856話 セカンドジョブ
雲黍の収穫は慣れてくると単調だったが、農家のおじさんから色々話も聞けたので意外に飽きることはなかった。
この大陸じゃないと育たない作物の情報や、未知の作物の情報。この村で畑を買うことができるという話など、非常にためになった。
オルトとサクラ、オレアなどは、ずっと頷きっぱなしだったね。
畑仕事を終わらせ、村長の下へと戻る途中でギルドへと寄る。畑を購入するためだ。
雲黍や他の特殊な野菜の中には、銀の大陸でなくては育てられない物もあるらしい。その種もギルドで購入できると聞いて、オルトたちが我慢できなかったのである。
真っ直ぐ村長の家へと向かおうと思ったのに、オルトたちに引っ張られて寄り道することになってしまった。まあ、凄い遠回りってわけじゃないから、いいんだけどさ。
「畑の区画の端っこか」
「ムッムー!」
「トリー!」
「ダメダメ! まずは村長のところ行くんだから! その後な?」
「――」
「ムー……」
「トリー」
サクラがオルトたちを宥めてくれて助かった。俺だってセカンドジョブを早く入手したいんだから!
唇を突き出してムームーと愚痴るオルトを肩車して宥めながら、急いで戻る。
「ムッムー!」
オルトがすぐに機嫌を直してくれてよかった。オレアはサクラに頭を撫でられてご満悦だし、もう不満は忘れてるっぽい。
「畑仕事終わりました~」
「おー、そのようじゃねぇ。ありがとうのう」
「いえいえ。それで、セカンドジョブなんですが……」
「うむ! 覚星殿の使用を許可しよう」
「ありがとうございます!」
よしよし! きたぞ!
村長と一緒に家を出て、隣に建つ覚星殿へと向かう。
「まずはお主だけで星の中心に立つのじゃ」
「は、はい。ほら、お前ら一度下りてくれ」
「ラー」
「ムム」
「キキュ」
モンスたちを下ろして、俺は言われた通り五芒星の中央に立った。それを確認した村長が、懐から取り出した青い表紙の魔導書のようなものを開く。
「天を巡りし大いなる力よ、ここに集いて形を成せ! 今、新たなる星を生み出し、人々を照らす希望の光を!」
何やらカッコイイ詠唱が終わると、覚星殿全体が青く輝いた。五つの柱から青い魔力が溢れ出すと、中央に立つ俺に向かって流れ込み始める。
「す、すんげぇぇぇ!」
なんじゃこりゃぁぁ! 今までにない派手なエフェクトに、否応がなく期待が高まる。
青い光の柱に包まれること数秒。ゆっくりと光が落ち着き始め、遂には全ての光が俺の中へと納まった。
「……これで、終わりか?」
「うむ。お主には新たな星を宿すための余裕が生まれたはずじゃ。確認して見よ」
「余裕? えーっと……おお! セカンドジョブが設定可能になってる!」
「そうじゃろう。じゃが、慎重にな? 一度決めた職業は、簡単には変えられぬ」
セカンドジョブにもしっかりレベルがあるようで、それが10になるまでは転職ができない仕様であるらしい。
また、ファーストジョブに比べるとステータスの補正は非常に低く、倍化とはいかないそうだ。
それでも、スキルやアーツが使えるようになるだけでも、非常に強力だ。生産の幅だって広がるだろう。
「早速――ほほう?」
セカンドジョブの設定画面を開くと、その数は膨大であった。戦士やサモナーのような初期職業から、陰陽師や機工士といった後々に解放されたジョブもある。
「さて、何を選ぶか」
戦闘系を選択すれば、俺の弱点を補うことができるだろう。まあ、戦士職はさすがに無理というか、全部が中途半端になってしまうだろうが。
水魔術師や樹魔術師はいいと思う。戦闘力がかなり底上げされるはずだ。
あと考えられるのは生産職だろう。メインジョブは戦闘職で、セカンドジョブが生産職。ソロのプレイヤーならありだ。
パーティを組んでいたら皆で分散できるけど、一人だと全部自分でやらなきゃいけないし。鍛冶、料理、錬金、調薬。この辺は候補に挙がるんじゃなかろうか?
俺の場合は、農業か料理? でも、オルトたちがいてくれるし、料理も特に不足を感じてはいないんだよね。
で、最後が得意な分野を伸ばすという選択肢である。同系統の職業を重ねることで、より特化させるわけだ。
スピアラー+軽戦士とか、火魔術師+風魔術師とか、鍛冶師+彫金師とかだね。
「俺の場合は、サモナーか?」
テイマーにしてサモナー! なんか凄そうだ。でも、今更感はあるよね。テイマーではゲットできない可愛いモンスと契約できるが、パーティ枠の問題もあるからなぁ。
というか、サモナーを選ぶんだったら陰陽師の方がいいか?
すでに妖怪召喚などを覚えているし、そっち方面を伸ばしてみるのは面白い。鬼たちが真価を発揮してくれるだろうし。
「魔術師にするか、生産職にするか、従魔職を伸ばすか……」
あー! 決められん!
どうすりゃいいんだ!
2週連続で予約日時を間違えてしまいました!
申し訳ありませんm(__)m




