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第32話「スモーキン・ビリー」

 その衝撃的な発表の翌日から美桜のユーチューブチャンネル名は元の「ミオタニアン・アイドルカタリズ」に戻った。そして歌ウ蟲ケラの新チャンネルが開設される。その1発目の動画は「LIFE GOES ON」という楽曲のPVで、唯と美桜がツインボーカルをしつつも彼女たちのラップを披露した、これまでにない斬新なスタイルのものであった。



 新チャンネルの更新は毎週木曜日に為された。



 2本目の動画ではスタジオにジストペリドの楽曲提供を手掛けている三日月満氏が現れ「LIFE GOES ON」の製作サポートを担っていた事実が明かされる。またも世間の話題をさらった。



 この調子で2週間に1度は新曲のPVがあげられていく。



 ユーチューブの動画上に映る彼女たちはかつてテレビに映って体を張る彼女達よりも断然に活き活きして輝いているようだった。



 観衆は「解散するなんて嘘だったのか」「ここまで頑張っているのに解散なんてしないで欲しい」という声をあげだしていた。



 しかしその時はやってきた。



 あのペットボトル事件の騒動から1年が経って、彼女達はセカンドアルバムをリリースする。「犯行声明を」と題されたそのジャケットは真っ赤な背景に正装の彼女たちが煙草を吸っているものだ。アルバムはオリコン初登場6位を記録。



 そのアルバムが市場にでた時にこんな噂が広まる。



 進刻高校の学園祭でライブをやるらしいと。



 そしてそれは現実となる。




 進刻高校学園祭のステージで吹奏楽部やダンス部の演目が終わる。その演目に参加した生徒は口々に言う。「こんな体験をすることは一生ないだろうなと思わせられるほど緊張した」と。



 そのグランドがいっぱいになるほどに観客に溢れていた。あきらかに学園祭が目当てではない客層なのは一目瞭然だ。



 そのステージに4人がそれぞれの楽器を持って立つ。



『みんな! お待たせ!! ソロモンよ!!! 私は帰ってきた!!!!』



 美桜の挨拶に合わせた唯のシャウトで会場から大歓声が。



 1曲目は彼女達の原点である「歌ウ蟲ケラ」を演奏する。



 2曲目に「殺しのメロディー」を。



 3曲目に「LIFE GOES ON」を。



 ペットボトルを投げる客なんてもういなくなっていた。



 唯は歌の途中で泣きそうになったがそれをこらえた。



 本来の目指した歌手にやっとなれた気がしたからだ。



 終盤の3曲は唯と美桜のデュオやラッパー兼DJのHUN:SOCKとの共演で観客を驚かせる。



 最後の1曲になって歌ウ蟲ケラは4人だけ揃って再び各々の楽器を持つ。



『やっぱり私らって4ピースバンドだからね、このほうが落ち着くよね。じつはね、さっきちょっと泣きそうになったのだけど、泣くのは最後の最後にしようと思う』



 まだ続けて欲しいという声が聴こえる。



 でも1度決めたことを貫くのが彼女のポリシーだ。



『じゃあ最後にこの瞬間の為に作った歌を』



 大きく息を吸って彼女は『絶望スモーキンッ!!!』と夕暮れに沈もうとしている空へ叫ぶ。



 美桜の癖のあるギターリフと律のドラム、梓のベースが最高に気持ち良く鳴り響く。その音に合わせて頭も体も上下左右に激しく揺らす。



 喉が張り裂けそうな歌声に誰もが震えた。



 間奏に入って美桜のギターがさらに研ぎ澄まされる。



 最後のパートに入ってその叫ぶような歌声はキレを増した。



 会場も最高潮に湧く。



 唯は感じられた。これまでやってきたステージで最高の場所に立っていると。



 演奏が終わり間際に梓が美桜に体当たりをした。



 律がいつまでも叩いてやるとばかりに無茶苦茶なドラムを叩く。



 そこへ唯は両手を広げてダイブする。



 会場は唖然とした。



 しかし静寂のなかで4人はゆっくりと立ちあがり、横に並んで手をつないだ。そして満面の笑顔で観衆に御礼をする。



 そのまま立ち去った4人に万感の拍手と歓声。さらにアンコールも続いたが、彼女たちが再びステージのうえに現れる事はなかった。



 こうして歌ウ蟲ケラは事実上、2度目の解散を迎える――



挿絵(By みてみん)

∀・)読了ありがとうございます。はい。解散しました。解散しましたが物語はまだ続きます。この先が気になる人は本作のあらすじをよく読んでください。こんなところで終わるワケがない。次号も御期待を☆☆☆彡

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― 新着の感想 ―
[一言] 夢を叶えて、現実を知り、喧嘩を売って、自分たちの本当を伝える。ロックな感じがします。 アンコールの後に舞台に上がってこないは、彼らなりのけじめなのでしょうね。華崎さんの微笑みがちょっと気にな…
[良い点] 成る程、こういう結末ですか。 少し惜しい気もしますが、 メンバーの気持ちを尊重したいですね。 でもここから物語がどう動くかは まるで予想つかないですね。 大人しく更新待ちます♪
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