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855話 雲黍


 天空神様の石像をお参りした後、村にある武器屋や道具屋を巡っていた。うちの子たちは相変わらず空でバーディアンの子どもたちと遊んでいるから、お供はアコラだけだ。


 まあ、そのアコラもずっと眠っているから、実質俺一人だけどね!


 どのお店もバーディアンの装備品などは充実しているが、俺的にめぼしいものはあまりなかった。道具なども、ほとんど地上と変わらないラインナップなのだ。


 唯一購入したのが、『雲晴らし』というアイテムである。その名の通り、使用すると周囲の雲を消し去る効果があるらしい。


 クラウドスピリット戦で役に立ちそうだ。まあ、それ以外だと使いどころがあるか分からんけどね。


 ギルドもしっかりあった。外界と隔絶しているように思えても、転移陣があるからちゃんと行き来はあるんだろう。


 しかし、その後に向かった不思議な施設で、俺は驚きの体験をすることとなる。そこは、村長の家の隣にある、覚星殿という不思議な建造物だった。


 5本の大きな石柱が建てられた祭壇のような場所だ。屋根も壁もなく、開放感が凄い。中央には魔法陣が描かれ、周囲の石柱を結ぶ線が五芒星を描いている。


 そこにいた村長に話を聞くと、ここは天に流れる魔力を集め、人の可能性を目覚めさせる場所であるらしい。


 リアルだったら「新興宗教コワ!」となるけど、ゲームの中だったら「覚醒イベントキター!」となるのである。


 俺は震えながら、具体的にどんなことが起きるのか聞いた。すると、とんでもない回答が返ってきたではないか。


「この覚星殿では、第二の職業を得ることができるのう」

「セ、セカンドジョブきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 アリッサさんみたいに叫んじゃったよ!


 だって、え? まじ?


「ほ、本当にセカンドジョブ? セカンドジョブがゲットできるんですか?」

「そのとおりじゃ。正確には魂を強化して、新たな力を得る隙間を開けるんじゃよ」


 セカンドジョブ用のスロットみたいなもんを開けるって意味かね?


「ここはどうすれば使えるんですか?」

「この村の貢献度が一定になれば使えるぞい」

「貢献度?」

「うむ。儂は村人の困りごとをよく相談されるんじゃが、その中から3つお主らで解決してくれんか?」


 ああ、そういう感じね! どんな困りごとなのだろうか? 受けると言うと、村長さんが困りごとリストを送ってくれた。


 ウィンドウには30以上の依頼が掲載されている。依頼とは言っても成功報酬はない。覚星殿を使わせてもらえるようになるのが最大の報酬だし、構わんが。


「戦闘系から納品系、仕事系までいろいろあるな」

「ラー」

「よく分からないアイテムの納品は時間かかりそうだし……」


 多分、この辺で採取できる素材や、モンスターのドロップなんだろう。


 デミエンジェルの羽根のような見たことがある素材もあるけど、納品数が99個とか、どんだけ時間がかかることか。


 多分、戦闘系のプレイヤー向けの困りごとなんだろう。


「俺が達成可能なのは……、これとこれと、これだな」


 納品は村長さんに渡せばいいそうなので、この場ですぐに達成してしまおうと思う。


「レア度7の料理を10個と、レア度8の料理を1つ、これでいいですか?」

「うむ。問題ない」


 水臨樹の果実や、天望樹の実を使った料理を放出することになってしまうが、セカンドジョブの為なら惜しくないのだ。天望樹の実はまた取ってくればいいし。


「で、最後の依頼が、畑の手伝いですね」

「うむ。地図を渡すから、行ってみるとええ」

「分かりました」


 そう、畑のお手伝いという依頼があったのだ。これは正に俺たちのための依頼だろう。いや、本業は戦闘職だけどね?


 道中、オルトとサクラ、オレアを呼び出しておく。うちの畑管理三人衆だ。


「みんな頼むぞ」

「ム!」

「――!」

「トリー!」


 いい敬礼を貰いました! 俺も加えて4人いれば、それほど時間もかからないだろう。そう思っていたんだけど、畑メチャ広くない?


 村の面積考えても、有り得ないほど広い。空間拡張しているのかもしないな。


「あ、あのー、村長さんに言われてお手伝いにきたんですけどー?」

「おおー! それはありがたい! ささ、入ってくれ!」


 畑の前で中にいたおじさんに声をかけると、満面の笑みで迎え入れてくれた。おじさんは腕に包帯を巻いており、非常に痛々しい。


「このとおり怪我をしちまってな。収穫が難しかったんだ。ちょっと特殊な作物で、スキルの無い奴には任せられないしよ」

「可愛い作物ですね」

「だろ? 雲黍っていうんだよ」


 葉っぱなどは、白い色のトウモロコシって感じだ。しかし、普通ならトウモロコシの可食部分が付いているはずの先端には、白い雲のようなモコモコとした綿がくっついている。


「スキルを持ってる奴が、魔力を込めることで綺麗に収穫できるんだ。手本を見せるから、見てろ?」


 おじさんはそう言って、綿に軽く触れて「ムン」と気合を入れた。すると、綿の部分がポロリと落ちたではないか。おじさんが慌ててそれをキャッチする。


「で、この綿の部分を丁寧にむけば、収穫完了ってわけだ。落ちる時に失敗すると、地面にぶつかって汚れるし、品質も下がっちまう。両腕が使えれば問題ないんだがな」

「なるほど」


 これは確かに、腕を怪我していると難しいかもしれない。


「じゃあ、たのむぜ?」

「……はい!」


 広すぎるなーとか、思ってないよ? 4人いてもメッチャ時間かかりそうだなーとかも思ってないから!


 ただ、ちょっとだけ気合を入れる時間が必要だっただけなので!


「ムムー!」

「トリ!」

「――♪」


 うちの子たちが凄く楽しそうなのが、救いかね?


予約投稿の日時を間違えておりました。申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
アリッサさんの心臓が止まってしまう!!!! あ、俺はマジックエンジニアに一票入れときますね!
戦闘職?? 一応テイマーって戦闘職かw
セカンドジョブ、、、妖怪系にするか生産系にするか重複出来るならテイム枠が増える方のテイマールートに行くか、、、たぶん純戦闘ジョブは選ばないだろうけど でも白銀さんだしなぁ〜予想の斜め上にいくかも(…
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