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第46話「私は最強」

挿絵(By みてみん)



 ムーンホールはコノヒトとメルシィさんたちの共演が終わってしばらく『もう暫くお待ちください』のアナウンスが6分間に渡り流され続けた。



 200人の観客席は満席。誰一人席を離れようとしない。おそらくこの多くがこのステージの大トリにロマンを賭けているのだろう。



「大丈夫かなぁ」

「オロオロするな。1曲だけだろう」



 舞台袖で青年アイドルと壮年バンドマンが会話を交わす。壮年にいけぇと肩を軽く叩かれRISER☆Sの壱星がそのステージに立った。



 壱星の心配をよそにムーンホールは盛り上がる。



『皆さん、ありがとうございます。この会場に来られる皆さんがどういう感じで音楽を聴いている人達なのか僕は予想できなくて不安だったのですけど……盛り上がってくれて本当に嬉しいです』



 彼は深く一礼をする。



『このフェスを直接興しているのは僕ではありません。ですが、僕たちは約10年前、ある女の子の死にショックを受けました。彼女は本当に若い命を亡くしてしまって。その死が自殺だとかどうだとか勝手に騒がれて。僕は本当にショックでした。彼女は僕たちのファンではなかったみたいです。だけど友達が欲しくて僕たちの歌を聴く事も挑戦してくれたコでした。その事実を知ったのは僕がそのニュースを聴いて、実際にそのコのお家を訪ねたからです』



 壱星は言葉に詰まる。しかし続けた。



『皆さん、リアルってどこにあると思いますか? 僕はいつもその問題を自分に問いかけています。今もここ日本では若くして命を失うコたちが絶えない。その悲しさに問いかけたいのです。どうか、どうか一人で悩まず僕らに「苦しい」ということを話して欲しい。そして一緒に考えたい。この曲はいつか形にしようと思ってやっと形にした1曲ですタイトルは――』



 そのタイトルは相談電話センターの番号だった。



 壱星の歌声が会場に響く。



 曲目は2番に入って華崎鮎美がステージにあがってきた。



 何十年振りだろうか。彼女は自分のパートを歌い上げる。



 さらに曲の終盤ではRYUーSAYのリュウヤが登場した。



 このまま壱星のステージになるのかと思いきやマイクを持って話しだしたのは華崎鮎美だった。



『お騒がせしました。華崎です。元々歌を歌うステージに戻ってくるつもりなどなかったのですが、あるミュージシャンと交渉しまして。ちょっとだけ戻る事にしました。別にアルバムをだすとか、ツアーを始めるとか考えていません。このステージに立つこの時までは社長代理に普段の私の仕事を任せていましたから、そこにこのあと戻るつもりです。だけどこの瞬間、このひとときはこう思ってもいいですか?』



 大きく息を吸って彼女はその歌のタイトルをコールする。



『私が最強!』



 それは綺羅めくるがこのフェスの後に出す新曲のカバーであった。




 サンホールはジストペリドが最後に「ライフ・イズ・ビューティフル」を披露。その途中で綺羅めくるが入ってきた。このパートは当初、華崎鮎美が入ってくる予定だったが変わったのである。歌姫とあの当時から謳われてきた彼女が今度は大いなるセカンドブレイクを果たした姿で戻ってきた。



 そのまま綺羅にバトンタッチ。3会場で最も大きな会場は最高潮の歓声をだす。



『いやぁ……運命……運命ってあるのですね。約10年前か、私はもっと痩せていたけど、ちょっと太っちゃって。あ! こら! そこ笑うな! それでもっと尖っていたのですね。あのときは騒ぐだけ騒いじゃって。本当に申し訳ないって反省しているけど、戻ってきたよ。ちゃんと反省して戻ってきた。ただいま!』



 どこからか「おかえりー!」と大きな声が。彼女はグッと涙を堪える。



『あれから面白い事を喋るタレントみたいな存在になりました。でも本当は歌を歌っていたかった。歌わせて貰える場を持たせて貰えるだけでありがたかった。だからさっきはこんな事を言わなかったけど、今は敢えて言いたい』



 大きく息を吸って彼女もその歌のタイトルをコールする。



『私が最強!』



 本日2度目のその曲の熱唱だった――




 ムーンホールでは華崎が「私が最強」を歌いきり「MiNaToさん、おいで!」とMiNaToをサプライズで呼びだした。



『今日はこれだけお客様と近い会場だから、皆さんと一緒に歌える歌を歌いたいと思います。皆さん、一緒に歌いたい歌がありますか?』



 なかなか声があがらない。そこで華崎はMiNaToに『何を一緒に歌う?』と尋ねる。タジタジしながらも彼女は「翼をください」と切り出した。



 それから「翼をください」「大きな古時計」最後は観客席からリクエストが出たジストペリドの「シラユキ」をMiNaToと熱唱する。とてもアットホームなそのステージングに観客は圧倒された――




 サンホールでは綺羅めくるが「私が最強」に引き続き「新時代突入」を披露。



『アンコールでもないのに1日に2回も自分の歌を歌えるなんて幸せだね。あの、この流れだとあの曲だよね?』



 観客席から「うっせぇよ!」の声が多数。



 すかさずめくるも『うっせぇよ(笑)』と返す。



『アハハ! 何コレ? うっせぇよのやまびこ? それで今日はアースホールに私が最高にお世話になっている最高にうっせぇ人たちがいるみたいで本当は最初からそこと繋いでみたかったけど、思いのほか調整できなかったみたいです。』



 このめくるのアナウンスに会場中はざわつきだした。



 そして会場のモニターに会場中がヘドバン中のアースホールが映し出される。



 この異変に歌ウ蟲ケラが気づいたのか「神様如何様」の演奏が終わってすぐに唯と美桜と梓が正座をしてみせた。



 アースホールもサンホールも爆笑に包まれる。



『お騒がせしてすいませんでした』

『『すいませんでした』』

『いや、貴女たち、いつも騒いでばかりでしょ~』

『あの、今からですか?』

『はい。アイドルとロックのコラボです。ミオタさんが作った曲を歌います』

『何だよ~もう~そういうのってなんか』

『『うっせぇよ』』



 唯とめくるの声が重なる。アースホールもサンホールも大爆発しているのだと思わんばかりの歓声があがる。



 そのまま綺羅めくると唯の合唱、歌ウ蟲ケラの生演奏による『うっせぇよ』が披露された。曲の節々で唯と美桜が「ウォイ! ウォイ!」と合いの手を入れて、曲が終わる頃にはアースホールの観客がソレをやりだした――



 また唯や歌ウ蟲ケラ、そしてアースホールの観客たちがするヘドバンを唖然としてみる客や笑う客や真似する客に溢れるサンホール。まさに多様化した音楽の祭典がそこにあった――



『ありがとー! ごめん! 思ったことを言っていい?』

『なんでしょう?』

『アンタら、本当にうっせぇよ(笑)』

『そりゃあ褒め言葉だぜ! うおおおおぉぉぉおお!!』



 美桜が甲高いギターを弾き甲高いシャウトをあげる。



『じゃあ最後は私たちもうるさくなろうか?』

『え? え? どういうこと?』

『歌ウ蟲ケラの歌に合わせて、私と会場のみんなでヘドバンしましょう!』



 めくるの提案に一部から「え~」という声が聴こえたが、彼女は歌ウ蟲ケラの新曲披露を一緒に楽しみたいと語り掛けて、サンホールすらも巻き込んだ最後の楽曲披露がおこなわれた。



『ウオオオオォォオオォォシ! 準備はイイイィィィイイカアアアァァァアア!!』



 雄たけびのような歓声が唯のシャウトに木霊する。



『メンカタアアァァァアアァァ!!』



 コッテリィィィイイイイイィィ!!!!



『セアブラアアアァァァアアァァアァ!!』



 マシイィイィマシイイィィイィ!!!! という大歓声の中で『ラーメン週16中毒』という新曲の披露がなされた。



 あまりに派手な楽曲だったが、ノリノリでヘドバンして踊る綺羅めくるを真似して激しく動く観客がサンホールにも溢れだした。



『みんなぁ!! アリガトウウウウウウゥウウウウゥウウゥゥゥウウゥス!!!!』



 唯が叫びきり、メテオシャワーフェスの2会場の演目は終わる。



 もはやアンコールなど必要なかった。誰しもがその異常な熱気でヘトヘトになる。



 この綺羅めくると歌ウ蟲ケラのメテオシャワーフェス復帰はテレビ中継された事も波及して一気に日本音楽業界のトップトレンドとなった――



 新時代は始まっていた。誰かが想像していたよりも大きな波をおこさんとして。



∀・)Meteor Shower Fes.最後までお付き合い頂きありがとうございました♪♪♪僕の中でこのフェスは前半と後半の2本立てでこの後半で完結した事になります。凄く楽しい取り組みでしたね。意外とノってくれる方々が多くいらっしゃったことに感謝したいなと思います☆☆☆彡


∀・)あと綺羅めくるさんの「うっせぇよ」ですがADOさんの「うっせぇわ」のカバーということで僕のYoutubeチャンネルでアップします!マジでカッコいいから聴いてくれよ!詳しい事が決まり次第なろうやTwitterで告知しますね☆


∀・)それから本作本話で登場したMiNaToですが↓↓の城河ゆう様の作品の主人公のミナトさんという事にしております。ド低温ボイスのくだりとか本作を読んだらよりリアルに伝わると思います。宜しければ是非是非お読みください☆☆☆彡



『Melody's my life~歌と共に歩んでいく日々~』

https://ncode.syosetu.com/n4234ih/

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