830話 第三陣参戦!
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チェーンクエストを攻略した翌日。早速exスキルを試してやるぜ! そう思っていたんだけど、香辛料栽培exも花木栽培exも即座に効果が出るモノじゃなかったのだ。
次に植えた香辛料や花が育つまでは、楽しみに待つしかないだろう。
「よし、そろそろいくか!」
「キュ?」
日課をこなしてやってきたのは、始まりの町の広場だ。隅に立って、中央を見つめる。
「うんうん。新人さんは元気だねぇ」
「キュ?」
「第3陣のプレイヤーさんたちだよ。また賑やかになるぞ」
「キュ!」
第4陣以降は人数制限がなくなるらしいが、今回はまだサーバー負荷の軽減目的で国内販売数は限定されたままだ。
今日はその第3陣の初ログイン日なのである。初期装備に身を包んだ、希望に目をキラキラさせたプレイヤーが次々と転移してくるのだ。
「……初期装備いないな?」
「ヒム」
第3陣は色々とボーナスが与えられているはずだけど、最初から少しいい装備を貰えるようだった。第一陣もポイントを消費して強い装備をゲットできたが、それを選択しないプレイヤーだって多かったのだ。
それが、第3陣だと初期装備の人が0だ。多分、最低でも鉄か狼革装備が貰えるのだろう。その2種類ばかりなのである。
俺以外にもたくさんの先輩プレイヤーたちが、広場にやってきていた。クランやパーティの勧誘だろう。
俺みたいに何の目的もなく、先輩面して悦に浸ろうという者は少ないはずだ。いや、新人テイマーさんをチェックするって言う目的もあるんだよ?
初期モンスの種類が増えているらしく、中にはレアな種がいるかもしれないと思ったのだ。実際、精霊系のモンスはそこそこいる。
ノーム、シルフ、ウンディーネ、サラマンダーは数人ずつ見つけた。さらに、空飛ぶ黒いスライム――じゃなくて闇の精霊までいたのである。
メルムって、現状レアな種族だったはずだが、運営頑張ったな。まあ、レアなだけでチートってわけじゃないから、バランス崩れる訳じゃないけど。
「ぜひ頑張って、相棒と共にこの世界を駆け抜けてくれ!」
「キュ?」
「……せ、先輩風吹かせにきてるんだから、ちょっといい感じのモノローグを呟くくらい、いいだろ!」
そんな「何言ってやがるんだこいつ」って目で見ないで!
ヤバい、頭を抱えて蹲ったせいで、超見られてる! でも、それだけじゃないっぽいんだよね。頭抱える前から注目されていたし。
新エリアを発見したりもしたから俺のこと知っているプレイヤーもいると思うけど、新人さんにガン見されるほどか? そう思っていたけど、俺は第3陣さん用のイベントで、何故か現在1位だったことを思い出した。
まあ、それも新エリアのお陰なんだが。北の島の動画がすごい再生数だった。あれ、新人さん云々じゃなくて、北の島の攻略動画として普通に見られてるっぽいんだよね。
そのせいで、再生数が1位なのである。ちょっとずるした気もするが、運営さんから注意されていないし、プレイヤーさんから文句言われたこともないからオッケーなんだろう。
「さて、そろそろいくか」
「キュ!」
リックが、「賛成!」といった感じで肩に降りてくる。新人さんたちを見ているだけだったし、飽きていたんだろう。
その足で転移して向かった先は、天望樹50階の南側のある場所だ。
重なり合う枝を伝わねば届かない、入り組んだ道の先である。
アリエス爺さん曰く、信用できない相手には教えてはいけないことになっているらしい。フラグを立てないと、見つけられないようになっているんだろう。先にチェーンクエストを攻略できてよかったな。
瘴気の魔石が落ちてきたダンジョンへと向かうための、種子発着場だった。
「みんな、乗り込めー」
「ムー」
発着場に種子を置いて、皆で搭乗する。そしてウィンドウを立ち上げると、移動可能な先が1つしか表示されなかった。
その名も『天望樹上層』である。そっけないにもほどがある名前だが、間違いなくここが上にあるというダンジョンだろう。
移動先をポチっと押すと、種子がフワーッと浮かび、上昇を続ける。
「おおおぉお!」
「ラー!」
巨大な枝葉の間をすり抜けるように上っていく種子からの景色は、凄まじい迫力があった。グイングインと急旋回を繰り返しながら上る天望樹の種子は、ちょっとしたアトラクションのようだったのだ。
「いやー、スリルあったな!」
「デビー!」
「キキュー!」
アコラもリリスもリックも大興奮である。お子様たちにとっては相当面白かったらしい。いや、俺も面白かったけどさ。
「で、ここはもうダンジョンなのか?」
表示は上層となっているが……。マップが切り替わったようだし、すでにダンジョンと思っておいた方がいいだろう。
「みんな、油断するなよ」
「ムムー!」
「――!」
「トリ!」
「ヒム!」
俺の言葉にオルトとサクラが先頭に移動した。オレアとヒムカは、自主的に殿だ。もう、俺が指示しなくても、探索時の隊列や役割が分かっているんだろう。
小回りが利くリックやリリスが遊撃で、アコラは俺に引っ付いて回復に専念。それも分かった陣形である。頼もしいったらないな!
「さて、緑の達人がどこまで力を発揮してくれるかね? リック、天望樹の実探し一緒に頑張ろうな」
「キキュ!」
天望樹の実は相当美味しかったし、リックの気合も凄まじい。あれが自分たちの庭で収穫できるようになったら、たらふく食えるもんな。
果肉はフルーツ系で、種がナッツ系の二度おいしい系の実らしい。ナッツ狂いのリックが、食いつかないわけがないのだ。
「じゃ、いくか!」
「ララー!」
肩車状態のアコラが、ビシッと前方を指さした。指揮官気分であるらしい。
アコラ探検隊、出発!




