表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
851/874

846話 アリッサの帰還

「あ、アリッサさん。ようやく戻ってきた」

「ご、ごめんなさい。落ち着くためにハーブティー飲んで休憩してたら思った以上に時間経っちゃった。人生で初めて本当の現実逃避ってやつを体験した。ハーブティーって本当に心が落ちつくのね。今後は常備するわ」

「え?」

「ああ、いえ。なんでもないの。本当にごめんなさい」


 アリッサさんが戻ってきたのは、実に40分後のことだった。現実だと10分くらいの計算だ。まあ、そう考えるとさほど長くはないけどさ。


 頭を深々と下げるアリッサさんに、文句は言いづらい。その間に畑仕事したり、新素材で実験をしてたらあっという間に時間過ぎたしね。


 バイタル異常のうえにちょっと休憩って、体調悪いんじゃないか? 風邪とかの時にゲームやると、悪化しちゃうぞ?


「……えーっと、新大陸の情報に関しては、後日の方がいいでしょうか?」

「……え? そ、そうよね。新大陸に辿り着いたところまでしか聞いてなかったもんね。大丈夫。だいじょうぶよ。だから、聞かせてくれるかしら?」

「は、はあ。本当に大丈夫なんですね?」

「大丈夫よ!」

「まあ、残りは大した情報でもないんで。じゃあ――」


 銀の大陸に上陸してからの情報だけだから、あまり多くないのだ。銀の大陸の出現モンスターの情報と、ゲットした地図の現物を見せるくらいである。


「こんなもんで――」

「うみゃああぁぁぁ! 全然大した情報なんだけどぉぉ!!」


 おー、きたきた。これだよ! これ! 今回はなしだと思ったけど、聞けました! むしろ、この雄たけびを聞かせてくれるために、残りの情報聞いてくれたんじゃなかろうか? さすがアリッサさん! 分かってる!


「……と、取り乱したわ。ごめんなさい」

「いえいえ~」

「な、なんで笑ってるの? な、なんでか寒気がするんだけど……。まあ、いいわ。支払いなんだけど……。また分割でいいかしら? というか、分割でお願いします!」


 アリッサさんが、色々と内訳を教えてくれた。思ってたより、売った情報多かったな。


 しかも、今回は新大陸とか、未発見のジョブの情報とか、チェーンクエストの情報なんかが入っていたのだ。これは俺でも高く売れるのが分かるのである。


 まさか3億超えるとは思わなかったが。


 特にヤバいのが新大陸関連の情報で、これが諸々で2億だってさ。次に高いのがエリートテイマーなどの、新ジョブの情報だ。テイマーなら誰でも欲しがるだろうしな。


 チェンクエは意外に安かった。12星座のチェーンクエスト自体、進めている人が多くないせいだ。情報の価値は、求めている人の数で決まるってことなんだろう。


 逆に想定よりも高かったのが、ミミックの情報である。これは他の場所でも出現する可能性があるので、情報料が跳ね上がったらしい。


「支払いは目録っすかね?」

「話が早くて助かるわね。ええ、ぜひそうして欲しいわ」


 まあ、情報売るのなんて、それ目当てみたいなところもあるからね。早耳猫の収集品って面白いし。あと、アリッサさんのロールプレイね。


「とりあえず、私は帰るわ。メールとコールがヤバいし……纏めて、検証して、場合によっては未検証で……あぁぁ、時間が……」


 ホームから畑へと戻る途中、アリッサさんがハイライトの消えた目で何やら呟いている。


「あっと、ごめんなさい。それじゃ」

「は、はい」


 まだ体調悪いんだろうか? 顔色悪かったな。いや、ゲームの中だから、現実の顔色が反映されるわけじゃないだろうけど。なんか、そんな雰囲気?


 フラフラと左右に揺れながら去っていくアリッサさんを見送った俺は、ホームへと戻って早速目録を確認することにした。


 今日は月が綺麗なので、縁側で月見としゃれ込もうかね。寄ってきたリリスとアコラ、いつの間にか頭の上に乗っていたメルムと一緒に転移扉へ向かって歩く。


「デビ!」

「はいはい、ホームに戻ってから――」


 ウオオォォォォォォ!


「うわっ!」

「ニュニュ!」

「ラ?」


 外からすんごい歓声が聞こえた。ちょっと前から外部音が軽減される閑静モードなので、ここまで聞こえるのはかなり大きな音だけのはずだ。


 何かあったのか? イベント? まあ、イベントが起きるんだったらアナウンスあるだろうし、それを待てばいいか。


「デービー!」

「わかったわかった。今行くよ」

「ラー!」


 リリスたちがグイグイと俺を引っ張る。早く目録を見たいらしい。こいつら、絶対に自分が欲しい物を交換するつもりだよな?


 まあ、モンスたちが喜ぶんならそれでいいんだけどさ。リリスたちだけ交換したら絶対怒られるし、全員呼んどいた方がいいかな?


「ムムー!」

「フマー!」

「ヒヒーン!」


 おっと、呼ばずとも集まってきたね。リリスたちが呼んでいたのか?


「ちょ、遮ってる遮ってる! 俺も見たいんだから、ちょっと待ちなさい!」

「クマー」

「キュー」

「ヤー」


 いや、画面が見えればいいってわけじゃないのよ? 両肩にはリックとファウ。頭の上にはメルム。背中にはアコラが張り付き、左右はオルトとオレア。その周囲は他のモンスたちで固められている。


 もうね、身動き一つとれんのよ。満員電車の比ではない。


「フマー?」

「――?」

「ヒム?」


 モンスたちが早く選ばないのかと急かす声が、四方八方から聞こえる。分かったよ! 俺の分はパパッと選んじゃうから、もうちょっと待ちなさい!


「えーっと、どれにしようかな――」


次回は7/11更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
次がない!寝不足解消しますが楽しみが、、、 続き楽しみにしてます!
追いついてしまったorz
うみゃああぁぁぁ!いただきました! やっぱりこれがないとね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ