第20話「君にBUMP!」
歌ウ蟲ケラは当初カバーバンドとしての活動を主体とした。
高校時代に励んでいた永口ツヨシやSuperiorityのカバーなどを。あくまでインディーズバンドの端くれとしての活動であったから、唯もその活動内容で悩む事はなかったという。しかし彼女達の才というものはそれだけにとどまらず、1年足らずで中四国各地の対バンで呼ばれるようになった。
1年が過ぎ、ようやく喋るようになってきた美桜がある日提案した。
「あの、オリジナル曲を作ったのだけど? 聴いて貰っていいかな?」
その曲は歌ウ蟲ケラ全員が賞讃するものであった。
そしてバンドとしての方向性が転換を迎える機にもなった。
『殺しのメロディー』
初めてのオリジナル曲だ。もっともバンドの持ち歌としては『歌ウ蟲ケラ』があるにあったが、バンド名との混在が課題になったのでコレを世にだすのはまだ先のはなしになる。
しかしこの歌がまさかのブレイクを果たすことになる。それはバンド始動から3年の年月を経てのことだ。
当時ニカニカ動画という動画配信サービスサイトでアニメ動画と楽曲を合わせ動画投稿するというマッド動画なるものが流行った。そこにまだ無名であったと言っていい歌ウ蟲ケラの『殺しのメロディー』が採用され一大ブームを世に巻き起こした。
「すげぇわ。メッチャ再生されているで」
「でも無断だよね? これって?」
「だけど沢山の人に聞いて貰っているのかぁ」
「そっか。私の作った曲が。嬉しいなぁ」
ライブの終了後にノートパソコンを開いてはニカニカ動画の弾幕を喜々として眺めて楽しんだ。そしてその流れで遂に美桜がまさかのアクションを興す。
『ミヲタン改めミヲタニアンだ! ソロモンよ! 私は還ってきたぁ!!!』
美桜がニカニカ動画の生配信を開始したのだ。かの『殺しのメロディー』から入ってきたファンは勿論、あの事件から彼女を知るリスナーもこれに湧き、遂にいよいよ歌ウ蟲ケラの名が世に広まりだした。
ある日、愛媛でのライブを終えてバンドリーダーを務めるアズニャンこと梓は唯に提案する。
「なぁ。ゆっくり年月かけてもええから全国ツアーをやってみん?」
「え?」
「もうここまで俺らもやってきた。来月には東京でオファーもある。今がチャンスやないか?」
唯はここにきて悩んだ。
軽い気持ちでならと始めたものがまさかここまでのものになるなんて思ってもなかったのだ――
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪ニカニカ動画ってアレですよ(笑)アレですからね(笑)また次号☆☆☆彡




