863話 陰陽師ラウンジ
新造船が出航する前に、色々と用事を済ませてしまおう。
まず向かったのは、獣魔ギルドである。陰陽師も、このギルドに統合されているのだ。ここで1つ、陰陽師を選んだことによる利点が判明した。
なんと、陰陽師になってから何のイベントも起こしていないのに、専用ラウンジに入れてしまったのである。ギルドランクが10以上にならないといけないはずなのだが……。
テイマーで獣魔ギルドのランクを10以上まで上げていたことで、陰陽師もランクが10を超えている扱いになったようだ。
サモナーやネクロマンサーを選んでいても同じだっただろう。もしかして、ユニゾンスキルである万能従魔術は、ファーストとセカンドを獣魔ギルドのジョブにしていることが条件だったりするのだろうか?
ともかく、ラウンジに入れたのは僥倖だ。これで、専用のアイテムなんかも購入できるだろう。
案の定、護符術用の紙や筆が売っている。護符専用のホルダーや、妖怪のためのインテリアが販売していた。
「護符ホルダー、五芒星書いてあって中二病全開だな! 欲しい! 腰に下げて、格好良く護符引き抜きたい! え? これ! このアイテム、売ってるんですか? しかもこの値段……」
その中に驚きのアイテムが混じっていることを発見し、俺は思わず声を上げてしまう。そのアイテムとは、『鬼道陰陽師の秘伝書』『鬼ごっこ参加許可』の2つである。
これは、四鬼を仲間にした時にNPCから、浜風たちが貰っていたアイテムだった。
確か、藤原千方さん、だったか? 俺は知らなかったけど、浜風曰く結構有名な偉人であるらしい。
「いや、鬼ごっこ参加許可って、称号だったはずだよな? え? 店で称号が買えちゃうの? しかも0G? つまり、無料?」
俺が驚いたのは、貴重な品がしれっと並んでいるというだけではない。称号が買えてしまうのも初耳だが、なんとその値段が0Gとなっていたのだ。
「はい。こちら、ユート様は入手の権利を満たしておりますので、この価格での提供となります」
イベントがもう1度発生させられないなら二度と入手不可能になっちゃうし、救済措置ってやつなのだろう。ここに来てよかった!
「じゃあ、とりあえずこの2つもカートに入れとこう。後は何か――お? これが噂の高額商品ね」
さらに目についたのが、『妖の絵巻物』という超お高いアイテムだ。これは名前だけは聞いたことがある。
「これが絵巻物か」
「フムー」
そのお値段、1000万G。以前テイマーラウンジで購入した、血統の覚醒と同じ値段だ。それだけ聞くと、非常に強力そうに思えるが、今のところ使い道が分かっていなかった。
浜風が購入して検証班と一緒に色々調べたらしいが、結局どう使えばいいのか分からなかったらしい。
値段からして絶対に強力なアイテムであるはずなんだが、どうしようか……。
「うーん。でも、血統の覚醒は超強かったわけだし、これだって使い道が判明すれば絶対に強いよな」
なんせ1000万だ。
「よし、これも買っちゃおう!」
「ペペン!」
購入ボタンを押すと、称号をゲットしたというアナウンスが聞こえた。本当にショップで称号を購入できてしまったらしい。
筆なんかも購入したので、あとで色々試してみるつもりだ。その前に、これだけどな!
「まんま絵巻物だな」
「スネー?」
「ほら、こんな感じで、妖怪が一杯描かれてるんだよ。ここにいるこれとか、スネコスリじゃないか?」
「スネ!」
購入したばかりの妖の絵巻物をラウンジのテーブルで広げてみると、2メートル近い長さがあった。そこに、非常に鮮やかな色遣いで、無数の妖怪が描かれている。
百鬼夜行ってやつなのだろうか? 先頭の方にはスネコスリや河童、幽鬼などの序盤で友誼を結べる妖怪が描かれていた。もしかして、ゲーム中で仲間にできる全妖怪が描かれているのかね?
じっくりと見ると、真ん中位にハナミアラシの姿もある。ゲームオリジナルの妖怪であるはずのハナミアラシが描かれているってことは、やはりここに掲載されているのはLJOの中に登場する妖怪たちなんだろう。
「……ということは、この辺のヤバげな妖怪も仲間になるのか?」
「スネ?」
「分からんか」
絵巻物の後ろの方には、マジでヤバそうな妖怪たちの姿がある。九尾の狐に八岐大蛇、クソデカい鬼や戦国武将のような男性。足しか映っていない巨人はダイダラボッチ? デッカイ白骨はガシャドクロだろうか?
ゲームのラスボスみたいな妖怪たちが、ゲームに登場するということらしい。
いずれ出会う可能性があるのかと思うと、ちょっと怖いな。仲間にできるんだろうか? まあ、エンドコンテンツというか、本当に後々だろうけど。
「とりあえず、鬼ごっこに挑戦したいな」
陰陽師専用ラウンジから挑戦できるという、地獄の鬼ごっこ。称号を得た俺は、1日1回これに挑戦する権利を得たはずだ。
因みに、事前情報はあまり入れていない。挑戦できるとも思っていなかったし、そもそも浜風たちも攻略できていないそうなのだ。
「すいません、鬼ごっこに挑戦したいんですけど」
「分かりました。鬼ごっこには妖怪以外を連れては入れないので、現在パーティに編成しているモンスターはホームへと送還されます。よろしいですか?」
え? 鬼ごっこってモンス不可? だとすると、まだ陰陽師になりたての俺は3体しか編成できないんだが……。
「まあ、最初はとりあえず挑戦してみるだけだし、それでいいか。鬼ごっこに強そうなのは、小回りが利くスネコスリ、透明になれる幽鬼、気体化可能なフウキとかかな?」
「スネ!」
「ウアー」
「フー!」
なんか不安! でも、やれるだけやってみよう!
転剣20巻発売記念のるろお先生と合同サイン会、申し込みが26日までです。
メロンブックス秋葉原店、もしくはメロンブックス通販で20巻を予約すると応募用シリアルコードが貰えるそうです。
よろしくお願いします。




