第25話「ベイビースターダストⅢ」
メテオシャワーフェスEARTH HALLはBenzaiの登場、MOON HALLは永口ツヨシの登場に大盛況した。
しかしSUN HALLの最後に登場する綺羅めくるは現れなかった。
その前座にあたるヴィベックスのGGGが当初予定した6曲から8曲に拡大してパフォーマンスをおこなった。
綺羅めくること澤井ももこは運営局へその待遇の不満さを直々に訴え、さらに世間に向けて動画配信で不満を表明していた。
どうしようもない状況でヴィベックス社長の華崎鮎美はジストペリドの再登場を提案した。困惑する姿勢をみせた如月湊と葉月陽翔だったが、彼らの事務所の社長が後押してその出番が決定することに。
「まぁ2曲か3曲で何かお願いしましょうか」
「貴女は歌わないのですか?」
「ん?」
「華崎さん、このフェスはあなたたちの会社から多くのアーティストたちが登場して頑張っている。歌手を暫く退いていた永口さんまでお呼びしてさ、アナタは高みの見物で満足なのですか?」
「それを言うならば、社長、貴方もそうでなくて?」
「いやぁ、私は貴女ほどいま求められてなんかない」
「ふふ、私ね、孤児院にいた頃から好きな言葉があるの」
「ほう、好きな御言葉」
「イチかバチか」
「へぇ、まさに今じゃないですか?」
「私はいま、ゲームをしている。それは自分が主人公になる事じゃなくて主人公を創ること。それは貴方もそうじゃなくて? だからね、ちょっと貴方と話していて思ったわ。いま、その主人公にもしかしてなれるかもしれないコたちの事」
「山里君?」
「ノー、もっとイチかバチかって感じのコ」
華崎は微笑む。そしてそのバンド名を告げた――
「『翼をください』と華崎さんの『Revolution』ですか」
「まぁ、歌えない事はないな。ヒナは歌える?」
「馬鹿にしているのかよ?」
「でも華崎さんの『Revolution』は1番までです。僕たちウロ覚えで知っているぐらいだし、正直歌詞を間違えるかも……」
「世代が違うものね。仕方ないよ」
「まぁ『Revolution』はウチが歌うようにするわ。ええやろ? ユイマールさん?」
「え?」
唯はムーンホールでの出来事を引きずっていた。サンホールに来てからずっと黙っていたのだ。
「千載一遇のチャンスや。俺がこのバンドのリーダーなら、ここに全額ベッドをする。その賭けを共にしれくれないか聞いとんのや」
梓の眼は真剣だ。
「ウジウジしとる場合とちゃうぞ? なぁ?」
唯は逃げる訳にいかなかった。
「わかった。やってみる。今までライブでやってきた曲だものね」
「おっし、決定や。『翼をください』 は君らがメイン、『Rvoiution』はウチのボーカルがメインを担う形でやろう」
「わかりました! 宜しくお願いします!!」
「おい、ミオタ、さっきからスマホばっかりみてどうした?」
「仕事が入った」
「へっ?」
「5人組アイドルのコたちから楽曲依頼!! 20万入るよ!!」
「このタイミングで気にする事!?」
「はっはっは! 幸先えぇなぁ!!」
陽翔は「面白い人たちだなぁ」と呟いた一方で湊は「アイドルの楽曲製作とかしているのかぁ」と。些細な瞬間であったが、全てが始まった瞬間でもあった。
SUN HALLの大トリはジストペリドと歌ウ蟲ケラの共演で幕を閉じた。
ジストペリドはいつもより楽しそうに歌って踊り、それに唯も合わせる。
異種の組み合わせ、それもポップなアイドルと硬派なロック。しかしそのありえないコラボレーションに会場だけでなくテレビでみていた人々も湧いた――
メテオシャワーフェスはその環境の杜撰さの指摘がトレンドにあがった一方でジストペリドと歌ウ蟲ケラのパフォーマンスが最高だったと盛り上がる面もあり、その話題性はウィットに富んでいた。
北海道の山奥。一人の少女の墓前で手を合わせる青年が2人いた。
「中途半端な事をしてしまって申し訳なかったなぁ」
「仕方ないですよ。失敗は誰にでもあります」
「世間は俺達がフェスの発起人だと騒いでやまない」
「もう世間に公表してもよくないですか?」
「いや、次回を完璧な形で開催をさせよう。その時に事実を伝える」
「ふふふ、またやるのですね。今度こそは仲間を説得してみせます」
「無理はするなよ? 若造」
「あなたもそんなオッサンじゃないでしょ?」
「ははは」
2人が墓前を去ろうとした時に「面白い話をしているわね?」と声が。
華崎鮎美であった。2人は微笑んで礼をする。メテオシャワーフェスは3人の発案にはじまり、動きだした企画だった。それが世間に明らかになるのはまだ先のはなしである――
∀・)Xデー2日目3時間SPにお付き合い頂き大変ありがとうございました♪♪♪悠月さんのジストペリドに山崎山さんの綺羅めくるさんとかなり登場させましたが、大丈夫でしたかね(笑)ちょっと感想が聞きたいですね(笑)でも物語はまだまだこれからなんですよ。次号も期待してください☆☆☆彡




