849話 報酬選び
早耳猫の目録を皆で見ていると、オルトが何やら発見したらしい。他の子たちも興奮しているので、皆で使えるものか?
「ムッムー!」
「えーっと、何々? 設置型のオブジェクトか。職業専用モノリス設置権? いや、なんだこれ?」
モノリス? 説明を読んでも、「職業に様々な恩恵がもたらされる、神秘のモノリス」という説明しか書かれていない。こういう不親切なアイテムやスキルは強力なことが多いのは分かっているんだが……。
「値段ヤバイんだが。2億って……」
目録に掲載されているアイテムの中でも、断トツに高い。なんせ、億越えのアイテムはこれだけなのだ。
その下は7000万で、レア度8のメチャクチャ強い鞭である。鞭って使っている人が少ないから、売れ残っているのだろう。攻撃力が600とか、バグってるとしか思えん。攻撃するたびにHPが消費されるようだから、その分強くなっているようだった。
その鞭の約三倍だ。つまり、それだけ貴重で強力ってことか?
「お、お前ら。これは高すぎるんじゃないか? 他に欲しい物ないのか? というか、これゲットするなら、もう他のものは交換できないぞ? 俺だってほしいものあるんだからな?」
「ムム!」
「ヤー!」
周りにいるモンスたちがコクコクと頷いている。なんと、全員これがいいらしい。
「えー……。本当に?」
「ム」
「キキュ」
マジらしい。アリッサさんに効果を聞いてからにするか? さすがにこれは……。
「ムムー!」
「トリ!」
「せ、急かすなって! というか左右から揺するな! 変なの押しちゃうって!」
はやくモノリスを交換しろと言っているようだ。これが自由度上昇の効果なのか?
まあ、アリッサさんに情報を聞いたところで、これだけモンスが欲しがってるんならどうせ交換するし、もうポチッちゃおうかな。
どんな効果があるのかは、設置してからのお楽しみって思えばいいや。
「俺はどれにしようかなー」
「クマ?」
「ニュー?」
「いや、お前らが選ぶ分はモノリスになったんだから、もうダメだぞ?」
「ラ!」
「――」
どうやら、俺が何を選ぶか気になるらしい。誰もこの場を離れない。相変わらずギュウギュウのままだ。
「……別にいいけど」
モンスたちに画面を覗き込まれながら、俺は目録を漁った。やっぱ、テイマー系のアイテムか、スキルスクロールがいいよな。
「……」
「……」
モンスの視線、メッチャ気になる! 静かにしてるんだけど、すんごい急かされてる気がする!
「た、楽しいか?」
「ム!」
楽しいらしい。
もう、さっさと決めてしまおう。そう思いながらリストを見ていくと、非常によいアイテムを発見した。
「四季の牧場! テイマー用のホーム拡張アイテム! これすんごいぞ!」
名前の通り、四季が毎日移り変わる牧場であるらしい。配置できる樹木や草花、水飲み場の形状などを変更可能で、それだけでも楽しそうだ。
しかし、もっと実用的な効果がある。従魔たちの好感度上昇にボーナスが入るのだ。うちの子とさらに仲良くなれるってことである。それだけでも素晴らしいが、さらにさらに凄い効果があった。
なんと、テイム可能従魔数+2という効果なのだ。エリートテイマーのデメリットを僅かながら緩和できる素敵牧場なのである。
「5000万はかなり高いけど、これはぜひゲットしておくべきだろう」
「ムム!」
モンスたちも賛成であるらしい。あと気になったのが、書籍類ね。この世界の文字で書かれた、神話や物語がかかれた本である。暇なときに少し読むだけで筆写や解読スキルのレベリングになるので、結構役に立つのだ。
読むだけで文字や絵を描くための筆写が上がるのは、勉強になっているという設定なんだろう。武術系のスキルで発生する、見とり稽古と同じようなものだ。
因みに、この世界で読める本には3種類ある。1つが、このゲーム世界の文字で書かれた書籍。NPCの作家さんが書いた流行りの小説から、古代語の古文書まで、色々とある。
後は、プレイヤーがこの世界で作った本。同人誌的なものや、ソーヤ君が作る魔本まで、様々な本があった。同人誌なんかは日本語で書かれているんだが、それでも読めば筆写や解読スキルが上がるので俺は暇なときにちょくちょく目を通している。
最後が、出版社や作家さんと提携していることで提供される、リアルの書籍データ。現実では本を読む時間がない人が、ゲーム内で読んでいるらしい。のんびりイベントの読書会などで読むのも、この類である。小説だけではなく、漫画やイラスト集、ハウツー本、ビジネス書など多岐にわたるらしい。
そして、どの本でも解読などのスキルのレベリングになるのだ。面白いのは、小説の場合は、筆写や解読などの、執筆系、読書系のスキルだけが上昇する。しかし、漫画の場合はそれに加えて、描画系のスキルのレベリングにもなるらしい。まあ、その分、各スキルへの経験値が分散するようだが。
ゲーム内でマンガ読むだけでスキルが上がるのはいいよな。意外と描画系スキルのレベルが高い人も多いかもしれないのだ。
「ムム!」
「キキュ!」
「おわっ。分かったよ! もう選んじゃうから、ちょっと待てって!」
なんかよく分からないモノリスと、四季の牧場、適当に選んだ書籍数冊に、種苗類詰め合わせをアリッサさんに送っておく。全く、もう少しゆっくり選ばせてくれてもいいのに。
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