第45話「新時代」
時間は遡ってフェスが開始される数時間前、アースホールの大トリを予定している歌ウ蟲ケラの面々は楽屋で山里より説明を受けていた。
「なるほど。じゃあ移動するのは私ってことか」
「ミオタは走れないでしょ~」
「走らなくても間に合うわ!」
「俺達は変に出ない方がいいか。社長も楽屋からでないよって言っているし」
「でも、美桜さんも梓さんも出番がありますからね……どのみちって感じが」
「え? 俺って出番あったか?」
「あったでしょ。アンリさんで」
「あぁ~忘れていたわ」
「しっかりしろ。さっきリハーサルしたでしょ」
「しかし今回の大トリ、話題になるのは誰だろうね?」
「俺らって言いたいけど、社長と違うか? 世間的に」
「ツァーリは日本では知られてないからね。私はすげぇ尊敬しているけど」
「あぁ~彼女たちね。本当ならアスホのトリを任されて然るべきだろうに」
「怒らないか心配やなぁ。あんなチッサイ会場で」
そこで彼女達の楽屋に入ってくる者が現れた。
「美咲さん! と康さん」
「どうも。差し入れを持って来たわよ」
「来られていたのですね!?」
「ええ、客としてね。貴女達の晴れ舞台、とくとみさせて頂くわ」
「あの、客の中にいたら、逆に騒がれるのとちゃいます?」
「コホン、我々はVIP席で鑑賞です。ご心配なく」
「そんな席があるの。このフェスも進化したなぁ」
「今や楽屋も冷房完備しているし。変わるものだよ」
さらに差し入れを持ってきた来客が一人。
「めくるさん!」
「あはは~! どうも~! 蟲ケラの皆さんって言ったら失礼か」
「バンド名だから大丈夫だよ。ソレどうしたの?」
「私からの差し入れです。私の再ブレイクは『うっせぇよ』があったからだし、それがあるからこそこのフェスに戻って来られたと思って」
「新田の野郎に持ってこさせたらいいのに~」
「そこは私が直接持っていくべきだと思って」
「なかなか礼儀があるコだなぁ」
「それにこのフェスに来た時、暴言を吐いちゃった事があって」
「それっていつもの事じゃない?」
「いやいや! テレビでだしているアレはキャラ作りでやっているの! でも、だけどその時に暴言を吐いちゃった人がミオタさんによく似ている人だったなぁと今でも思いだす事があって」
「昔話でしょ。今はもう覚えてないよ。仮にそうだとしても、だったからこそ、あの『うっせぇよ』に繋がるのでないのかなぁ~」
「よ! 女前! 山田美桜!」
「女前ってどういうやつよ?」
綺羅めくるはじっと視線を送られることに気づく。
「あの? 何か?」
「いいえ。あなたって目に力がある人ね」
「ははは。美咲さんほどの人に言われると照れますね」
「何か運気が巡ってきそう。今夜何かあるかもよ?」
「えぇ~やめてくださいよ! 恐いなぁ!」
「そうよ! それより2人とも私にじっくり抱かせなさい!」
その美咲の予感は的中する事となる――
メテオシャワーフェスが始まって運営本部にいるヴィベックスOグループ党首、斧崎豊は苛立ちを隠さずにいた。
「どうなっているのよ~!! ツァーリと全然繋がらないじゃナ~イ!!」
「失礼。入るね」
「モロフッちゃん! 全然繋がらないわ! どうしようかしら!!」
「誰と?」
「ツァーリ!」
「ええっ!?」
イギリスの新進系ロックバンド「Tsar’」は世界的なブレイクを果たし、日本でも少し話題にあがる洋楽アーティストとなっていた。このたびは初来日でメテオシャワーフェスの大トリ出演が決まっていたのだ。しかしその直前になり、日本で彼女達の面倒をみるスタッフとも連絡が取れなくなった。
フェスの大元の運営は斧崎と諸伏が仕切っていた。他出演アーティストの所属レーベルの社長がアドバイザーとして臨時応対する事になっている。だけれどもツァーリの件はそういった人たちへも内密に動かしてきた事であり、運営当局は頭をひたすらに悩ませた。
こうして悩んでいる間に刻一刻とフェスは進行していく。
「斧崎さん、私に妙案があるの。ぶっ飛んでいるけどいい?」
「内容によるわ。本当にふざけたものならブッ飛ばすわよ?」
諸伏の提案はまさにぶっ飛んでいた。しかしそれしかないのも現実だ。
「確かにあの社長なら納得してくれるかも。あのコたちもね。でもそれだとさ、最後のあのサプライズはどうするの? ムーンホールは繋げられないわよ?」
「いや予定通りで。歌ウ蟲ケラと彼女はこのフェスと縁が深い。『うっせぇよ』とあと1曲何か歌えれば充分にこのフェスの成功に導ける。社長のライブは200人の観客が唯一肌に体感できるプレミアの機会にすればいい。どう?」
「あなたねぇ~」
「ダメかなぁ?」
「センス良いじゃあないの~」
「納得するのかい! じゃあやるよ!」
「それ前にいい?」
「何?」
「その心は何かしらね?」
「イチかバチか」
「のった♪ やるわよ♪」
すぐに大トリを任されるアーティストに連絡がいく。
「つまり私たちはこのアースホールのままでいいって事?」
「ただ社長と歌うのが彼女と歌うことに変わりますね」
「まぁ『うっせぇよ』は俺らのアルバムにそもそも入っているし、演奏できない事もないか」
「あと1曲を何にするかだね」
「社長のRevolutionじゃないか?」
「あれを彼女が歌えるか?」
「ジストペリドが何とか歌ってくれたしさ?」
そこで山里のスマホに連絡が入る。
「新田さんから連絡が入りました! 最後のステージは3曲目から液晶モニターで繋いでやるそうです! 曲目は『うっせぇよ』で始めて後は歌ウ蟲ケラに全部合わせると!」
「マジかよ」
「合いの手を入れてくれるとか云々するって感じか?」
「サンホールジャックだね。数年前を思いだすわ」
「まさに! ん? 山里はどうした?」
「いや、なんか、こう感動しちゃって」
「はっはっは! 泣くのはフェスが無事に終わってからにしろよ!」
「よし! じゃあアレをやりますか! 山里も一緒に!」
歌ウ蟲ケラと山里が円陣を組む。そして――
「「「「「気合いだ! 気合いだ! 気合いだあああぁぁああぁあ!!」」」」」」
彼らは颯爽とステージに向かった――
Benzaiの最後は彼の最新曲である「RED SPIDER」のはじめを彼のアカペラで、そこからバックバンドで歌ウ蟲ケラが入ってくるという構成で迎えた。
『これからお前らがやってのける時代だ! かませ!! 蟲ケラァ!!!』
Benzaiの掛け声で歌ウ蟲ケラのステージに入る。
最初の曲は『殺しのメロディー』だ。まさにこうして新時代の幕があがった。
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪はい(笑)こういうことでした(笑)でもちょっとまだ秘密がありますよ(笑)明日の次号も楽しみに☆☆☆彡




