833話 天望樹の実のミックスジュース
プライベートエリアでしばしくつろいだ後、天望樹のセーフティエリアへと戻ってきた。採取とかがまだ途中だったからね。
リックたちとともに、採取を行う。実は、ちょっと期待していたことがあるんだが――。
「やった! ゲットしたぞ!」
「キキュー!」
「――♪」
名称:天望樹の実
レア度:8 品質:★6
効果:使用者の空腹を40%回復させる。使用者に30分間、浮遊を与える。
天望樹の実、ゲットだ! 北の島でも、セーフティエリアにある採取ポイントで永久氷河を手に入れたのだ。今回もちょっと期待していたのである。
「しかも、2つも手に入れちゃったじゃん」
「キュ!」
「――!」
リックとサクラも喜んでくれているな。まあ、2つあったら1つは食べて、1つは苗木にできるからだろう。どちらの願望も叶えられるってわけだ。
「あ、でも待てよ。ここで攻略必須級のアイテムが手に入ったということは……!」
北の島では、このちょっと後に氷獄熊に襲われることになった。滞在時間が一定を過ぎると、戦闘に入るのだと思われた。
つまり、ここも危険? こんな狭い場所でボス戦になったら、メッチャヤバいんだけど……。
「とりあえず、もう1度別荘に戻るぞ! そっからホームへ帰って、あっちで調理する!」
「キュー!」
「ちょ、焦るなって! 天望樹の実は逃げないから!」
「キューキュ!」
リックが俺の髪の毛をグイグイと引っ張って急かす。というか涎! 俺の頭の上で涎垂らしただろ! ちょっと冷たいし! この食いしん坊め!
これ以上ベチャベチャにされてはたまらないので、早々にプライベートエリアに向かった。そこからホームへと転移し、地下の工房で天望樹の実を取り出し、改めて調理方法を思案する。
「アリエス爺さんのところで飲ませてもらったジュースがいいか? ミキサーで潰せばいいだけだしな」
かき氷の時は、北の島で採れた他の素材も使ったよな……。となると、今回は『天望苔・古株』、『天望ブドウ・種なし』、『天望樹の新芽』あたりが使えそうかな?
天望苔はちょっと苦みがあるが、そこまで強い味はないらしい。緑色が鮮やかだから色付けにはいいだろう。
天望ブドウは、普通にブドウだ。色も形もサイズも、デラウェアにそっくりである。鳥の糞から発芽したブドウが、天望樹の枝に絡みついて勝手に育った的な設定なのだろう。道中でそれなりの数が採取できた。
今回はその中でも、『天望ブドウ・種なし』ってやつを使おうと思う。レア度が普通の物より高いし、ジュースにするなら種がない方がいいだろう。
で、天望樹の新芽は、その名の通り直径5センチくらいの可愛い葉っぱだ。柔らかく、良い香りがするのだ。摂取者に防風を与える効果があるうえ、乾燥させるとこの柑橘類に似た香りが強まるらしい。
アリエス爺さんに教えてもらった天望樹の実のジュースのレシピにも、これが混ぜられていたのだ。
「フムー?」
「ヤー?」
「お、2人とも良いところに来たな。料理を手伝ってくれ!」
俺が戻ってきたことを察したのか、ルフレとファウが地下にやってきた。ちょうどいいから、2人に手伝ってもらおうかな。
スキルを駆使して素材を最適な状態に加工し、天望樹の実を砕き、ミキサーで混ぜ合わせていく。最後にキンキンに冷やせば、完成だ。
思ったよりもサラサラな薄緑色の液体をコップに注ぐと、ゲームの中とは思えないいい匂いが漂ってきた。
「できた!」
「フム!」
「ヤー!」
名称:天望樹の実のミックスジュース
レア度:8 品質:★6
効果:満腹度を35%回復させる。使用者に1時間、浮遊、防風、毒耐性・大、樹の民を付与する。
完成だ! しかも、アリエス爺さんに貰った奴よりも効果が高いぞ! 色々混ぜたことで、ミックスジュース扱いになったようだ。満腹度も制限時間もアップしたし、毒耐性も付いた。味見もしてみたいところだが、みんな揃ってからの方がいいよな。
「せっかくだから、景色のいいところで頂くかね」
俺はファウたちと共に、新しく手に入れた別荘へと転移する。ここならうちのモンス全員集まれるし、すぐに探索にも戻れるからね。
前回、かき氷を誰が食べたかでモンスたちがちょっと揉めたし、今回は食べられる子全員に食べてもらおうと思う。ジュースだったらサクラたちも飲めるしね。
「みんなー、探索再開前に一服しようぜー」
「キッキュー!」
「ムムー!」
「クマー」
モンスたちは大喜びだが、特にリックの喜びようが凄い。狂喜乱舞ってこういうこと? 俺の頭の上で踊っている。まあ、頭上だから見えないけど。
明らかにダンスでもしてる足さばきってことは、ペシンペシン具合で分かるのだ。
「じゃ、いただきまーす」
「キキュー」
「ゴキュゴキュ――うっまー! メッチャうまいな!」
「キッキューッ!」
非常に濃いブドウジュースのような味だ。その中に、ナッツみたいな甘みと香ばしさも感じる。香りは柑橘に近いかな?
リアルではあまり飲んだ記憶がない風味であるが、とにかく美味い! リックのダンスが激しさを増したのも仕方ないだろう。
「オルト、この天望樹の実、植えられるか?」
「ム!」
「おー! それじゃ、頼んだぞ」
「ムム!」
「トリー!」
「――!」
オルトに天望樹の実を手渡すと、にこりと笑ってサムズアップだ。問題ないってことなんだろう。
オレアとサクラも大喜びで万歳している。特別な樹木は育つのに時間がかかるけど、いずれ実が採れるようになるのが楽しみだ。




