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826話 大連続クエスト

 俺が祭壇への捧げものを終えると、キャシーさんが杖を構えながらその前に立った。


「清廉なる樹々の精霊たちよ。その大いなる力を以って、理の歪みを正したまえ。魔を祓い、自然の息吹を取り戻したまえ。どうかこの地に、浄化の祝福を!」


 天を衝くように杖を掲げ、朗々と呪文のようなものを紡ぎ出すキャシーさん。その姿はまさに善い魔女って感じだ。樹木医って言ってたけど、呪術師の方が似合ってない? ドルイド的なことなのかね?


 彼女の杖を中心に青い光が放たれ、周囲を柔らかく包み込む。ファンタジー過ぎて震えるね!


「トリ!」

「――!」


 オレアとサクラが大興奮だ。俺みたいに、神秘的な光景に震えているわけじゃないだろう。手をブンブン上下に振りながら、上を見上げているのだ。


 俺もそっちを見たんだが、何もない。2人は何を感じているんだ? 天望樹の精霊的なものがいるのか?


「あ?」

「トリリー!」

「――!」


 俺が首を捻っていると、何かが上から降ってきた! いや、何かというか、男の人だ。緑色の髪に、トーガ風の衣装を身に着けた、線の細い優男である。


 しかも、スケスケだ。服が? 違う、全身が幽霊のように透けているのだ。ただのイケメンNPCじゃない。


「汝の願い、聞き届けた。捧げられた魔力を用いて、瘴気を祓おう」

「お願いします。天望樹の精霊様」


 本当に天望樹の精霊だったぁぁぁ! これだけの巨樹なんだし、いるかもとは思ってたけど!


 樹精コンビが騒ぐのも分かるのだ。


「はああぁぁぁぁ!」

「――♪」

「トリ!」


 宙に浮かぶ精霊様が、眼下の瘴気の魔石に向かって手をかざした。樹精コンビのテンションが上がり過ぎて、ちょっと心配になるレベルだ。すると、今までとは比べ物にならないほどの強い青光が放たれ、魔石を包み込む。


 数秒ほど光の放出が続いたかと思うと、魔石がギシッという音を立てた。その表面にひびが入り始めたではないか。


 破壊不可能と言われていた魔石に、ダメージが入ってるぞ! 効果は抜群だ! まあ、俺たちにも効果抜群だったけど!


「ひ、久しぶりにやられたな」

「ラー! ララー!」

「ア、アコラ、大丈夫か?」

「ラーラララー!」


 強い光による久々の目つぶしを食らったのである。咄嗟に目を瞑ったけど、結構ギリギリだったんじゃない?


 それに、間に合わなかった子もいるし。アコラは対閃光防御の経験がほとんどないからね。まともに光を見てしまったらしい。


 さっきまで俺の足にしがみついていたはずなのに、今は目を押さえて地面をゴロゴロと転がっている。


 仲間になったうちの子たちにとって通過儀礼みたいなもんだよね。みんな、一度は目つぶしを食らって悶絶するのだ。


 慣れれば他の子たちみたいに、光りそうだなと思ったら即座に目を瞑れるようになるからな。


「ほら、掴まれ」

「ラー……」


 アコラを助け起こしてやっていると、パリーンという硬い物が砕ける音が聞こえた。瘴気の魔石が砕けたのだ。


「おお、美しいのう!」

「精霊様、ありがとうございます」

「うむ。これからも励むがよい。さらばだ」


 あ! 精霊様帰っちゃった! 話聞きたかったんだけど! あっさり戻り過ぎですよ!


「トリー」

「――」


 オレアとサクラは笑顔で手を振っている。2人が満足したようでよかった。


 砕け散った瘴気の魔石の欠片も、いつの間にか消滅している。残っているのは祭壇だけだ。これで、浄化の儀式は成功したのか?


「旅人さん、ありがとう。おかげで畑を取り戻すことができた」

「精霊様も喜んでいたわ。ありがとう」


 深々と頭を下げてお礼を言ってくれる、アリエスとキャシーの夫婦。やはりこれで儀式成功らしい。


「いえ、俺もいい物見せてもらったので」

「トリ!」

「――♪」


 実際、オレアとサクラはずっと喜びっぱなしだったから、素材大放出くらい安いもの――ではないけど、後悔はしてないのだ。


「今後、いつでもきてくれていいからのう。野菜もサービスするからな」

「私も樹木に関するお薬を色々と扱っているので、興味があったら見に来てくださいね」

「必ずまた来ます」


 アリエスとキャシーは、畑の様子を確認すると言って何度も頭を下げながら去っていった。これで少し時間が経てば、ここで色々な買い物ができるようになるんだろう。きっと特別なアイテムが一杯だぞ! 楽しみだ!


「さて、天望樹はもっと上にいけるらしいから――」


 ピッポーン。


『大連続クエストが初めて攻略されました。ユートさんに『最初の大連続初攻略』の称号が授与されます』

『大連続クエスト・12星座が初めて攻略されました。ユートさんには『最初の12星座の友』の称号が授与されます』


 おお! 大連続クエストって、このチェーンクエストのことだよな? どうやら、今回のイベントで最後であったようだ。


 普通のチェーンクエストじゃなくて、大連続クエストという名前で特別扱いになっているらしい。


称号:最初の大連続初攻略

効果:300万G、ボーナスポイント12点獲得。アイテムボックス1つ、ハイレアランダムアイテムボックス1つ授与。


称号:最初の12星座の友

効果:一部のNPCからの好感度に大幅ボーナス。ボーナスポイント7点獲得。特殊スキルスクロール1つ授与。


 お金はいいとして、ボーナスポイントがあわせて19? ヤバいな! しかも、ハイレアアイテムボックスに、特殊スキルスクロールもゲットしちゃったんだけど!


「チェックせねば!」


 ど、どっか! お、落ち着ける場所ないか?


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― 新着の感想 ―
シロガネさんがヤバイと言う称号効果。運営とアリッサさんの悲鳴が三日三晩聞こえそう⋯
過去にいっぱいクエスト攻略しまくってるから、どれがこのクエストにかかるのかわからないや
まーたアリッサさんが死んでおられるぞ!
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