第27話「リボルバー・ジャンキーズ」
メテオシャワーフェスが終わった数日後に美桜はマネージャーの諸伏とともにある地方のスタジオに向かった。
「テレビでみました! 実際にお会いできて感激です!」
「あのサインを貰えますか?」
「えっ? サイン? そういうのってしていいものなの?」
「それぐらいしてあげて下さい。もうプロのアーティストなのだから」
「あっ、はい。じゃあ。あの、じゃあ私からも1つお願いしていい?」
「はい!」
「えっと、君が海原みなもちゃんだっけ?」
「はい!」
「この収録が終わったら抱かせてくれる?」
「えっ?」
「海原さん、相手にしなくていいからね!」
「は、はい!」
美桜は「放課後ロマネスク☆スター」という地下アイドルユニットへ初の楽曲提供をおこなった。ギャラの20万はメンバーの親が払ってくれるそうだったが、高校生でありながら健気に活動している5人の姿をみて、ノーギャラにて仕事を引き受けることに変更した。
「やばい。推しが増えたかもしれない。あのみなもチャンって女のコ、これからずっと夢にでてくるかも!」
「変な事ばかり言って、何でせっかくの収入を台無しにするのですか!」
「え? だってあんなにピュアなコたちからお金なんて受け取れないよ」
「美桜さん、私達は仮にも音楽で飯を食っていくのですよ? ちょっとでも何か稼げると思ったら、それをビジネスチャンスにしないと逆に私達が一方的に食いものにされるばかりですよ……」
バンの運転をしながら諸伏は力を込めてそう話した。
メテオシャワーフェスから1週間が経ち、歌ウ蟲ケラはスタジオに籠る。彼女たちはファーストアルバムの製作にとりかかった。そのうえで彼女たちは普段のライブでカバー曲の披露が多いことに今更ながらになって気がつく。
「どうかなぁ」
「著作権許可はこれまでとってきたし、問題ないのでは?」
「そうだね。それで仕上がったコレはどうなるの?」
「山里さんに一旦聞いて貰うのよ。GOサインがでたらCDにやいて貰える」
「ついに俺らのCDがレコード屋で並ぶんやなぁ~」
しかし現実は厳しかった。
「駄目だよ。カバー曲ばかりじゃないか」
「そういうスタンスでやってきたものでして……」
「あのな、君ら自分が何だと思っているのよ? ウチの期待の新人アーティストだぞ? それがカバー曲ばかり並べてドヤ顏で恥ずかしくないのか? 3日間でカバー曲は全曲オリジナルで作り直せ。それと2曲目の『歌ウ蟲ケラ』か、この曲ってまんま永口ツヨシさんの『蟲ケラ』じゃないか。これも外せ。じゃそれで」
「山里さん、それはあんまりですよ……」
「あ? 何だ? 僕はいつでもこうだぞ? プロ意識を持てと話しているの! 諸伏、お前はちゃんとサポートに入っているのか?」
「でも、3日間で10曲作り直せって……」
「ムギ、いいよ。また出直します」
「おう、がんばれよ~。蟲ケラ~」
初めて鬼のような山里と面した時であった。
あまりに理不尽な要求だったが、美桜は2日間で10曲の曲を作った。改めて山里に提供するがGOサインがでたのはそのうちたった3曲だった。
「あと1日ある。6曲ぐらいは作れるだろう? がんばれ」
「あのな、俺らはコンピューターでも何でもないぞ? 何やその態度は?」
「あ? お前こそ何だ? 僕はこの会社の専務だぞ? このオカマ野郎が」
「なんやと!」
「アズニャン、落ち着いて! こういうことでチャンスを潰しちゃダメだ!」
「そこの相撲取りはよくわかっているなぁ。そうだ。僕を納得させないと、お前たちのCDは永遠にショップで並ばない。ウチから配信される事もない。あぁ~がんばるしかないなぁ~あっはっは」
最初こそは単に厳しい上司だと思っていた。
しかしその態度の取り方というものは俗にいう厳しさとは明らかに違うもの。
CDジャケットでも4人が死体になったモノを山里はゴリ押しで提案してきた。これはメンバー全員で断固拒否した結果、採用とはならなかった。
このような「衝突」が積み重なった結果、歌ウ蟲ケラの1stアルバムのリリースは予定より半年遅れた。世間はジストペリドの躍進に湧いているが、そのジストペリドと驚愕のコラボレーションを果たした歌ウ蟲ケラの事はどこか昔話のようになりつつあった――
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪歌手になろうフェスV.I.P.の綺羅なみま様の放課後ロマネスク☆スターにご登場いただきました♪♪♪新たな物語が始まってますね。また次号☆☆☆彡
『放課後ロマネスク☆スター』
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