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終幕 新入社員の始末書

 ごめんなさい。

 今回のことは君に花まつりの内容ををちゃんと説明をしなかった僕の責任です。

 泣きながら「すみません!」とひたすら頭を下げる君を見てとても心が痛みました。

 これから僕の昔話を書きます。


 もう40年ぐらい前の事です。僕がまだ君と同じ旅行会社の新人だった頃、高校の修学旅行の手配を任されました。


 フェリーで海路を移動中、引率の先生に聞かれたんです。

「そろそろお昼の時間ですけど、生徒たちの弁当はどこにあります?」


 それを聞いて僕は血の気が引くのを感じました。生徒120人分の弁当の手配を丸々忘れていたのです。慌ててフェリーの食堂に駆け込みました。

食堂では120人分の食事は用意できないと断られました。そんな急に言われても困ると。当然です。


 それでも泣きそうな若いころの僕に同情したのか、食堂のおばさんたちが相談を始めました。


「ご飯とカレー粉、あとは余っている野菜なら分けてあげられるよ」


 今度は生徒たちが集まっている部屋に戻り全員の前で土下座です。


「ごめんなさい。君たちのお弁当を用意するのを忘れました。今から厨房でカレーを作ります。どうか手伝ってください」


 成長期の高校生たちです。お腹が空いたのか苛立ちを隠せない子もいましたが、しぶしぶ厨房に集まってくれました。

手分けして野菜を切り、ご飯を盛り、残った時間で全員が掻っ込むようにカレーを食べました。

 

 修学旅行が終わった後もしばらくは夜も眠れないぐらい落ち込み悩みました。生徒たちのたった一度の修学旅行に汚点をつけてしまった。こんな自分が旅行会社の社員をのうのうと続けていて良いのかと。


 しかし10年後、大人になったその時の生徒に偶然会ったのです。


「あの時はびっくりしましたよ。いきなり大人が生徒の俺らに土下座して一緒にカレーを作ってくださいって頼み込んできたんですから。仲間たちの文句を言いながらカレーを作ったのも良い思い出になってます。正直、観光名所のことなんか何にも覚えていないです。同級会でも修学旅行の思い出はカレーを作らされた話ばっかりです。最高の修学旅行でした」


 責任感の強いあなたは、今とても落ち込んでいると思います。でもどんな失敗も謝ればいつかはきっと許してもらえます。助けてくださいと言えれば必ず誰かが手を差し伸べてくれます。数年たてば全て笑い話になります。


 大丈夫。あなたはこの仕事で、絶対まわりのみんなを幸せにすることが出来ます。

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