表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
872/873

867話 雲外鏡


 ライチョウ草原の町の中を、妖怪を探して歩く。妖怪察知はスキルの範囲内に妖怪がいると、音で教えてくれるというスキルだ。


 近づけば近づくほど音が大きくなるので、それに従って方角を少しずつ特定していくという感じである。金属探知機のシステムに近いかもしれない。


 妖怪察知に従って進んでいくと、妖怪は町の外れの方にいるようだった。というか、外に出ちゃったりしないよな?


 不安に思いながら100メートルほど歩いた頃、今度は妖怪探索に反応があった。効果はほとんど妖怪察知と同じだが、探索のほうがより正確に場所を特定できるらしい。


 具体的には、音の大きさだけではなく、低音、高音で高さ、音の長さで方角まで教えてくれるのだ。


 その結果、俺は林の中にある小さな社のようなものを発見していた。一応、ここもまだ町の中という判定ではあるらしい。ギリギリ町を囲む柵の中だしね。


 元々は白木で作られた、小さなお社だったのだろう。完全に和風な感じだ。ただ、長い間打ち捨てられているのか、全体が黒ずみ、屋根の上は苔で覆われている。


 杉のような真っ直ぐな樹が立ち並ぶ林の中にこの社があると、メチャクチャ雰囲気があるね!


「この中に妖怪がいるっぽいな」

「ポン!」

「それじゃあ、開くからな」


 社の扉に静かに手をかける。腐りかけの扉だが、破壊せずに開けることができた。中を覗き込むと、意外なものが置かれている。


「これは、鏡?」

「ポン?」


 社の中に安置されていたのは、一枚の鏡であった。サイズは一般的な壁掛け時計くらい? ガラスを嵌めているのではなく、金属を磨いて鏡としているようだ。


「銅鏡ってやつかな?」

「ポン?」


 この鏡が妖怪なのか?


 手に取っていいものかどうか迷っていたら、急にウィンドウが立ち上がった。


「なになに? 妖の絵巻物を使用しますか?」


 買ったはいいけど使い道が分からなかったあのアイテム、ここで使えんの?


「……どうすっかね?」


 何が起きるか分からないし、超高額アイテムだし、使えって言われてもなぁ。


「ポン?」

「うん? 使ってほしいの?」

「ポン!」


 チャガマがメッチャ見てる。というか、待ってるモンスたちも超興味津々だ。全方位からキラキラした目で見つめられて、もう使わないという選択肢がない気がする。


「……まあ、どうせ使い道が分からなかったアイテムなんだし、ここで使っちゃってもいいか」

「ポコ!」

「よし! 妖の絵巻物、使うぞ!」

「ポンポコー!」


 俺がウィンドウのyesをタッチした瞬間、どこからともなく妖の絵巻物が飛び出してきた。そして、光の粒となって弾け飛び、鏡に吸い込まれていくではないか。


 やっぱ使うと消滅するっぽいなー。


《イベントの一部をスキップし、雲外鏡と友諠を結びました》

「は?」

「キョ!」


 アナウンスが流れたかと思ったら、雲外鏡に目が生えた。というか、姿も微妙に変わったな。緑青に覆われた緑色の曇った銅鏡だったのに、綺麗なブロンズカラーの、僅かな曇りもなく磨き上げられた銅鏡に変化しているのだ。


 その鏡の中央部分に可愛い目が描かれている。どうやら鏡に浮き上がった絵文字のような顔でコミュニケーションが取れるらしい。笑顔の絵文字そっくりだな。


「キョ!」


 雲外鏡は笑顔で一鳴きすると、一瞬で姿を消した。パーティに枠がないので、ホームへと移動したのだ。


「一度召喚してみたいな。すまん、チャガマ。雲外鏡と入れ替わってもらうな?」

「ポコポン!」


 チャガマは笑顔で右手をシュタッと上げ、手首をピコピコと動かす。何の動きだ? メッチャ可愛い。そして、嫌がる素振りがない。


 さすが我が家のおもてなし番長。仲間をぜひ使ってやってって感じらしい。


「ありがとな」

「ポコー!」

「チャガマ送還で、雲外鏡を召喚!」


 チャガマの頭を撫でてから、雲外鏡と入れ替える。


「キョキョ!」


 甲高い声で嬉し気に鳴く雲外鏡は、俺の目の前にプカプカと浮いていた。どうやって動くのかと思っていたら、普通に浮かぶことができるらしい。


「能力は、真実看破に反射?」


 鏡っぽいと言えば鏡っぽい能力だな。でも、真実看破ってどこで使うんだ? 創作物でよくあるあれだろ? 変身している悪魔の姿を暴くとか、呪いで猫に変えられている王女の呪いを解いて仲間にするとか、そういうやつ。


 イベント以外で使い道なくない? それとも、変身能力を使ってくるような敵がこの後たくさん出てくるとか?


 反射は逆に強すぎない? 普通に考えたら攻撃を反射するって能力だもんな?


「なあ、雲外鏡」

「キョ?」

「真実看破って、戦闘中に使って意味あるのか?」

「キョキョ!」


 どうやら戦闘中使用可能な能力であるらしい。一度戦闘で試してみたいな。


 俺は町の外に出て雲外鏡の能力を検証することにした。ウィングロックの群と遭遇したので1体を残して他は倒してしまう。


「よし、これで安全に検証できるぞ! 雲外鏡! 真実看破!」

「キョー!」


 前に出た雲外鏡がピカーッと輝く。射程が短めなんだろう。放たれた光はウィングロックを包み込み――何も起きなかった。


「え?」

「キョ?」


 失敗? でも、雲外鏡にそんな素振りはない。効果が分かりづらいだけ?


「オオオオォォォォ!」

「やべ!」


 ウィングロックが雲外鏡に攻撃してきた! 真実看破は敵対行動扱いっぽいな! ていうか、雲外鏡動けてない? 硬直入ったままか! まだ弱いから攻撃食らったら死ぬ!


「うおぉぉぉぉ!」


 何で後衛の俺が体を張って庇わなきゃならんのだ!



更新日を間違えてしまいました。申し訳ございません。12日の8時頃にもう1話更新し、その後は16、20と4日に1度更新になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 今のところ仲間になったばかりで育っていないし、能力の使い所も難しそうやね。
妖怪察知と妖怪探索の仕様、某セガサターンのゲームを思い出しますね 透明なエネミーを音で察知して場所目星つけて狙って撃って対抗するという >絵巻物 ゲーム内通貨ですけど妖怪まわりをPay to Win…
効果が分かったのはとても良い事なんだけど、仲間にする手順をスキップする効果なら面倒な手間の妖怪にこそ使いたいですねえ(とても高い訳ですし)。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ