836話 エリート
変なミミックとの戦いで経験値超加薬を使用した結果、なんかレベルが爆上がってしまった。薬の適用が俺だけなのが残念だね。モンスたちは普通にレベルアップしただけだった。
特にヤバいのが職業レベルだ。現在実にLv49。あと1つ上げれば、スキルを得るだろう。
キャプテンテイマーの職業スキルは、初期スキルが『編成従魔+2』。Lv10で、戦闘時の従魔のステータスが僅かに上昇する『戦闘指揮』。Lv20で従魔の敏捷度が上昇する『素早い足』。Lv30で、戦闘時に従魔の意志力に補正が入る『士気大高揚』。Lv40で従魔からの好感度に補正が入る『従魔友愛』となっている。
増えた従魔と、連携しやすくなるスキルが多いイメージかな? 50だとどんなスキルを覚えるか楽しみだ。
それに、4次職へと転職もできる。そのためには秘伝書が必要だが。
特殊職を目指さないのであればレベル上げだけで問題ない3次職までと違って、4次職になるには必ず秘伝書が必要となるのである。
「この後ここでレベリングすれば、すぐ上がるか? だとすると、秘伝書をゲットしておきたいが……」
入手手段はいくつかある。ひとつが、のんびりポイント、わんぱくポイントでの交換。元々は、秘伝書目当てでポイントを溜めていたのである。
まだポイントは使っておらず、どちらも交換は可能だ。
2つ目はコレクターの買取所でのポイント交換。以前はラインナップに並んでいなかったんだが、最近はいくつかの種類が確認されているらしい。
メチャクチャお高いらしいけど、色々なアイテムを売りまくってポイントを貯めればなんとか交換できるだろう。
3つ目が獣魔ギルド。ギルドランクが一定になれば、一番基本的な秘伝書が売られるようになるらしい。ギルドランクが足りていないが、これも頑張ればすぐ達成できると思う。
で、最後の手段が、さっきもらったアイテムボックスだ。あれの交換ラインナップの中に秘伝書がいくつかあったので、それでゲットしてしまうのが一番手っ取り早いのである。ダンジョンの外へと戻らなくて済むしね。
「うーん、とりあえずセーフティエリアに戻ってアイテムボックスの秘伝書をチェックしよう」
その中にピンとくるものがなかったら、交換所に行かないとダメかな。のんびりテイマーもちょっと悪くないと思ってたんだが、ただでさえ雑魚の俺がさらに戦闘から遠ざかりかねない。
やはり、それは最後の手段だろう。
そそくさとセーフティエリアに戻るとモンスたちに採取をお願いして、俺は改めてウィンドウを開いた。レベルアップに気を取られ過ぎて、ドロップなどを全然チェックしていなかったのだ。
「えーっと、空宝珠?」
いきなり凄そうなアイテム出たな。
名称:空宝珠
レア度:8 品質:★10
効果:時空の力を秘めた宝珠。
炎宝珠などの時空属性版であるらしい。ただ、レア度が2つも高いし、どう考えてもレアドロップだろう。
さらに、ハイミミックの牙や、ハイミミックの魔石などが入手できている。ハイミミックときたか。普通のミミックじゃなくて、上位種だったってことだろう。
落ちたアイテムが時空属性ってことは、ミミック・SのSはスペースとかストップの意味かね? 鳴き声が「シュギョオオォ!」だったから、修行のSかと思ってたんだけど。いや、ダブルミーニングの可能性もあるか?
とりあえず、シルバーのSではなかったのだろう。
「あとは金が凄いな」
なんと120万Gだ。経験値から比べると驚きは少ないが、普通に考えたら1体倒して120万は多過ぎる。
「ム?」
「おっと、すまんすまん。秘伝書だったな。えーっと、交換可能なのは4種類か」
「キキュ?」
「どれがいいかねー」
「ラー」
モンスたちに見守られながら、秘伝書を確認していく。一番上にあるのが、『スモールテイマー』。なんと、小型のモンスしかテイムできなくなり、その分モンスの能力が強化される転職先である。
うちは大型の子はいないが、ドリモやクママは中型以上に分類される。恩恵がない子が出てしまうのは微妙だろう。
2番目に掲載されているのが『ラージテイマー』。スモールの逆だな。これもスキルを使いこなすのは中々難しそうだ。そもそもこの職業、ここみたいな狭い戦場で戦えるか?
3つ目は『エリートテイマー』。なんと、使役可能モンスターの数が半減する代わりに、従魔のステータスが上昇するらしい。
テイマーの強みを捨てるような気もするが、その分仲間が強くなるならアリかもしれない。
で、最後は『コープステイマー』。これはエリートテイマーの逆だ。使役数が増える代わりに、モンス個々のステータスが減少してしまうのである。
色々なモンスを入れ替えて戦う能力が増すってところだな。
どれも一長一短がある感じだ。確か、正当な転職先はハイランクテイマーだったはずである。突出した部分はないものの、全ての能力が万遍なく上昇するって話だった。
ギルドまで戻って、ランク上げするか? いや、この4種類は聞いたことがないし、多分レアな転職先だろう。
それを諦めるのは勿体ない気も……。
「ふむ? 考えてみると、エリートテイマーは悪くないか?」
現状、俺が使役できるモンスターは最大で30体。これが半減すると15体で、うちのモンスたちの数ピッタリだ。
暫く新しい子をテイムできなくなるが、現状で不足は感じていない。だったら、今いる子たちが強くなるのはアリじゃないか?
「なあ、みんなどう思う?」
「――?」
「トリ?」
うむ、さすがに秘伝書のことについては分からないらしい。だったら、俺が好きに選んでしまっていいだろう。
「よし! エリートテイマーの秘伝書をゲットするぞ!」
これで、次のレベルアップで転職できるのだ!
エリートテイマー! 自分のことじゃなかったらいけ好かない単語だが、自分がなれるんだったらいい響きだ! なんせエリートだもんね! まあ、この職業の場合、エリートなのはモンスたちなんだけど!
コミカライズ最新話が更新されています。
今回もモンスたちが超可愛いですよ! 私もリックの腹吸いたい。




