魔女の夜に想い出したよ、たった一つ大切なものを。
「起きて、起きるのよ・・・円!!!」
<<<<パアッッッッツツツツ>>>>>っと白い光。
瞼が重くてしっかり開かない。
白い光に黒い斑点。
芸術的なコントラスト、、、違う、目が見えないだけ。
「まどか、まどか・・・」と繰り返す女の子の声。
清らかで伸びやかな声。
だけど切羽詰まった調子だ。
何かが大変なのかな?
やっと目が慣れてきた。
あたりは薄暗い。
夜空に浮かんだ水球のような世界。
細かな砂のような星たち。
そのとき、、、
<<<ひゅゅゅゅうううゆゆーーーーーー>>
ん?と私。
<<<るるるるるりゅりゅりゅりゅーーーーーー>>>
奇妙な音。
そして少し離れてところに巨大な「影」が仁王立ちしていた!!!
威圧的なほどの巨大さ。
そいつは私たちをにらみつけている。
「やばっ」と女の子が構えるけど、もう遅い。
ミイツケタ、と言わんばかりにそいつはノソノソ近づいてくる。
動作はのろいけど、巨漢なのですぐに私たちの目前までやってきた。
近くで見るとさらにでかい。
「円、シールド張るから」
早口で女の子が言い、刹那、「影」が強靭で闇のような腕を振り下ろす。
[[[[[ dddddっどおおお!!!!!!! ]]]]]
[[[[ どどどどどどどおどどおどおおおdddd!!!!!!! ]]]]
「相手の『魔力』が強すぎるわ!」と女の子と叫んで踏ん張る。
しかし言い難い圧力みたいなものが私たちを襲う。
ゴホっと呼吸を詰まらせる私。
そして身体がなくなる感覚。
落ちる・・・
廻る星・・・
ひっくり返る世界・・・
女の子から引き離される。
((いやだ・・・))
((もう二度と離れたくないよ・・・))
((悲しい運命を繰り返したくない・・・))
しかし私の身体は猛スピードで降下していく。
「まd・・・」と女の子は私同様に落下しながら言いかけ、そして叫ぶ。
「लोके जरारुग्भयमृत्युनाशं दातारमीशं विविधौषधीनाम् !!!!!!!!!!!!!」
その瞬間、また光が私の視界いっぱいに満たされた。
<<パアッッッ>>っと!
ふっ^^^ふっ^^^と、私の身体は無重力状態にいるみたいになった。
そして固い地面に、ゆっくりのスピードで背中から着地した。
思わずため息。
はーーーっ。
助かった。
あの子が助けてくれたんだ。
おかげでケガはないけど、腰が抜けて動けない。
「大丈夫!!??」と取り乱しながら、女の子が着地。
(見事に足から着地した。かっこいい)
そして駆け寄ってくる。
仰向けに横たわる私を、のしかかるようにして観察する。
「意識ははっきりしてる?めまいとか頭痛は??」と必死に問いかける。
しかし私はその子のぱっちりした目と視線が合って、思わず顔をそむけてしまう。
え、この子、なんだろう。
初対面なはずなのに、不思議な魅力を感じる。
私なんかのために目にうるうるうるうる涙を溜めてくれている。
マンガのヒロインみたいな純粋さ。
というか顔近すぎない?!
落下の衝撃のせいでふんふんと荒い鼻息が、この子にばれてしまいそうで恥ずい。
「円、いけそう?」と訊きながら、肩を貸して私を起こしてくれる。
女の子の腰まである髪がさらさら私をなでる。
くすぐったい。
でも相変わらず状況が呑み込めない。
・・・そもそも私は誰だっけ?
「まさか、また『リセット』?」
「リセットって?私そんなのしてないよ」
「その答えを聞く限り、また『リセット』ね・・・」と女の子は唇をかむ。
「もう347回目よ・・・」と嘆いている。
せっかくのふわふわピンクの唇なのに、痛そうな歯形がついて歪む。
軽く前髪がかかってる眉間に、辛そうな皺が寄る。
ああ、こんなにもかわいいのに・・・
どうしてこんなにも苦しそうなんだろう・・・
ぎゅっと、確かに、私はいつの間にか女の子を抱きしめていた。
女の子は一度だけ大きく鼻をすすり、
大きくて柔らかい胸が私の胸に押し付けられる。
だけど女の子の心臓の早鐘は収まっていない。
・・・この子が苦しそうにしているのを見ているだけで、胸がぎりぎりする・・・
私は決心した。
「安心して、あなたは私が守るもの。」と呪文のように言い聞かせてあげる。
女の子は私の肩に顎を載せて、うんと応えて抱きしめ返してくれた。
多少は落ち着いてくれたはずだ。
[[[[ ・・・・・・・・・っっっっzzzzずうううんんんんんnnnnnnn ]]]]
そんな轟音とともに「影」が追い付いてきた。
私は女の子をその場に座らせ、頬に、
(かなり照れるし、この子以外には絶対にそんなのしないんだけど、、、)
頬にちょん、とキスをした。
女の子の反応が心配だったけど、笑ってくれた。
「気をつけてね」と言ってくれた。
そして私は立ち上がり、「影」に対峙した。
私は自分のことすらわからない。
記憶がない。
ここがどこかもわからない。
けれどこの子をいとしく思う気持ちだけは本当だ。
それだけわかれば十分だ。
十分戦える。
全身が幸せなビリビリ感に満たされる。
そうか、これが『『 魔法 』』なんだ。
そして「影」が一瞬怯む。
私は目いっぱい跳び上がり、心ではあの子の頬の柔らかさを想う。
みなぎる『魔力』だけを頼りに、立ち向かう・・・・・・・・・
角川の児童向けレーベルや、「恋空」前後のケータイ小説は、しかるべき論者によって、改めて評価されるべきだと思います。角川については大塚英志が丁寧に述べていましたし、ケータイ小説もおそらく飯田一史(?誤りだったらスマソ)が研究していました。良くも悪くも生真面目な芥川賞のアンチテーゼとして、やはりこれらが評価されて欲しいものです。。。