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93話 イベント進行の予感?


 釣りの途中で出会ったプレイヤーたちに逃げてきた理由を尋ねると、彼らは快く情報を教えてくれた。まあ、自分たちの恐怖体験を誰でもいいから語りたいのだろうが。


「川の上流で鉱石が採れるって聞いたから、採掘に行ったんだ。そんなに強いモンスターも出ないって聞いたからさ……」

「最初は確かに第2エリアに出るような雑魚モンスターとしかエンカウントしなかったんだけどな~」

「採掘してたら、いきなりデカイ熊の奇襲を受けてさ~」

「3メートルは超えてたよな」

「うん。しかも目が血走っててメチャクチャ怖かった」

「変な黒い霧みたいなの出してたし」

「そいつの最初の一発でシーフがやられちゃって、あとはもう必死に逃げることしかできなかったってわけ」


 第2エリアの敵を雑魚と言えるくらい強いパーティが逃げるしかできないって、その巨熊はどんだけ強いんだよ。シーフは普通は軽装だが、このパーティのメンバーであれば、それなりの装備はしていただろうし。それを奇襲とは言え、一撃で死に戻りさせるような攻撃力があるってことだろ? 出現エリアがおかしいんじゃないか?


 ただ、彼らが闇雲に逃げ続けていた理由は分かった。普段は探知や警戒を請け負っているシーフが死に戻ってしまったせいで、パーティの索敵能力が極端に下がっていたんだろう。そのため、熊が追ってきているかどうか判断できず、とにかく走り続けるしかなかったのだ。


「今でも真後ろでクマの牙が咬み合わされた時のガチン! ていう音が忘れられん」

「いやー、まじで怖かった~」


 それにしても、黒い霧を出してたって言ったよな? それって、俺たちが遭遇したラビットと同じ現象か?


「実は俺たちも、黒い靄を纏った変なラビットに遭遇したんだよ。倒したらドロップが無くて、イベントポイントがもらえたんだが……」

「私たちが遭遇したクマも、もしかしてイベントに関係ある可能性があるってこと?」

「でも、だとすると、レベル帯を無視して凶悪なモンスターが出現した理由もわかるな」

「うーん。つまり、今回のイベントを攻略するためには、あれを倒さなきゃいけないってことか?」

「レイドでも組まなきゃ無理じゃないか?」

「だが、普通に遭遇するってことは、レイドモンスターじゃないってことだろ?」

「そうだな……。このサーバーにいるプレイヤーの選抜チームでも組めば、可能性はあるんじゃないか?」


 どうやら彼らに今回の情報を独り占めしようという気はないらしい。他のプレイヤーに伝えて、協力を仰ぐにはどうすれば良いかと相談し始めた。


「どうしても、何度か戦って行動パターンを調べる必要があるだろうな」

「でも、最初のほうで挑むプレイヤーは絶対に死に戻るよな? 下手したら全滅だ」

「となると、協力してくれるプレイヤーは少ないかもな……」


 このイベント中に死ぬと、広場のギルド前に死に戻る。イベント中は通常のペナルティがない代わりに、イベントポイントが1~3割失われるらしい。つまり、そのデカイ熊に情報収集のために戦いを挑む役目のプレイヤーは、イベントポイントを失う危険性が高いということだ。協力してくれる人は少ないだろうな。


 フレンドも知り合いも全然いない俺には協力できないが、応援はしてるぞ! 1度くらい死に戻り覚悟でクマに挑んでもいい。問題は、俺たちじゃ弱すぎて、全く情報収集にならなそうだってことだな。


 そう思ってたんだけどね。


「そうだ! 白銀さんに協力してもらえばいいのよ!」


 突然、そのパーティの紅一点、魔術師風の格好をした女性がそう叫んだ。というか、俺の正体バレてたんだな。


「え? 白銀さんってあの? え? この人が白銀さんなの?」

「そうよ! そうですよね?」

「まあ、そうかもしれないですね」

「ほら! 前に見たことあるし! 何よりもあの子!」

「うん? あのクマのモンスがどうかしたのか?」

「知らないの? 白銀さんのモンスのクママちゃんよ! クマ好きプレイヤーの間では超有名なんだから!」


 なんと、クママの名前まで知られていた。確かにクマ好きだったらクママを見過ごすことはできないだろうし、有名になるのは仕方ないかもしれないな。


「クママちゃんの可愛さに撃沈されて、リトルベアとハニービーを連れているテイマーがすっごい増えたってことでも有名よ?」


 え? 何それ? 知らないんだけど? でも、アミミンさんのページでハニーベアの情報は掲載されてたし、他のテイマーが欲しくなってもおかしくはないな。何せ動くテディベアだからな。


「それにあの子!」

「あの小さい子供も、モンスターなのか?」

「白銀さんと言えばノーム! ノームと言えば白銀さんでしょ!」

「いや、知らねーよ」

「俺も知らない」


 どうやら男性陣はそれほど俺のことに詳しいわけじゃなさそうだ。彼らが知っている情報は、変なプレイをする白銀と呼ばれるテイマーがいる。そんな程度らしい。


 良かった。そうだよな、俺なんかがそこまで有名なわけじゃないよな? 多分、情報通と、一部の可愛い物好きのプレイヤーに、ちょっと知られてるくらいだよな?


「あー、分かった。とりあえずその人が白銀さんだっていうのは分かった」

「あんたたちも分かった?」

「お、おう」

「分かったよ」

「分かったならいいのよ!」


 なんでこの女性が胸張って偉そうなんだ? いや、いいんだけどさ。


「で、白銀さんに手伝ってもらうっていうのはどういうことだ?」


 あ、それは俺も聞きたい。


「白銀さんの従魔は、色々なプレイヤーに人気があるの。私みたいなクママちゃんファンだけじゃなくて、他の子にもたくさんファンがいるわけ」


 マジ? いや、妙に視線を感じたり、手を振ってくるプレイヤーがいるな~とは思ってたんだが、そこまでなのか?


 でもそのうちハニーベアもノームも、テイムするプレイヤーが出てくるだろうし、騒がれるのなんて今だけだろう。調子に乗って有名プレイヤーみたいに振る舞ったら恥をかくだけだ。期間限定で有名人気分を味わえてるくらいに思っておこう。


「このサーバーにも、結構な数のファンがいるわ。広場で、一緒のサーバーでラッキーだったねーって話をしたもの」

「なるほど」

「そんなプレイヤーなら、白銀さんに声をかけてもらえば協力してもらえるかも。それに、そのプレイヤーたちが声をかければ、もっとたくさんの協力を得られるかもしれないし!」


 そう上手く行くかね? まあ、イベントの進行に関係がありそうだし、できる限りの協力はするけどさ。


「どこまで力になれるか分からんが、声かけくらいなら協力するよ」

「やった! じゃあさっそく村に戻りましょう!」

「そうだな。あいつも迎えに行ってやらないといけないし」

「いや、ちょっと待ってくれ」


 俺は魚も手に入ったし、帰るのは構わないけど、リッケと一緒に来てるからな。リッケを放っては帰れん。


 だが、そのリッケは神妙な顔で何か考え込んでいた。そしてすぐに顔を上げて、自分から帰ろうと言い出す。


「おいらも、村に戻ってそのモンスターの話を皆に知らせなきゃ」

「そうか。じゃあ一緒に戻ろう」

「うん!」


 村に帰りつく頃には、日が傾きかけていた。入り口でリッケと握手をして別れる。


「色々と参考になったよ」

「いいんだよ。釣り仲間だからな!」


 初心者でも、釣り人認定してくれたらしい。


「じゃあ、またな!」


 リッケは村の入り口まで戻ってくると、笑顔で手を振ってそのまま去っていった。夕暮れの道を歩く、釣り竿を担いだ麦わら帽子の少年の影。妙に絵になるっていうか、郷愁が感じられる絵面だね。ずっと見ていられそうだ。


「私たちは、広場に行きましょう。プレイヤーが一番多いし」

「そうだな」


体調不良と改稿作業等が重なり、話のストックが無くなってしまいました。

体調がまだ芳しくなく、次回の更新が出来そうにありません。

次回更新は28日を予定しています。

もし、伸びてしまいそうな場合は、活動報告にてお伝えさせていただきますので……。

申し訳ございません。

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