第30話「世界の終わり」
歌ウ蟲ケラのユイマールによるペットボトル事件から1週間、ヴィベックスの山里氏によるお詫びの動画から歌ウ蟲ケラは静寂を保っていた。
しかしミオタニアンのユーチューブチャンネルより1本の動画が投稿されて、事は大きな波紋を呼ぶ事になる。
『歌ウ蟲ケラ、ボーカルのユイマールです。このたびは私による身勝手な行動で傷ついたファンの御方、また皆さんに話があって動画を撮っています。私がお客さんに向かってペットボトルを投げてしまったこと……それは私が悪い事です。本当に反省しております。でもそのペットボトルは私に向かって投げられた物で、私はその事に対して今でも強く憤りを感じています。事の発端を知っている人はご存知だと思いますが、投げられたペットボトルは私の顔面を直撃しました』
動画は1時間にもわたるものになった。
ペットボトル事件があった日のこと、その事件までにライブで会場に向かって何回もペットボトルが投げ込まれていた事。その模様を映したビデオも流した。さらに唯は続ける。
『何故こんな事が私達のライブでみられるようになったのか、私達はいくつかの原因をメンバー同士で話し合って考えました。私達の歌う楽曲はそんな行儀いい歌ではありません。それも一理あると思う。でもそれだけでないと私達は考えてみました。テレビで私達をみた事がある人は「ガキのお仕え」をご存知だと思います。あの番組で受けるドッキリがどんどんエスカレートして、私達は体を張る芸能人のようになってしまったと思います。勿論、色んな人たちに私達の音楽を知って貰いたいし、プロモーションの一環だと思って多少の我慢は致しました。でもああした事で世間に一般認識して貰った結果、私達は自分たちのライブでも弄られるようになりました。そうじゃないかと歌ウ蟲ケラのメンバーおよび仲間一同は話し合って結論に至っております』
そして本題に入る。
『私達の活動は所属事務所、ヴィベックスのYグループ取締のY氏の指導の下で展開しておりました。ジストペリドとの共演を果たしてからスグにでもリリースしたかったアルバムも彼との衝突を受け、半年も遅れて販売する事になりました。彼の想い描いている歌ウ蟲ケラと私達が思い描いている歌ウ蟲ケラは全くちがう。その事実に今になって気がつきました』
唯は山里をYと呼称し、Yから酷い名前で呼ばれていた事や「ガキのお仕え」の出演を半ば強制されていた事も話す。しかし動画の最後で彼女が話したことが動画を観ていた視聴者の衝撃をさらった――
『私達「歌ウ蟲ケラ」はヴィベックス退社を表明致します。そして自身の名誉を護る為に弁護士を通してY氏へ訴訟をおこす構えも持っています。その戦いが、その裁判が終わってからはゆっくりしたいと思います。その後はメンバー各々にしたいことはあるのですが、私はもう終わってもいいと思う。だから近いうちにまた発表するけど、歌ウ蟲ケラはここで解散します。皆さん、本当にありがとう』
正装の唯が一礼する。すると画面が変わって歌ウ蟲ケラの4人が画面に出揃う。そして4人で改めて深く一礼をしたところで動画は終わった。
「何だよ? これ?」
山里は職場で動画を観ていた。思わず飲んでいたコーヒーを零す。
「山里さん! 社長が山里さんに今すぐ話があると!」
「え? どういうことだよ? どういうことだ!?」
部屋に入ってきた社員に対して怒鳴って応じる。もうその時には遅かった。
「逆手をとられたわね。山里君」
「………………すいません!!」
「いいのよ? 謝らなくても? でもあの動画であのコが話していたように今朝、彼女達の退職届が届いた。おそらくあなたへの訴訟に関係した書類もじきに届く。そうなれば、貴方を護る為に私たちも動かないといけないのだろうけど、あの動画はちゃんとみた?」
「え? はい。観ましたが……」
「ちゃんとみたか聴いているの」
「はい。僕はみたと思いますが」
「世間はどっちの味方につくと思う?」
「ヴィベックスのほうだと思いますが」
「ふふっ、そうなのね。あなたって噂で聞くより本物のクズね」
「どういうことですか?」
「本日をもって我が社はあなたを解雇します。いままでご苦労様。さようなら」
華崎は何枚かの書類を山里の胸に突きつけるようにして渡して部屋をでる。
山里は「待ってください! 話を! 話を! 僕にも話をさせてください!」と華崎に縋りつこうとするが、彼女の側近に掴まれて突き飛ばされた。
世界は終わった。世界を甘くみたその男の創りあげた世界はいとも簡単に。
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪急展開のおはなしになりました(笑)さて歌ウ蟲ケラは解散をするのでしょうか?次号もお付き合いくださいませ☆☆☆彡




