第13話「長い間」
彼女達が再会したのは雨の日の朝の事だった。
唯は施設玄関の掃除をしていた。
誰かの視線を感じる。顔をあげる。そこに懐かしい顏があった。
「律?」
「唯?」
「何でここに?」
「富沢さんっていう探偵さんに頼んで調べて貰ったよ」
「そう、そうなの。ははは。久しぶりね。調子どう?」
「求職中で。唯の職場は募集してないの?」
「今は足りているかな。何よ? 転々ブルースでもしていたの?」
「いや、初めての転職活動でね。そのまえにどうしても貴女に会いたくて」
「そう、良かったね。会えて」
「あの、ここに電話番号を書いている。よかったら電話してくれないかな」
「…………考えておくよ」
唯は律からメモの切れ端を受け取る。
律はそのままパシャパシャ音をたてて去っていった。
「子供みてぇな長靴だな」
その言葉は律の姿が見えなくなって吐いた。
それからというもの、唯は律に電話をかけることをしなかった。高校生だったとき、あれほど電話をかけたのにでることをしなかった人間だ。今さらになって何様のつもりなのだろう? 唯のそれは次第に苛立ちに変わってゆく――
「何で彼女に私の事を教えたの!?」
『そりゃ依頼があったからです……』
「いい迷惑よ! 毎週私の働く職場のまえに神出鬼没で現れて!!」
『お話をされたらいいのではないですか? 友人だったのでしょ?』
「高校時代の話! 昔話! 私は彼女に裏切られたの!!」
『でもあなたはお父さんを裏切らなかった』
「!?」
『彼女が私に調査を依頼した時、その瞳はまっすぐで誠実だった。そう、あの時、お父さんがどこにいるのか調べて欲しいと私に依頼してきた貴女のようにね』
「……わかった。一度は話す。それでキッパリ終わりにする」
『私はそれでいいと思いますよ? ではご友人とひとときを』
何の偶然か自身の調査に父の調査を依頼した探偵が動いていた。
運命と言えばそれまでかもしれない。
だけど心が弾まない。重たいのだ。
それでも彼女から逃げちゃいけないと思うようになった。そして――
「今度の土曜日の夜ならいいよ」
「本当!! 良かった!! ごめんね!! 電話に出なくて!!」
毎週1度職場まえに神出鬼没で現れる律へ遂に約束を持つ事にした。
彼女は唯の両手を両手にとり、涙を浮かべた。
彼女の謝罪の一言が妙に心の底に残る――
∀・;)すいません!ちょっと遅刻しました!でも読了ありがとうございます!
∀・)再開した唯と律!これからどうなる!?次号!?
∀・)ちなみにサブタイのあの名曲は母が大好きな曲だったりします(笑)




