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10から日記  作者: さんちゃん
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第8話 「村長宅」

第1章 「初めてのおつかい」

「さぁ、どうぞ。入りなされ。」


「お邪魔します。」


僕はアストレア村村長の後に続き家へと入る。家に入るとマジストの木の暖かな匂いに自然と落ち着かされた。村長ともなると立派な家を建てて華やかな内装というのを思い浮かべる人も多いかも知れないが、アストレア村の村長は違った。家の外見はここまで歩いてきた周りの家とほぼ変わらず、内装も一言で言えば素朴だ。特別な感じもせず、目に入ってくるのはテーブルや暖炉位であった。


「どうりで良い関係なわけだ……。」


村の民に歩み寄る姿は、停留所の様子とこの家を見てわかった。


「どうかされましたか?ささ、どうぞこちらへ。」


台所から出てきた村長はテーブルにお茶を運び、椅子に腰をかけた。僕はお言葉に甘え、テーブルの椅子に同じように腰をかけた。椅子に座るとテーブルの上には先ほど運んだお茶が差し出される。


「ひとまず、お茶でも飲んで落ち着くとしましょうかね。」


「ありがとうございます。頂きます。」


そう言いながら差し出されたお茶を口へと運ぶ。村長も同じように一口すするとため息を漏らした。


「いやはや、ミサラちゃんが帰ってこないと聞いたときはどうなることかと心配しましたが、剣士のあなたがいてくださって助かりました。村の者としてお礼を言わせていただきたい。ありがとございました。」


そう言って頭を下げた村長の風格と所作は、村の代表を感じさせるものだった。村を治めるものとしてのけじめとも取れるものだったとも思う。村の長として、村の住人として、又あの家族に関わる者として、一体どれがあてはまるのかわからない。全てだったのかもしれない。頭を下げ、20秒程の沈黙が続いたと思う。あっけにとられた僕は、ふと我に返り、頭を上げて貰うように頼む。


「村長、頭を上げて下さい。冒険者として当然のことをしたまでです。困った時は助け合うのが人間ってものでしょう。」


「人間ですか…………。」


「あ、いえ。特に深い意味は無く……。駆け出しの冒険者が偉そうにすいません…………。」


「いやぁ、良いことをいいなさるなぁと思いまして。お互い助け合わないと人は生きては行けませんからのぉ。だから商人、大工、冒険者などそれぞれに精通した人々がいるのですが、最近の基準はお金になってしまい、本質の足りないものの支え助け合うと言うことが薄れていると感じていました。この村にあなたみたいな方が来てくださって良かった。話はヤマとギルドの方から聞いてますぞ。」


僕はすすっていたお茶でむせる。ヤマさんと村長が話しているのは見ていたので予想は出来ていたが、まさかギルドの方からもこんなに早く手が回っているとは。


「えぇと……ギルドの方からはなんと…………」


「常駐冒険者の依頼を希望する剣士の方が見つかり、今、ヤマさんとともに用事を済ませながらそちらに向かっています!とステム村のギルド長さんから連絡を頂いて。」


と、テーブルの上に置かれた鏡の方を向く。対話鏡がおかれていた。ミサラが持っていたランプのように誰でも使えるように作られた、遠方との会話を可能にする鏡で魔道器と呼ばれる部類のものだ。しかし、どうしたものか。僕は希望もしていなければやるとも言っていない。あのギルド長が言い始めただけだ。いまもヤマさんとミサラを探してきて、村長とヤマさんが話しているのが見えた後に、村長から用があると言われたので、断ろうと思ってついてきただけだった。断りにくい状況を打破しようと考えていると、村長が口を開く。


「あなたはこの地方の方ではないようじゃのう。服装も剣の特徴もこの周辺では見られない。それにその首のチョーカー…………、種族も人ではないようじゃ。この辺の者ではないと直ぐにわかりました。」


僕は勢いよく椅子から立ち上がり、後ろに飛び身構える。この村長は何者だ?今まで知られないように過ごしてきたものを一度あっただけで。地元の方でも珍しい技術に素材だから広く知られていないはずだった。どうする、そんな言葉が頭のなかを飛び交った。


「なぜ、お前がそんなことを…………」


「ま、ま、落ち着きなされ。怖がらせるつもりはなかったんじゃよ。周りにも広めるつもりもない。安心なされ。昔、あなたのような者と関わりがあったのでな。まぁ、昔の話じゃ。」


剣に伸ばした手と、こわばらせた体をとき、再びテーブルへと向い、腰をかけ村長と対面する。


「その様子だとまだ、落ち着けていないようだ。どうでしょう、この村では気がつくのは私くらいなものだ。気にすることなく過ごせますぞ。長旅の疲れをとってからでも…………」


「はぁ、いいでしょう。ここは、あなたとギルド長の手の上で転がされましょう。」


「話が早くて助かりますのぉ。あなたに危害はないし、いい話じゃから乗っていただけて嬉しく思います。」


「いい話か…………」


僕は不本意だか、誠に遺憾だが承諾する。この村までの森にいたあの魔物も気になる。それ以上に村長について見る必要がある。テーブルに肘をつき、にこやかに微笑み村長は言う。


「さて、あなたを建家に案内しましょうかね」


面倒な日々が始まりそうな予感がした。

新年初投稿です。年末と新年と仕事とプライベートは忙しくて中々投稿できず間が空きましたが今年も頑張っていきたいと思います!応援してくださると嬉しいです。ではまた~

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