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第二幕  問題児の反省文

 ボクは本当にダメな子なんです。先生には、お前みたいな馬鹿は見たことが無いと言われました。

 お父さんからはいつも、憐みのこもったあきれた目で見られます。

 お母さんだけはそんなボクを励ましてくれます。

 勉強もお母さんが教えてくれます。ボクのお母さんは昔は教師だったんです。 だからお母さんは勉強を教えるのがとっても上手いんです。

 小学校の先生に聞いても分からなかったことも、お母さんに聞くと良くわかるんです。けれど最近はお母さんも教えてくれなくなりました。

 だから最近は図書館の本を読んで勉強しています。物理とか化学の本が面白いです。

「お前が賢くなったから、私に教えられることはもうないの」って言ってますが……もしかしたらお母さんもボクにあきれちゃったかもしれません。ボクがおかしな質問ばかりしているから。ダメなんです。ボクは気になることがあると、人にそれを聞いてしまうのを止められないんです。

 ボクは小学校を3か月で退学になりました。そんな子供はボク以外に聞いたことがありません。

「どうして、1+1=2になるの?」

「風はどこから吹いてくるの?」

 授業にならないって怒られてばかりいました。先生を困らせるつもりは無かったんです。ただどうしても知りたかっただけで。

 そんな大失敗をしたのに、ボクはちっとも懲りなかったんです。火がどうやって燃えるか不思議だったから火をつけてみました。納屋が全焼してしまいました。

 ミミズをすりつぶした液体を友人に飲ませようとしたこともあります。鳥と同じものを食べれば、鳥のように空を飛べるようになるんじゃないかと考えて。

「お友達になんて酷いことをするの!」

 いつもボクに優しいお母さんも流石に怒りました。

 本当はボクみたいに悪い子は死んだ方がいいんです。でも死ねないんです。

 ボクは川に落ちたことがあります。ベッドの上で目を覚ますとお母さんがイエス様にお祈りをしていました。ボクが馬鹿なことばかりしているから、嘆いているんだと思ったんです。でも違いました。

「ありがとうございます。あの子の命を救ってくださって。あの子に何かあったら私も生きてはいられません」

 お母さんはボクが生きててくれるのを喜んでくれました。ボクが自分の事を信じられないときでもお母さんだけはボクを信じてくれました。

「お前は素晴らしい人間なのよ」

 だからボクは生きなきゃいけないんです。


 でもやっぱりボクは失敗ばかりしています。

 明日からボクは働きに出ます。汽車で新聞の売り子をするんです。小学校すら卒業してない12歳のボクが大人に混じって仕事が出来るかわかりません。大失敗をするかもしれません。怖いです。でもボクはやってみたいんです。

 ボクの名前はトーマス・エジソンです。



 エジソン……。発明王の……彼の天才ぶりを教師が理解せず小学校を退学なったって昔聞いたことは会ったけど。ミミズを友達に飲ませようとした!納屋を全焼させた!問題児どころの話じゃ無いんじゃ……


エジソンが小学校を退学になったって伝記で知った時、なんて理解のない学校だろうと思ったけど。

 これは現代の日本でも理解されるのは難しいかもしれない。

 辛かっただろうなあ。常に先生や父親にまで怒られて、見放されて。理解者が母親しかいない世界でどれだけ泣いたんだろう。




 ふたたび声が聞こえた来た。年老いた女性の声だった。しかし、活力に満ちハリがある声は衰えを感じさせなかった。

 以前、英語のリスニングの練習のために海外の著名人のスピーチを聞いていたことがある。

 彼女の声はそれを彷彿させた。研究者、経営者、政治家。戦うには困難な女性の身で常に第一線にいた闘士の声だ。


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