892話 砂漠の先の大陸
名探偵シャーロットの大活躍によって船長殺人事件が早期終了した結果、プレイヤーたちが暇になった。明日の寄港地への到着まで頑張るつもりだったからね。
「ヤヤー」
「フマー」
探偵気取りコンビが、ふてくされた様子でプカプカと浮遊している。おいおい、あまりダラーッとしてると天井に――。
「ヤヤ!」
ほら、天井に頭ぶつけた。
名探偵シャーロットに全て持っていかれて、悔しいのだろう。俺たちの推理なんて全く惜しくもなかったから、ふてくされるのも筋違いだと思うんだけどな。
ま、どうせ好物喰えばすぐに忘れるだろう。
「それよりも、次どうするかだよな」
次の寄港地までは襲撃イベントも発生しないようなので、船で待機している必要もなくなった。
「うーん。どうせなら――」
《プレイヤーによって未知なる大陸が発見されました。最初に到達したプレイヤーに、称号『金の大陸発見者』が授与されます》
おお? 誰かが新大陸に到達したらしい。俺が浮遊大陸を見つけた時と同じワールドアナウンスだ。
しかし、金の大陸ねぇ。一体どんな場所なんだろう?
「もしかして、アリッサさんなら何か情報を知ってるか?」
「ユート君っ!」
「おわぁ!」
慌てて振り向くと、そこには何とも言えない表情のアリッサさんがいた。ここまで走ってきたようで、髪が乱れている。
「い、今のワールドアナウンス、ユート君じゃないわよね? ね?」
「え? 大陸を発見したのが俺かどうかってことですか? 当たり前じゃないですか。ずっと船にいたんだし」
「そ、そうよね。いくらユート君でも、この短期間で大陸発見するのは無理よね」
そりゃそうだ。まあ、浮遊大陸を発見した実績があるから、一応聞いておこうってことなんだろう。
どうやら誰かからコールがきたらしく、それに出て何やら話を聞いているアリッサさん。
「あら? そうなの……。なるほど」
どうやら今のアナウンスに関して情報が入ってきたらしい。さすが早耳猫!
「新大陸を発見したのはモンスター狩猟部の部長パーティ――コクテンたちっぽいわね。彼らのクランの人間が盛大にお祝いしているって言うから、間違いないと思うわ」
「おおー、コクテンですか! さすがはトッププレイヤーだな!」
「……そうね」
何故かジト目で見られている!
あ、もしかして、今の俺の発言はかなりブーメランか? 新大陸を発見したコクテンたちがトッププレイヤー。つまり、浮遊大陸を発見した俺自身もトッププレイヤーだと自画自賛しているようなものだ。
は、恥ずかしい! 遠回しに、俺凄いでしょって言っている感じだもんな!
「……そ、その、新しい大陸ってどう行けばいいんですかねぇ? 待ってたら、情報買えたりしそうですか?」
「うーん、多分ね。コクテンたちも、情報をよく売りに来るから」
そう言えば、俺も売りたい情報あったな。
「じゃあ、待ってる間に売りたい情報の話、してもいいですか?」
「……ど、どんな情報なのかしら?」
「実はですね――」
「あ、ちょっと待って。ここじゃ人に聞かれるかもしれないから!」
「あー、そうですね。じゃあ、俺の部屋いきましょうか」
「お願いできる?」
部屋の大きさに驚くアリッサさんにソファを勧めつつ、俺は売りたい情報を語った。
俺が売るのは属性ソイ豆の情報だ。これを使えば、鬼ごっこ第一階層の攻略が楽になるという情報も添えておく。
「へぇ! これはいい情報ね! 属性ソイ豆の栽培はうちも試してるけど、まだ成功してないのよね。さすがユート君のモンスたちね」
「へへへ。でしょ? うちの子たちすごいでしょ?」
それに、最近はセカンドジョブで陰陽師も増えてきたから、かなり売れそうな情報だということだった。その後値段に関して相談した結果、金の大陸の情報が判ったらそちらを教えてもらって相殺という感じに落ち着いた。
というか、アリッサさんと話をしている最中に、コクテンたちのクランの人間が情報を売りにきたらしい。
「発見されたのは西。砂海の町からさらに進んだ砂漠の先よ。大量のモンスターとのパーティ戦闘の末に出現する、激強なボスを倒さなくちゃいけないみたい。で、ボス戦を乗り越えると砂に埋もれた古代の遺跡があって、そこから転移で移動するようね」
「大量のモンスターとの戦闘、ですか……」
「コクテンたちでも何度も死に戻った末に何とかクリアしたみたいよ」
そりゃ、俺には絶対無理なイベントだな。
「しかも、そこにたどり着くまでにも、色々大変みたいよ」
砂漠に流れる流砂にあえて飲み込まれることで、地下の空洞に移動できるそうだ。そこを移動しつつ、地上に出てまた流砂に呑まれる。それを数回繰り返した先で、ようやくボスを発見できるらしい。
「地上は耐暑、地下は耐寒が必要で、モンスターとの戦闘もかなり多め。純粋に地力が試される感じよね」
一応、流砂や地下空洞の地図などを貰ったが、攻略は無理そうだ。まあ、サボテンや香辛料などが採取できるっぽいから、何度か足を運ぶだろうが。
というか、今から行ってみようかな。耐暑も耐寒も、料理でどうにかなるし。あとは死ぬ気で戦えばいいのだ。
まずは砂海の町へと行ってみよう。経験上、直前の町にはフィールド探索に役立つアイテムがあったりするからね。




