888話 お誘き寄せ
更新日間違えておりました!
名探偵シャーロットと別れた俺は、再び船内の探索に戻った。
多分、船長室以外にも空調穴の網が壊れている部分があり、そこでホワイトホーンラットと戦闘になるんじゃないかと予測したんだが……。
それは他のプレイヤーたちも同じであるらしい。皆が中腰で、空調穴を探しながら船内を歩き回っている。
俺たちもその中に交じって船内を捜索したんだが、成果は上がらなかった。
これだけの人数が探し回って発見できないなら、そもそも普通に探しても見つからない可能性があるんじゃないか?
「これは、アプローチの方法を変えた方がいいかもしれないな」
「ヤ?」
「フマ?」
おっと、いつの間にかアイネも探偵顔だ。名探偵シャーロットに影響されたのだろう。
ファウと並んで浮かびながら、シリアスな表情で手を顎に当てている。まあ、ポーズだけで何も考えてないと思うけど。
「空調穴探しは他の人に任せて、俺は餌を使ってホワイトホーンラットを誘き寄せようと思う!」
「ヤヤー!」
「フマー!」
「うむうむ。そうだろう?」
ファウとアイネが大賛成とばかりに拍手してくれた。
「……お前ら、ただ探し回るのに飽きてきただけだろ?」
「ヤヤー?」
「フーマー?」
明後日の方を向いて下手な口笛とか、誤魔化し方昭和か!
「ま、俺も少し飽きてきたから気持ちは分かるけどさ」
「ヤ!」
「フマー!」
俺が同意するようなこと言ったら、「ほらー! そっちもそうなんじゃん!」的な感じで、肘を使って俺をウリウリと突つき始める。探偵ごっこが楽しいからか、テンション高いな!
「分かったから! ファウは顔の前を塞ぐなって!」
「ヤー」
「フマー」
「ほら、もう行くぞ」
俺は一度部屋に戻り、ホワイトホーンラットを誘き寄せるための食材を吟味することにした。
「何を使って誘き寄せようか? ネズミ系だったらチーズか?」
実際のネズミはチーズ好きじゃないってテレビでやってたけど、ゲームだしイメージ通りの設定でもおかしくはない。
「キキュ!」
「ヤー!」
「それはお前らの好物だろ。まあ、可能性はあるから設置するけど」
リックがミックスナッツ、ファウがハチミツクッキーを押し付けてくる。自分たちも何かしたいんだろう。
チーズやナッツ、クッキーをはじめとした10種類くらいの食べ物をトレイに乗せて、空調穴の前に置いてみた。
風の刻印を施しているので匂いの拡散も問題ない。
ただ、その状態で数分ほど待っていても、特に変化は起きなかった。失敗か?
いや、すぐに結果は出ないかね? それに、穴の目の前で待っているのもダメなのかもしれない。
俺は浴室の入り口前に椅子を置いて、離れた場所から焦らず見守ることにした。
「ヤヤ」
「フマ」
「空調穴見張るのはいいけど、俺の頭の上に陣取らないで」
「ぽりぽり」
「ばりばり」
「おい! 頭の上で何か硬い物を食ってるだろ!」
「ヤ!」
「フマー!」
しーってすんな! 全くもう。
うるさくしているせいか、ホワイトホーンラットは姿を見せない。さらに5分、10分と時間が経っていく。
「ララー!」
「キキュー!」
「こらー! 部屋の中で暴れるなって!」
「デービー!」
「スネー!」
「なんだ? 腹減ったのか? 分かった分かった。オヤツ出してやるから」
ファウとアイネ以外の子たちは待つのに飽きて、完全に遊びモードである。ある子は追いかけっこをし、ある子はおやつをかじりながらソファに優雅に寝そべる。
まあ、ファウとアイネもうずうずしているのが背中から伝わって来るけど。それでも未だに探偵ごっこを続けているのか、二人仲良く浴室を見張っている。
それからさらに十数分。不意に俺のローブが引っ張られた。
「ヤヤ!」
「フマ!」
グイグイの犯人はファウとアイネの即席探偵コンビだった。何故か小声だ。
「どうした二人と――」
「ヤー!」
「フマー!」
すごい剣幕で口塞がれた! その後、遊んでいる他のモンスたちに対しても、静かにしろと言うジェスチャーをしている。
「どうしたんだ?」
「フマ!」
小声で尋ねると、アイネが浴室へと手招きをしている。これはもしかして!
「うわ、まじか」
「ヤ」
浴室を覗き込むと、通風穴の網の間から小さい手が伸ばされ、食べ物を取ろうとしているではないか。絶妙に届かない距離であるらしく、必死にあがいている。
静かに観察していると、手の正体が見えた。間違いなく、ホワイトホーンラットだ。匂いに釣られて、ここまでやってきたらしい。
「デビ!」
「キキュー!」
「ラ?」
「あ、お前らそんな声出したら!」
ほら! 逃げちゃった! ホワイトホーンラットが姿を消しちゃったよ。
「……ヤー」
「……フマー」
「え? なんで俺が睨まれてるの?」
溜息を吐いたファウとアイネが、俺をジトーッと睨んでいる。え? 俺が悪いの? 注意した声がデカかった? えー?




