第52話「Something I Need」
――ソロとしてのアルバムリリースに全国ツアーを終えて思われることを。
「そうですね。バンドをやっていた時はひらすらシャウトやデスボイス多用ってスタイルだったので、ふつうに歌うことがこんなに楽だったのかとライブの度に思いました」
――社会ニュースにもなった昨年のツァーリとの共演、またモスクワでのライブ、これらの出来事がユイマールさんに与えた影響は具体的にありますでしょうか?
「今はロシアに遊びに行くなんて考えられないですよね。私もさすがにロシアにまではついていかないつもりだったのですけど、当時すっかりマブダチになったノエルがどうしても一緒に来てくれって言うから、ついていった記憶があります。これまで度胸が試される事は何度もあったけど、多分1番それがあった場面」
――伝説的ロックンローラーになったノエル・ギャラバンとの動画投稿の応酬、その発端はあの航空での出来事に始まっていますが、あれは意図的に行った?
「ん~多分何度も話していると思いますが、私は元々歌手としての彼女の姿勢がすごく好きで。ただそれだけで会いに行っただけです。フェスをほっぽりだしたからどうのっていう気持ちは全くなかったです。でも確かにイギリス本国じゃあエティハド・スタジアムでファンを集めてライブができちゃえるぐらいですし。ムーンホールに招待させたのは失敗だったのじゃないかなぁ」
――メテオシャワーフェスですね。ソロの活動に入られてからはそちらの出演がないみたいですが。出演したい想いや出演するならどういう形でという想いなどありますでしょうか?
「あの、言ってイイ事かどうかわからないのですけど、じつは何回かオファーは頂いています。でもお断りさせて頂きました。申し訳ないとは思いつつも」
――それは何故でしょう?
「やっぱり出るなら歌ウ蟲ケラでと思いますね。そうじゃない形で思い出を作りたくなくて。その形で残っている思い出がいっぱいですから」
――特にそのなかで格別なものを挙げるとすれば?
「みんなはジストペリドとの共演って言うのでしょうけど、私的にはめくるさんが最後の1曲を中継結んだ形の場面で譲ってくれたことですよね。ロックバンドがアイドルに気を配る事は珍しくないのですが、アイドルの御方がロックバンドに気を配って美味しいところを譲るなんてね、ましてや女性同士では普通ない事ですし」
――楽曲を手掛けるミオタニアンさんの存在が大きいですよね。
「曲を作る意味ではそうかもしれません。でも歌ウ蟲ケラって大人になって結成してからは1度もメンバーチェンジしてないのですよ。この世界でそういうのが全くないバンドって私ら以外にはあまり聞いた事がなくて。だから多分一人一人大事なメンバーでかけがいのない存在だったと思います」
――歌ウ蟲ケラの再結成はあるのでしょうか?
「あの、解散してないですよ(笑)」
――失敬。歌ウ蟲ケラの活動再開はあるのでしょうか?
「あるとも言い切れないし、ないとも言い切れないですね。ただ私達の仲で決めている事があって、次の解散にあたる3度目の解散をしたら、そこで本当に終わろうっていう事だけ決定事項です」
――今から解散したら3度目の解散なのですね?
「話すと長くなっちゃうのですけど、私らって高校時代にメンバー入れ替えはありつつも1度バンドを形成していたのですよ。最終的に私とミオタの2人きりって事になって、やめようかで解散して」
――なんと!? 高校時代からのバンドなのですね!?
「そうです。軽音部の入部から始まって。またあの面々で活動を再開することになれば、それを動画のネタにするか、歌のネタにするか考えてもいいかも」
――映画化はどうでしょう?
「いや~私ら自らが演じるのは恥ずかしいですし、かといって私らみたいな奴らをリアルに再現する配役とか難しいだろうなぁ。高校時代とか特になぁ」
このとき彼女は全く考えていなかったが、この音楽雑誌のインタビューが大きな意味を持つことになる。いつものように全国ツアーとアルバムの事をあれこれ聞かれた内の一節だったこのくだりに。
そしてこの物語はまだ終わらない。
3度目の解散は未だに発表されてないのだ――
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪いよいよ明日、泣いても笑っても最終回です♪♪♪宜しくお願い致します☆☆☆彡




