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なろうラジオ大賞4

最後の晩餐で缶コーヒーだけが無駄に品ぞろえ豊富

掲載日:2022/12/11

 俺は死刑囚だ。

 今朝がた死刑執行を言い渡された。


 てゆーかこれから執行される。


 まだ猶予があって、遺書を書いたり、好きなものを食べたりできるらしい。


 テーブルに置いてあるのはミカンとバナナとスナック菓子。

 そして缶コーヒーが山のように積まれている。


 しかも全て種類が違うのだ。


「えっと……なにこれ?」

「缶コーヒーだ」

「いや……そりゃ、見れば分かるよ。

 なんでこんなに種類がいっぱいあるの?」

「そういう決まりだからだ」

「はぁ……?」


 どういう決まりなんだよ。

 責任者は何を考えてんだ?


 まぁ……これを自由に飲んでもいいって言うんなら、好きにさせてもらおうか。


 俺は用意された缶コーヒーの中から一本を選んで、口を開ける。

 地方にしかない限定品。

 その名も宇治抹茶風味ミルクコーヒー。

 コーヒーなのか、抹茶なのか。


 一口含むと、濃厚なミルクの味わいと抹茶の風味が広がって行く。

 その中でかすかに感じるコーヒーの苦み。

 いい味だ。


 次に選んだのはゲロゲロブラックマスター。

 限界まで高められたカフェイン。

 化学物質でも入っているかのような刺激的かつ衝撃的な香り。

 頭が冴えるぞ。


 次はウルトラグレートトレンディブレンド。

 横文字を並べておけと言わんばかりのネーミング。

 味はいたって普通の缶コーヒー。

 特筆すべきことは特にない。


 他にもまだ沢山の缶コーヒーがある。

 せっかくだから遺書代わりにレビューを書き残すことにした。

 残りも全て――


「時間だ、執行する」

「まっ、待ってくれ!」


 俺は刑務官たちに引きずられて絞首台へ。

 頭に袋をかぶせられ、首に縄をくくられる。


 せっかくだから最後まで味あわせろ!

 くそったれがあああああああ!


「執行!」


 足元の床が抜け、俺の身体は勢いよく落下していく。

 ブツリと電源を切ったかのように意識が途絶えた。





















「あの、一つ聞いていいですか?

 どうして缶コーヒーなんです?」

「それはな……」


 刑務官は絞首台に開いた穴を見下ろしながら言う。


「こいつがよく缶コーヒーを飲みたいと言っていたからだ」

「え? いいんですか?」

「ダメに決まってる。だが……」


 刑務官は缶コーヒーを手に取り、口を開ける。


「死人に口なし、っていうだろ」


 コーヒーを一口含む。


 外の世界ではありふれたこの飲み物。

 塀の中の彼らにとって決して味わえない未知の味。


 そう思うと、ただの缶コーヒーですらとても味わい深く感じる。

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゲロゲロブラックマスターが飲みたいです! でも、ブラックは胃に悪そうなので、(私は胃腸が弱い)ゲロゲロブラックマスターのミルク入りが欲しいです。ブラックじゃないですね。笑 コーヒーのネーミン…
[良い点] 最期に飲めるとなると最後まで味わいたくなりますよね。 しかもレビューしようとするなんて( ;∀;) 普通に食べたり飲んだりできることの大切さを改めて感じました! 素敵なお話をありがとうござ…
2022/12/12 13:18 退会済み
管理
[良い点] これから死刑執行で二度と飲めないとなりますと、目の前でお預けという状況は悔いが残るでしょうね。 [一言] 拘置所にいる死刑囚が市販の飲食物を食べるとしたら、親族や支援者からの差し入れという…
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