852話 モノリス成長
縁側で、レベリングのために読む本を選ぶ。絵本や小説など色々あるが、俺が手に取ったのは一番古そうな大判の本だった。
これは、謎の魔物図鑑という名前で目録に載っていたやつである。魔物の絵と共にその名前やドロップ品が描かれているそうなのだが、どれも未発見で、どこに出現するかも分からないらしい。
開いてみると、確かに知らないモンスターばかりだった。手描き感満載の味のある絵が大きく載せられ、その下に名前とドロップ、出現場所が書いている。
ただ、純白の平原だの、灰の丘だの、聞いたことがない場所ばかりだった。まあ、まだ未発見の場所なんだろう。
本の正式なタイトルは、ラヴァン研究記だ。ラヴァンという人がモンスターを研究した成果が記されているのかね?
30分ほどかけて本を読み切ると、狙い通り解読がカンストしてくれた。レアリティが高い古文書だと、スキル経験値が高くていいね。
「じゃ、解読の上級を取得してっと……」
さて、これでモノリスの文字がさらに読めるようになっているといいんだが。
何か変わっているのかと、試しにラヴァン研究記を開いてみる。すると、本当に変化があった。ページの隅に、文字が増えていたのだ。
どうやら、前の持ち主の書き込みが読めるようになったらしい。こんなのがあるなんて、全然気が付かなかったのだ。
「各モンスターの弱点と、レアドロップ? というか、どう倒せばレアドロップが手に入り易いか書いてあるじゃん」
確定ドロップってわけじゃないだろうが、少しでも入手しやすくなるのは凄い情報である。まあ、いずれこの本に書かれたモンスターに出会った時に役に立ってもらうとしよう。
「よし、モノリスを確認しにいこう」
俺はモンスたちに囲まれて日向ぼっこをしていたルインに声をかけ、古代の島へと向かった。そして、改めてモノリスをチェックする。
「どうじゃ?」
「名前はそのままだけど――あれ?」
「なんじゃ! 何があったんじゃ!」
「効果の部分が微妙に変化してるんだよ」
これまではモンスターテイム率上昇・5%、モンスターテイム上限上昇・1体、モンスター獲得経験値上昇・5%、従魔配魂率上昇・5%だったはずなんだが……。
「モンスターテイム率上昇・10%、モンスターテイム上限上昇・2体、モンスター獲得経験値上昇・10%、従魔配魂率上昇・10%になってるんだ」
メチャクチャ効果が上がってるんだけど! 倍増だよ! 倍増! 各効果1割上昇はもう誤差とは言えない効果である。
「解読・上級になったからか?」
「そうじゃろうな。モノリスにこのような効果があったとは! それで、続きはどうなんじゃ?」
「えーっと――読める! 読めるぞ!」
そこには、テイムモンスター生産能力上昇・小とあった。これも凄いな! というか、うちじゃ一番有難いかもしれん。
その後、先ほどと同じようにアナウンスが流れ、効果が解放されたと聞こえた。しかも、下にまだ文字が続いているのだ。今の俺じゃ読めないけど、まだまだ強化されるようだった。
今でも十分強いけど、もっと凄くなるってこと? 2億Gは安かったかもね。
その後、ルインと共にモノリスの検証を色々と行った。まず場所の移動だが、これは問題ないらしい。
庭に移設してみたが、モノリスには何の変化もなかった。すぐに古代の島に戻すことも可能である。
ホーム内で条件を満たす場所への移設に、とくに制限やデメリットはないようだった。
ただ、一度使用者が決まると譲渡や販売ができなくなるようで、撤去してもインベントリに入るだけである。もうこのモノリスは俺専用ってことだな。
満足したルインが帰っていった後、俺は再び新大陸へとやってきていた。なんせ、地図を手に入れちゃったし、まだ俺しかこれない場所だからね!
今のうちに楽しんでおかなければ。
「地図によると、こっちに町っぽいものがあるみたいだな」
「キキュ」
肩から地図を覗き込むリックとともに、描かれた絵を確認する。丘陵地帯を北に進んだ先に、町か遺跡のような絵があるのだ。
「キャロ、北へ向かってくれ」
「ヒヒン!」
現在のメンバーは、オルト、サクラ、リック、キャロ、メルム、リリスである。1枠残しているのは、妖怪を召喚するためだ。
妖怪召喚も育てていかないとね。
「早速呼び出すぞ! スネコスリ召喚!」
「スネー!」
「スネコスリ、俺の肩の上から攻撃できるか?」
「スネ!」
召喚されたスネコスリは、楽し気に俺の体をよじ登る。
「キュ!」
「スネ!」
リックとスネコスリが手をシュタッと上げ合って挨拶をしているな。似た姿をしているだけあって、仲がいいようだ。ホームでも結構一緒に遊んでるもんな。
「じゃ、いくぞ」
「ヒヒーン!」
出現する敵は昨日とほぼ同じだ。ただ、新たな敵が追加されていた。スナイプキューピッドという、のっぺらぼうの赤ちゃんに白い羽が生えたような姿の敵だ。
キューピッドって天使扱いなんだっけ? だとすると、ここに出てもおかしくはないのだろう。テイムしたら可愛くなるかもしれないと思ったが、対象にはならないようだった。
顔がないせいでメッチャ不気味なんだが、こいつがマジで危険なのである。どうやらクリティカル率が高いらしく、可愛らしい玩具のような矢で死にかけることがあるのだ。
超長距離からのクリティカルアロー。殺意高過ぎなのである。
というか、キャロが一度死んで蘇生した。紙耐久なのでリックの木の実で倒せるのがせめてもの救いだろう。
そうして苦戦をしつつも、俺たちは丘陵地帯を抜けることに成功した。目の前に姿を現すのは、青緑色の森だ。
特殊な樹木が生えた森であるらしい。そして、その森の奥には明らかな人工物が顔を覗かせている。間違いなく、町に近い規模の集落があるだろう。
「新エリアだ。気合入れ直すぞ!」
「スネ!」
「キキュー!」
揃って小さい拳を突き上げるリックとスネコスリ。やっぱ君ら仲いいね?




