするつもりなんだ?
『そこの馬車の人っ!!背後から、兎が迫ってきているので一旦乗せて貰えませんかっ!!』
キィーンと、耳鳴りが発生するほどの爆音を、響かせて女の声が聞こえる。
「な、なんじゃっ!?!誰の声じゃっ!!み、耳障りなんじゃっ!!」
「はっ....女の人...さっきの、いたのか」
「トリー、その女を中に引っ張ってくれ。雇い主....今来た女を、中へと招いてもよいだろうか?」
「ザウラク!?いや、ダメじゃ....既に、かなりの人数が乗っている。これ以上は、ワシらの命を落としかねない。」
「彼女は、なにか知っている可能性がある。どちらにしろ、このままでは、助かることは無に等しい」
「ぐっ......乗せることを許す。だが!!そこの女が、なにも情報を持たないようなら、速攻追い出せっ!!」
「承知した」
俺は、背後...ホーンラビットの大群と、女を見る。
さっきの音...おそらく魔法だろう。
女の手元の、光っている魔獣から手を離して、すぐにトリーがその手をとり中へと招くこうとするも、苦戦している。
かなり重たい荷物でも持っているのか、トリーの額に脂汗が吹き出て、端整な顔をしかめている。
とにかく、警戒はしておくべきだろう。最悪、炎魔法を放つだけの、覚悟を持って.....
「す.......な.......、よ.......な.......」
なんて言ってるの?この男の人は....
私は、眉間に皺を寄せて、長い髪をユラユラと拭きあげている奇妙な風体の男を、見ていた。
「よ.....ぉ.......く......き........え.......ない......だ」
よ...く...き、こ....あぁ、よく聞こえないか。
こんなに、凄い風が吹いてるし、声も掻き消えてしまうのは、確かにその通りだと思う。
それだったら、音魔法で危険を知らせればいいか。
当初の予定では、この荷馬車に頑張って抗ってもらって、逃げようと、考えていたんだけど。
私は遠距離から攻撃ができる人がいる。という前提から、考えていたことに気づいた。
もし....遠距離攻撃が、できる人がいなかったら?
この中には、ざっと見た感じ 男しかいないようなので...おそらく、そのまま食われてしまう。
中に乗り込んで、どういう人物がいるのか?確かめるだけ確かめた後でも、遅くはないかな?
それは、自分を納得させる言葉で、本音はこの不安定な移動を少しでも快適に過ごしたいっていうだけなんだけどね。
『そこの馬車の人っ!!背後から兎が迫ってきているので一旦乗せて貰えませんか?』
音魔法は、順調に発動した。
それと同時に、拡声のようなものではなく...ハーピーのような怪音波に近いモノになったが...一応、上手くいったみたいだ。
よく分からない人を馬車に乗せるほどの余裕があるようには見えないけど、それでも...この状況で、私を乗せないという手はないはず。
その変わり、なんらかの情報が求められる可能性がある。
いざとなったら、飛び降りてでも逃げられるようにライトは、二匹は肩に乗せて置く必要がありそうね。
そう、考えながら喋っていた人はどこかへと行ってしまい、隣で呆然としていた顔立ちの整った男が手を差し伸べてくる。
私は、その手を取りながら....どこかさっきの長髪の人がどこへと行ったのか。少なくとも、この馬車にはもっと管理者のような人がいるだろう。
「大変だったでしょ?肩痛そうだけど、大丈夫そう?」
手を指しのべた、身なりの汚いイケメンに、複雑な気分を味わう。
同年代の子なら、隠れイケメン発見とか...騒ぎそうだけど...見た感じ、喜びよりも怪しさの方が勝ってしまう。
まぁ....嬉しいには、嬉しいけどさぁ
「ライト....右手と左手を離すから、足の方よろしくね。」
「コンッ!!」
「コンッ!!」
子気味のいい返事に、私はうなづいてそっと、手を離す。
すぐに、風に煽られて背後へと吹き飛びそうになるが...
「あ、あぶねぇ...よし、とりあえず手を掴むことはできた。次に、こっち側に押し込むよ」
「よろしくお願いします」
「せぇええのぉ!!うぅううぅ....おもっ....!?!?」
結構、重たいバックパックを背負ってるから、当たり前だけどさ...仮にも女性に対して重っ!!って酷くないかな?なんか、この人嫌いだ。
「お、おいっ!!勝手に、乗せるなよ....あとで、貴族に何言われても知らねぇからな」
「それについては、俺が許可を得た。お前たちも手伝え」
「.......ちっ、貴族の犬風情が」
なにかを御者にいる人と話したであろう長髪の男が、他の人達を説得して手を貸し始める。
そうして、なんとか馬車へと入ることができた。
ライトたちが、背後から飛び跳ねて私の元に乗っかる。
見た目よりも、重くなく...一体一体が、学校の教科書一冊分くらいの重さがある。
「偵察ライトぉ!!マフラーライトぉ!!その他二体」
『コンッ!!』
大分、雑な点呼を終えると、周りの訝しげな視線にさらされていることに気づく。
まぁ...それも、そうか。
特に目立っていた長髪の男と、汚ケメンが前に出てくる。なるほど、この二人がこの中で一番強いのかな?
長髪の男は、180センチは行きそうな身長をしてる。
汚ケメンは、170センチちょっとくらいで、どちらもかなり大きい。
私の身長は、156センチくらいなのでかなり大男に見える。
でけぇ...
「まずは、馬車に入れてもらい感謝します。御二方と、奥で御者をしている方」
「御者では、ない!!ワシは、ラディシェン雪原を収める貴族....デラシ・ラリアット・ラディシェンと言う。」
「とりあえず、お主をわざわざ入れてやったのは、他でもないあの災害をなんとかするためだ。なにもできないのなら、今すぐ出ていってもらう。」
「クジハ!!ワシは、御者で忙しい。代わりに、対応しろっ!!」
「え...えぇ.....」
なんで...貴族が、御者なんかしてるのか?とか、この馬車はどこへ向かっているのか?とかそういうの疑問が色々あるけど...
「俺は、ただの雇われた身の冒険者だ。」
「あの大群....お前は、なんとかできる術を持っているのか?それが、できないなら、なにかあれについて知っていることはないか?」
なにか、不服というような表情を、しつつも...私に聞いてくる。
冒険者.....ねぇ.....
「私も、あれに巻き込まれた人間だから...詳しいことは、知らないけど....ドレットエイプなんかは、あの中に入った瞬間一瞬で青い毛皮の状態になってた。」
「はっ!?!なんだそりゃ....それじゃ、この馬車も後に」
「トリー、静かに」
「そうね。少なくとも、この馬車があの雪崩の中に巻き込まれたら、一瞬で後片も残らないでしょうね」
「ちなみに、聞くが...一人であれらをなんとかすることは出来そうか?」
「無理ね。さっきの、音の魔法で牽制しつつ、こっちまでなんとか来たけど.....もう、慣れちゃったみたいで、全く効かないみたい」
「少しだけでも、あれを硬直させることができたっていうのか?君が」
「........もっとも、動けなくなったホーンラビットは、周りのホーンラビットに一瞬で食われちゃったみたいだけど....」
『............』
「コンッ!!」
各々、想像以上...と言ったような顔をしている。周りを見てみると、絶望してる瞳をした人が何人もいる。
この馬車の人たちは、どういう人生を送ってきたんだろう....
そんなこと、考えてる場合じゃないか。
「あなた達は、なにか手があるの?」
「.....ないな。今のところは」
「なにかあったら、手を今頃は打ってるだろ...それに、魔法を使えるのは俺とクジハだけ....その俺も水魔法じゃなぁ.....」
「貴方は、なんの、魔法が使える?さっきの音と、その光獣を使役する魔法か?」
「ライト....狐の子を召喚する魔法を使えるけど....」
「話にならないじゃないかっ!!下ろせ下ろせっ!!」
周りから、ブーイングが殺到する。
だけど、ここで私がライトではなくて、光魔法....とか言ったら、伝説を信じて、なにかビームだせそうとか...回復できそうとか....色々有能そうな人になってしまう。
それで、特攻をしろとか言われたら、それはそれで面倒だし...これでいい。
「下ろすかどうかを、決めるのは雇い主だ。俺たちじゃない」
「は!?!何言ってんだお前。俺たちの命がかかってんだぞ」
「いいから、下ろせよっ!!」
「あ?なんか、文句あんのか?」
「ひっ.....」
野次馬に、睨みつける長髪長身の男。
短髪の男は、やれやれとでも言うように、肩を落とす。この人たちは、結構余裕がありそう。
「雇い主殿.....この女は、魔法を使えるというだけで、役に立ちそうだ。」
「先の、ライト?と呼ばれる魔法で移動してくるモノも、目に見張るものがありました。」
「......それが、具体的になにか役に立つのか?詭弁などいらん。ワシの役に立つのか。立たないのかで考えろ」
「.......役に立つと判断した。」
「ふむぅ.....」
貴族は、なにかを考えるように髭をさする。
なにかを、据えるような目で私を見つめる。
そこには、卑猥なものというよりも、どこか価値を値踏みするような視線を感じる。
金....に貪欲な男.....と言ったところか。
「まぁ...いい。ラグジャー、ザウラクそして.....」
「スノードロップ・シェリアクと言います。」
「シェリアクは、雇ったわけではないが...ワシの馬車に乗るのだから、それなりの成果を出してもらう。あの、大群をなんとかせいっ!!」
デラシ・ラリアット・ラディシェンは、馬を操っているため、前を向きながら、大声で言い放った。
「ちっ.....主人公様方は、違ぇな」
男は、腰を下ろしながら、三人組を見て....すぐに、外へと向かって言い放った。
片腕のない男は、一人目を瞑むる。
結局、俺には関係のないことだ。
結局、誰れかに欲せられるような存在じゃない。
分かってる....分かってる。いや、そもそも別にあんな中でなにかをしないといけない?はっ....笑わせてくれる。
今も、目の前に迫り来るホーンラビットの群れを、眺めながら...自分の命が、尽きるその一瞬に恐怖で....恐怖で.....
「あの人たち...魔法使えるんですね....」
「........話かけんなよ」
「いや....僕には、とてもあんな場所に立って、逆境を変えようなんて思わないんです。」
「..............で?」
「いや...その」
ボロボロの髪を、ひょろひょろの腕をした女が話しかけきた。
見るからに、今までの生活すらままなりませんでした。と....分かるような女。
俺は、その女に目線すら合わせない。合わせる必要がない。
変なことに巻き込まれたくないからだ。誰かが、関わってきて...必要のないことをされて、面倒なことになるのが嫌だからだ。
「僕は、あの人たちが...凄いと思う」
「へぇ......」
余りの俺と同じようなモブ共も、目をキラッキラッさせて、あの女と、二人の透かしたイケメンどもを見ている。
このボロボロの女も....
「お前らは、どうせ....なんもできねぇもんな」
「..........」
髪の伸ばしきった顔すらどんな顔をしてるのかすら分からないボロボロの女は、おそらくなにか嫌な気分にでもなったのだろうか。
いや、嫌な気分になったんだろうな。
一言も、文句すら言わない。
......楽しいのか?
そんなんで......なにが、楽しいんだ?
いや、俺もなにも楽しくないけどな。なにも楽しくないけど、お前らみたいな尊敬の眼差しっ!!
みたいなキラッキラッした目で、別の誰かを見ていると...吐き気がする。
「.....なんだよ」
「いえ......別に、なんでもないですよ」
「いや、嘘だな。なんか言いたいような雰囲気を出してる」
「僕は、別に....なにも、思ってないですよ」
「っ....!!すぅ......あぁ、そうかよ」
思いっきり立ち上がって、殴りつけたくなった。
一瞬腰を、浮かした俺は、それでもこの行動か、なにか嫌な因果に結びつきそうな予感がしたから...やめた。
「クソ.....」
「あなたは、優しいんですね」
「は?」
いきなり、なにを言い出してんだ?こいつは....
よく分からない。本当に、よく分からない。
俺は、今まるで気持ち悪い生き物を見ているかのような目で、その女を見ているだろう。
その、骨と皮だけなんじゃないか?とすら思える腕を持ち上げてなにかを、見据える。
「どうせ....僕達は、今日死ぬんです」
「............」
「そんな、最後の日に、こんな優しい人としゃべれて良かった。」
「.............どう、して、優しいと思ったんだ?」
その、小さな頭をこてんと、下げて....顔の見えない女は、どこからか言葉を出しているのかすら分からない女は、そっと言葉を紡ぐ。
「僕は、今まで誰からも話をされることが、ありませんでした。こんな見た目だから...大抵、人の家に行くと、ゴミとか...あぁ、パンを投げつけてくれた人は、嬉しかったな。」
「あと.....なんだろ?よく覚えてない...僕と、話をしてくれた人なんか、いなかったから。」
「.......話してくれたから、優しいってことか」
「......そういう、わけじゃないですけど...」
クソ...イライラすんな。吐き気すらする....その口を閉じろよ。とか、言えりゃ、気が済むのか?
今すぐ、その長い髪を引っ掴んで、黙れよっ!って、いや...楽になんのか?
「語られても、困んだよ」
「そ、そうですよね。すみません。僕、嬉しくってつい」
「..........」
もう、なにを言っても、イライラの種にしかなんないな。なんで、こんなひでぇ奴に、最後の最後で出会うんだよ....クソ...死ねクソ
「.....お前、名前は」
「?」
「名前は、あんのかっ、って聞いてんだよ」
「.......名前なんか.....ないですよ」
「そうかよ。俺の名前は、スクトゥム・スプリンガー......ゴミ、いや...ゴミは、ここの周りにいるやつらか....お前の名前は、あとで俺が付けてやる」
「..........」
「一人分くらい、守る覚悟はある。」
「...........」
「黙って、見てろ。そんで、そこに座ってろ。あとで、迎えにくる。」
「はい......」
俺は、そこまで酷いほどのやつなのか...
女の近くに、鼻を近づける。
ちょっと、だけ....いや、骨と皮みたいなやつだから...固くなったのか、固くなってないのかすらわかんねぇけど...強ばったのか?
と、近づいた時に気づいた。俺...今、このラディシェン雪原の寒さで、鼻詰まってるわ....w
「よく分かんないけど...お前は、そんな嫌われるようなやつじゃないだろ」
「........」
とりあえず、動くことにした。どこに行くのか?こんな普通の人間でしかない俺が?.....行く場所なんか、決まってる。
なにか話をしている三人の中の近くで声をかける。
「おい。結局、お前らは、救えんのかよっ!!」
あぁ.....なんか、違うな。これは....
〜スノードロップ・シェリアクのノート〜
現在地 ラディシェン雪原
魔物 滅多に現れないサル (ドレットエイプ)
ゴブリン
ホーンラビット(雑食)
吹雪が続き雪が積もっているため、歩いて進むのは困難を極める。(ヤバすぎる場所)
私の情報
顔は、普通くらい(自分基準でっ!!)
new!!身長 156cm
私の魔法 光魔法 召喚魔法 ライト(白くて光る狐
10体まで)
new!!移動に便利
光の盾 (硬めの板)
ライトカーテン(便利なカーテン) ライト・ヒール (小回復)
音魔法 声を響かす。
パンチ強化
装備品 ジャイアントラビットの毛皮 巨大バック
持ってると暖かくなる赤い石
(龍の卵パーティー(仮))
クジハ・ザウラク 木刀と、火魔法を使う魔法剣士?
new!!180cm
長髪で、鞘を携えているラグジャーには、劣るが顔は整っている。
トリグリー・ラグジャー 水魔法使い
new!!175cm
イケメン・new!!(彼女いっぱいいる)
※魔法使いは、惹かれ合う。
new!!スクトゥム・スプリンガー
自分の身の程を知りすぎて、卑屈になった男
普通の一般人
new!!!????? 僕っ子
女の子 皮と骨だけしかないような不健康女子
new!!デラシ・ラリアット・ラディシェン 貴族(御者)
金好き・モンスターコレクター
(愛称 ラリアット様、雇い主、クソウザジジィ)