865話 雷雲の罠
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昨日は鬼ごっこで死に戻った後は、生産を色々試してログアウトした。メインは護符作りだけど、浮遊島の野菜を使った料理なんかも試してみたのだ。
あと、モノリスも隅々まで確認したけど、セカンドジョブによる変化はなかった。あくまでもテイマーに関するパワーアップだけってことらしい。
そして、今朝は日課を終えてから浮遊島にやってきた。出航前に、こちらの攻略を進めておこうと思ったのである。
セカンドジョブみたいな新発見が他にもあるかもしれないし。
「じゃあ、畑は任せた」
「ムム!」
浮遊島で新しく購入した畑をオルトたちにまかせ、俺は村を出る。目指すのは、地図が途切れているヒバリ平原の先だ。
地図が破れていて何があるか分からないが、見た感じはヒバリ平原が先まで続いている。
「キャロ、今日も頼むぞ」
「ヒヒン!」
メンバーは、キャロに加え、飛行可能なアイネ、ファウ、リリス、俺の上に乗れるリック、スネコスリ、妖怪の中では機動力がありそうな魂繭だ。
魂繭は青白く輝く繭の姿をしており、フワフワと空中を漂っている。ゆっくり浮遊している様子からあまり速そうに見えないが、本気で飛ぶとかなり速度が出るのだ。それに、遅れるようなら俺に張り付くことも可能だろう。
あまり大きくないし、以前手に収まった時に殆ど重みを感じなかったからな。多分、昆虫系に見せかけて、幽体系に近いんじゃないかと思う。
そんなメンバーで村を出発すること30分。
「逃げろ逃げろ! キャロ頑張れ!」
「キキュー!」
「ヒヒーン!」
ゴロゴロ……!
俺たちは全力で――というか、キャロが全速力で逃げていた。逃げている相手はモンスターではない。
俺たちが逃げた理由は、空中に浮かぶ濃い灰色の雲だ。ただの雲ではなく、バチバチと音を立てながら帯電しているのが分かる。
それは小さな雷雲だった。
最初見た時は、小さい雨雲だなー程度にしか思わなかったのだ。しかし、その直後、俺たちは雷雲の恐ろしさを知ることとなる。
警戒心もなく近づいてしまった刹那、雷雲がゴロゴロという甲高い音を立てながら膨張を始めたのだ。
俺たちが異変に気付いた時にはもう遅かった。雲は直径5メートルほどに成長し、周辺に雷を降り注がせたのである。
広範囲の落雷を回避できるはずもなく、俺たちは雷の直撃を受けていた。そこでまず、スネコスリと魂繭が死に戻ってしまう。
道中は援護役として頑張ってくれていたんだが、まだ俺の妖怪召喚スキルが弱いせいでHPが低かったのだ。
モンスたちはそれだけで死に戻ることはなかったが、HPが大きく削れてしまった。そのうえ、麻痺の状態異常付きである。
残ったメンバーが倒れていれば、当然ながらそれを狙ってくるものたちがいる。落雷の音がモンスターを引き寄せる効果もあるのだろう。
そして、麻痺している状態で襲い掛かられればひとたまりもない。実際、倒れたところにウィングロックの群に襲われ、リリスとアイネが死に戻っていた。
その直後に麻痺が解けたおかげで何とか勝利することはできたが、短時間でパーティ半壊だ。勝利はしたものの、ドリモとメルムは召喚後に即覚醒を使っちゃったし、一番いい強化ポーションなんかも使いまくってしまった。
さすが最前線。一筋縄ではいかない。
現在のパーティは、キャロ、リック、ファウ、メルム、ヒムカ、ドリモ、チャガマである。
妖怪をパーティに組み込むかどうか迷ったが、召喚しなければスキルレベルが上がらないからな。しばらくは1体だけパーティに組み込むことにした。
「みんな、雷雲を見逃さないように頼むぞ」
「モグ」
「ポン!」
どうやらこの辺のエリアでは、あの雷雲の罠がランダムに発生しているらしい。景色的には相変わらず青緑色の草が生えていて、ヒバリ草原のままに思えるんだがな。
ミニ雷雲を発見したら避け、誤って起動させたら全速力で逃げる。そうして、俺たちは平原を進み続けた。
「デミエンジェル系の敵はいっぱい出るけど、本当の天使は出ないな」
「ヤー?」
「ファウは天使ってどこにいると思う?」
「ヤヤー? ヤ!」
「まあ、分からないよなぁ」
「ヤー」
天使がテイムできるか分からないけど、いないってことはないと思う。デミエンジェルなんて敵が出ているわけだし、夜にはフォールンエンジェルスケルトンもいたのだ。
堕天使のスケルトン。つまり、堕ちた天使がいるということは、堕ちる前の天使もいるって事である。多分、だけどね。
「っと、あそこ雷雲があるな、避けるぞ」
「キュ!」
危険な雷雲の罠だったが、厄介なだけではないことに途中で気づいた。採取に夢中になったリックが誤って起動してしまったんだが、襲ってきたスカイボニートにもダメージと麻痺が入ったのである。
範囲に入ったものは、敵味方関係なく雷の餌食となってしまうらしい。それからは狩りが捗ったね。麻痺状態の敵を攻撃するだけの簡単なお仕事なのだ。
まあ、雷雲の罠の起動タイミングをミスって、2回死にかけたが。
そして、消耗を重ねながらも、ついにその時が訪れる。
「ヤヤー!」
「ああ! 間違いない! 町だ!」
「ポポーン!」
青緑色の草原の先、石造りの家が立ち並んでいるのが見えた。因みに、遮るものがない草原で町が急に見えるようになったのは、モンスター避けの結界の効果らしい。
「面白いものがあるといいんだけどな!」
「ヒヒン!」
レビューをいただきました。ありがとうございます!
900話近い作品で、今後がまだまだ楽しみと言っていただけてとても嬉しいです。
妖怪は少しずつ増えていくと思うので、楽しみにしていてください。




