878話 プールでパーリー
部屋で寛いでいると、船全体が大きく揺れた。とは言え、危険な感じはしない。ゆったりとした、むしろ心地よい揺れだったからだ。
「出航したらしいな」
「ニュ!」
「ヤヤー!」
自室の専用デッキに出てみると、港から段々と離れていくのが見えた。少しだけ吹き付ける風が強くなるが、寒さは感じない。どうやら船上では気温が一定に保たれているようだ。
「フムー」
「ペーン!」
「グゲ!」
ルフレたちが目を細めて、海風を楽しんでいるな。河童は川のイメージだけど、海も好きであるらしい。
「よし、まだ探検してない階に行ってみるか!」
「フマ!」
地図を見ながら、俺たちは船の中を歩き回った。内部の施設は相当豪華だ。
食堂以外にもバーやカフェが点在し、遊戯室や運動場では様々な遊びが楽しめる。図書室や大浴場も一度は使ってみたいな。生産室とギルドの出張所まであるので、クエストを受けることすらできる。
あと、ダンスホールこそないけど、カジノはかなり大きいものが備わっていた。ギラギラのジャラジャラの、いかにもカジノって感じの場所だ。
100Gでコイン一枚に換えられるようだ。とりあえず100枚くらいコインにしておくか。
「フマ!」
「フムー!」
「え? お前らも遊びたいの? というか、モンスでも遊べるの?」
「グゲ」
うちの子たちが一斉に俺に向かって手を差し出す。コインを寄こせと言うのだろう。仕方ないので、それぞれに10枚ずつ渡しておいた。ちょっと気分を味わうなら十分だろう。
アイネが向かったのは一番近くにあるルーレットだな。ルールとか分かってんのかと思ったら、普通に参加している。
「フマ……フマー!」
「ちょ、アイネ? まじでそこ? 一点賭けなの?」
「フマ!」
アイネのやつ、最初にいきなり全コインを一点賭けしやがった。しかも負けたし。アイネにルーレットやらせちゃダメだね。いや、他のモンスたちにも基本賭け事はやらせちゃダメって分かったけど。
「グゲー!」
「ペペーン!」
「え? もう渡したコイン全部すったの? スロットに全ツッパって……。ダメダメ、渡した分だけだ」
「グゲー……」
「ペペーン?」
「足に縋りついてもダメ!」
次も負けたらまたねだるだろ!
「フムー!」
「ニュー?」
「ヤー……」
ルフレたちはポーカーに参加しているが、全然ダメダメだ。3人とも一勝もできずにコインを失っていた。
「……カジノはもういいや。甲板にでも出て外の風を浴びよう。カジノなんて不健全だよ。うん」
「フマー……」
「フムー……」
「な、なんでそんなジト目で見るんだよ!」
そもそも、賭け事とかあんまり好きじゃないし? ゲームの中でまで賭け事に嵌まるとか健全じゃないもんな?
決して、ブラックジャックで連敗して残りのコイン全部すって、心が折れたわけじゃないから!
「ほら、いくぞ!」
「ニュー」
「グゲー」
モンスたちも俺と同じように心が折れているので、素直に頷いて付いてくる。
ただまあ甲板も、結果としては健全とは程遠い感じだったけど。
「後部甲板にプールがあるって聞いてたけど、こういう感じ?」
「ひゃほー! 気持ちいいぃぃ!」
「フムー!」
客船のプールなわけだし、市民プールみたいな場所とは違っていて当然だった。むしろ、パリピが集まるナイトプール的な? まあ、今は昼間だけど。
船内にはプライベート設定の個室プールもあるが、ここは違うらしい。
「オイレンとサッキュンって……。地獄の組み合わせかよ」
プールではすでに何十人ものプレイヤーが遊んでいたが、その中で特に目立っているプレイヤーがいた。テイマーのオイレンシュピーゲルと、サモナーのサッキュンだ。
オイレンの周囲にはウンディーネがたくさんいる。というか、5体全部ウンディーネ系統だった。周囲の目の厳しさとか全く気にせず、我が道を行く。さすがウンディーネテイマーだぜ。
「おー? 白銀さんじゃないですかー! プールっすか?」
「やーやー、お久お久っすー」
気づかれたな。正直、もうプールで遊ぶかどうか迷ってたんだけど、気付かれたからには無視もできん。
「あ、相変わらず凄いな、オイレン」
「はっはー! でしょ? さすが白銀さん! ウンディーネテイマーの始祖! この子たちの良さがわかってるぅ!」
いや、待て! 確かに最初にウンディーネを見つけたのは俺だけど、ウンディーネテイマーの始祖って言い方やめて! 俺がハーレムパーティ野郎だと思われるから!
「白銀さんがセカンドジョブ見つけてくれたおかげで、もっとこの子たちと仲良くなれそうだかんね! 感謝っすわ!」
「どんなセカンドジョブだったんだ?」
「水魔術師っすね! 水の友っていうユニゾンスキルが生えてきましてね? 水属性系のモンスとの好感度が上がりやすくなる効果があったんですよ!」
テイマーに属性系の魔術師で、~の友というユニゾンスキルが発現するようだ。オイレンには最高のスキルなんだろうなぁ。
「俺も聞いてよー。戦闘用に気功士選んだら、召喚武闘術っていうスキルゲットっすよ! これがまた強いんすよ!」
元々殴りサモナーだったサッキュンは、その殴り性能をさらに高める選択をしたらしい。結果、召喚武闘術という面白武術を覚えたという。
召喚獣の力を自身に降ろし、ステータスやスキルを一定時間強化可能なユニゾンスキルだった。軽く演武を見せてもらったけど、超カッコいい。
サッキュンの後ろにスタンドみたいに半透明の召喚獣が浮かび、サッキュンがオーラみたいなものを纏うのだ。
サモナー+武術系職業、かな? ともかく、サッキュンがさらにカッコ強くなったってことだろう。ちょっとうらやましいのだ。




