もみの木の絵
みかと私は、駅前の美術館へ向かう。
みかは遠くを眺めながら言った。
『ねぇ。人って怖いし残酷だけど、人を喜ばせるのも人だと思う。でもね、人を苦しめたりするものはいくらでも世界で溢れてるの。でも、苦しませるのって人だけじゃないんだよね。』
言っている意味がわからなかった。
『どういう意味?』
みかはうつむいた。
『人じゃなくても人を苦しめるものは山ほどあるってこと。だからつかさもさ、今は苦しいかもだけどさ、人なら終わりが来るから。』
は?
どういう意味だよ。うちのいじめで感じた辛さや痛みは大したことないってことか?
『いじめられてんのしってんでしょ?
それって嫌味?それとも同情?』
みかはびっくりしていた。
『そういう意味じゃないって。だから頑張ってって意味で』
偽善者だ。そう思った。その言葉がピタリと合う気がした。
『もういいや。美術館。、、、んじゃね。』
そう言って私はみかと別れた。
みかはぼーとしていた。
次の日、学校に行くと、みかは私に話しかけてこなかった。っというよりみんなに話しかけていない様子だった。
なぜだろう。不思議なほど、クラスのこといない。
話しかけない。
人が変わったようだった。
私のせいなのか?私がひどいこと言ったからなのか?でもみかはぼーとしていたわけではない。みかはせっせとなにかをスケッチブックに顔を近づけガリガリと鉛筆を削らせ描いていた。
なにを描いているのだろう。
そんなの聞く勇気もない。
クラスから出るとあの女が私のところに寄ってきた。そういえばこの女の名前も知らない。興味がないからか、それとも誰にも聞けないからか。多分後者だ。
『あんた、名前なに?』
気づいたら喧嘩口調だった。
そして女は名乗った。
『前田敦子だけどなんかある?』
めんどくさい返答だと思ったが無視してスタスタとトイレに向かった。
すると女子トイレに全て便器の中な私の絵が入っていた。
中には尿がしてあるものもある。
なんで?っというかどーやって私の絵を手に入れたんだ?
私は部活にも入っていない。いつも持ち歩いているスケッチブックや家に今まで描いた絵はあるが。
あ。ー
時間が止まった気がした。もみの木の絵が、トイレに入っていた。
確かこれは。ー
この絵がすごく気に入ったと言ったので、みかにあげた絵だった。
唯一人にあげた絵だった。
みかへの憎しみ、怒りが徐々にこみ上げた。
なんで、、。
私は絵を拾い洗った。これじゃあ私がやったと思わらる。
私は破って丸めて捨てた。
でももみの木の絵だけは残した。
みかにあることを聞くために。