青い百合の花言葉
そこで目が覚めた。
また同じ夢を見ていたみたいだった。
君が本当に私の前にいなくなったあの瞬間の夢
走り出して学校を出た君がトラックに当たって死ぬのを窓から見たあの日までの数日間の長い夢。
もう何年見ているんだろう。
誰もいない部屋に漂う匂いと空気は
いつも通りの朝のような少し違うようなそんな感じ。
水滴音が滴るキッチンに置き去りにしてあるパンを取り出す、お気に入りだったパン屋さんのパン。
嫌な日は朝ごはんを贅沢に。
皮肉にも私はあの頃の定理をまだつかっているのだ、自分が定理をこわしたのに。
不完全な定理は不完全な幸せを私に与えつづける。これは、永遠の刑罰なのだ。
少し遠出して花を買いに行った。
私はあの後から同じ花を何度もあの子へ送っていた。
君の開かない瞳に投げ込むのも生暖かい血に投げ込んだのも同じ花。
本人はみないけれど、語りかけるような手紙を持って。
「皮肉な話をきいておくれ。
君を好きになったこと、私の容姿が良かったこと、君の好きな人の好きな人は私だったこと、あの後酷く病んだ君の好きな人を偽りの慈愛に満ちた笑顔で慰めたこと、そのあと結婚したこと。それでも私の一番は君なんだよ、凄いでしょ。彼が、君の墓に行かない理由も教えて欲しい?そっちで話そうか。」
いつもは万年筆で書いた疑問符で終わる手紙。
それは、線香の火で、もやして灰になるものだった。
灰の行先は君の墓石を洗うためのもの。
私の言葉に絡まれてるみたいで、
喜ぶ私を幸せにするだけ。
それに反して、あの子は泡が目に入る行事だった。多分きっとそう。
私色に染まって綺麗になる君が好きだ。
好きで好きでたまらないさ。
今年も綺麗になったあの子の墓石を前にして、
青い百合を送る。
君が着けた花言葉、悲嘆。
女性は墓石を立ち去ると
勝手に自生したアカネグサをつんでいった。