第49話「Don’t Look Back Anger」
ツァーリはコロナ禍が明け、ロシアとウクライナの戦争が始まった頃より本国イギリスを中心に世界的にファンが広まったロックバンドだ。
紅一点ボーカリストであるノエル・ギャラバンとギタリストのリック・ギャラバンは姉弟。そしてその祖先はロシア民族ことスラブ系にある事が取沙汰されているのだが、本人らはその意識が全くないと言う。しかしそのルーツを持つからなのか、幼い頃から貧困で貧しい孤児院のようなところで育ったと言う。
ロックバンドでありつつも彼らの音楽は特殊だ。そのリズムの取り方はヒップホップなどでみるタイプ。またその音楽に合わせてノエルはほとんどラップしていくというスタイルだ。曲のサビはノエルがラップをフックにさせているものか、あるいはリックが歌うというもの。彼女らを知る日本人のリスナー達はまさに日本の歌ウ蟲ケラを外国人がしている印象を持つという。
世界的にそのスタイルはドリラーと言われており、そもそもの発祥は米国からと言われるが、爆発的に流行ったのは英国ロンドンの若者層からである。
そのキッカケがこのツァーリというワケだが、ノエルは幼少時代から不良少女だった経緯が見るからに明らかな出で立ちだ。ドラムのトディはイタリアにそのルーツがあり、ノエルの不良仲間の一人だったという。ベースを担う黒人人種のラッセルはメンバー唯一の富裕層出身で大卒の青年だ。彼らとは音楽活動をする中で自然と出会ったと言われる。リックは貧しいながらも、そうした知的階級の高い人間との交流も大事にしていた。このトディとラッセルの加盟まで数え切れないほどのメンバー変更をしてきたとリックは常々メディアで述懐する――
そんなツァーリの紹介を淡々と唯は自身のユーチューブチャンネルの動画にて語る。ノエルがうるさいぐらいに日本やヴィベックスはてまた歌ウ蟲ケラの悪口罵詈を猛烈に続ける一方でじつに冷静な振る舞いであった――
この唯のアクションにアメリカの元プロレスラーで問題ユーチュバーとなっているウィリーことウィリアム・トランプが反応し、ネタにして騒ぎだしてきた。その趣旨としてはノエルと唯の双方の正体がいかがわしい商人であるというもので、実はこの騒動そのものが日本とイギリスの関係者による共謀の陰謀だというのだ。
ノエルはすぐさまに反応してウィリーを侮辱する言動を連発。遂に彼へのディスソングをシングルにしてだすまでの暴挙にでた。
この流れに乗ってなのか歌ウ蟲ケラも「ぷ・れ・で・たぁ」という新曲を発表。曲中の「ストップ、ストップ、ウィリー、アップロード」というフレーズが日本だけでなく米国や英国でも話題になった。茶化しにきたウィリーを逆に茶化したモノを作ったのだ。しかし日本ではそのタイミングでジストペリドとメガネ愛が新曲をだし、辛くも初登場3位でピークを終える。余談だが英国のチャートでは日本語の歌にも関わらず22位に入った。
ここに対しノエルが『アイツらは私らをネタにして飯を食っている! 私らがいなければあんな歌で話題になる事もないのに! 私らに対して感謝をするべき奴らだ! 今すぐバンド活動を終えて日本に私らのファンクラブを設立しろ!』と大声で怒鳴った反応をする動画を投稿。
この凄まじさにやばいものを感じたのか、あるいは彼女たちの争いにいささか飽きたのか、ウィリーは双方を動画のネタにしなくなった。また急速に親日家や親英家みたいなキャラクターをみせ始める。
しかしここにきて冷静にこのムーヴにのっていた唯が衝撃的な動画を投稿する。
野外ライブでギターを担ぎ、ツァーリのバラード曲のカバーを歌う。ちょっとアレンジが入ったところがあり、日本人が無理して頑張っている感じがあった。
それから唯はギターを外してバックに歌ウ蟲ケラのバンドが入り、正真正銘のツァーリのカバーをみせた。1曲目のバラードよりも明らかにクオリティが各段にあがり、本家本元よりカッコイイのでないか? とのコメントが日本は元より世界中から集まった。特にイギリスからの書きこみがかなり目立っていた。
しかしこの動画、世界で話題になったのはそこだけではない。
最後に日本の観客に向かって唯は英語でシャウトした。
『日本でファンクラブなんて作らなくても私らそのものがツァーリの最高のファンを体現できる! ムシケラ舐めるな! 愛しているぜ! ノエル!!!』
ノエルはその動画をみてスマホを壁に叩きつけた。
それを憐れむように眺めるリック。
彼はこれからどうするべきかそのときに決心できたという――
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪ユイマールがギターを持ってバラードを歌いだすところはかつてJAY-Zが彼の悪口をいいまくるOASISのカバーをした光景をイメージしております♪♪♪勘違いしないで欲しいのですが、僕はOASIS大好きですからね(笑)(笑)(笑)また来週。また次号。




