818話 樹海の町
1話飛ばしておりました! 申し訳ありません。
この話の前に、1話追加しております。
エルフの隠れ里で買い物や、神像へのお参り等を済ませた俺たちは、早々に第12エリアに足を踏み入れていた。
エルフ組はもう少し遊んでいたそうだったけど、最終目的地はここじゃないからね。
「そう言えば、ユートさんはエリア解放コンプですよね? 何か称号手に入れましたか?」
「ああ。『旅人』っていう称号ゲットしたぞ」
効果は、NPCの好感度上昇と、ボーナスポイントとお金ゲットだった。ハイウッドたちがゲットしたっていう、最初の旅人とほぼ同じ効果だろう。
一番乗りで貰えるユニーク称号でも、特別に強い効果があるわけじゃないっていうのがこのゲームの特徴だからね。
「しかし、ここからがまた大変そうだなぁ」
「ですねー。並んでる木が全部御神木状態ですよ」
「樹海っていうか、巨木の海って感じ?」
南の第12エリアは、巨大な木が立ち並ぶ荘厳な樹海であった。
そこらに生えている普通のオブジェクトツリーが、ただただデカい。うちの畑に生えている水臨樹程ではないけど、神聖樹とかよりは確実に大きいだろう。
捻じ曲がった樫系の巨木が無限に並んでいる光景は、神秘的で威圧的だ。神獣とか聖獣って呼ばれるような存在が住んでいなきゃおかしいような、そんなフィールドに思えた。
まあ、実際はどうか分からんけどさ。
「探索は後にして、町を目指そうよ!」
「おっと、そうだった。いつまでも見とれてられん」
「ですね! 行きましょうユートさん」
「おう」
いつまでも樹海の威圧感で足を止めてはいられない。俺たちはアミミンさんのパーティを先頭に、巨木の間を抜けて進んでいった。
巨木の中には伐採可能なものがあるらしく、所々伐採ポイントが見えている。まあ、今はスルーだけどな。
溶岩地帯みたいに情報があれば別だが、ここはまだ未知のエリア。どんな敵が出るかも分からないところで、暢気に伐採とかしてられん。
最大限に警戒しながら、樹海の道を進むこと10分。道中での戦闘もなく、俺たちは目的の町へと辿り着いていた。
「うはー」
「すご」
「あはは! すんごいね!」
「やべー」
遠くからでも見えていたからその威容は分かっていたが、改めて目の前にすると凄いな。溜息しか出ないのだ。ソーヤ君もマッツンさんもアミミンさんも、俺と同じ表情である。
俺たちの目の前には、一際巨大な木があった。水臨大樹並みだろう。樹高で言えば、水臨大樹に軍配が上がる。
ただ、幹の太さはこちらが勝つかもしれない。特に、張り巡らされた根の面積は水臨大樹を超えるだろう。
そんな超巨大な木の周囲に、町が作られていた。囲むように――というか、木の幹や枝の上にも無数の建物が張り付いている。それどころか、巨木の幹の割れ目から見える内部にも、建造物が確認できた。
樹上都市というか、巨木都市? 遠目からだと、盆栽を利用したジオラマのようにも見えたのだ。
根の周辺にある町はともかく、樹上の町へ行くのはメチャクチャ大変そうだった。あれ、内部にエレベーターみたいな物とかあるのかね?
「トリー」
「――」
樹精コンビが、口を開けてポカーン状態だ。並んで巨大樹を見上げながら、ホエーッとしている。
そうしていると段々と感動が勝ってきたんだろう。フルフルと震え始め、ついには飛び跳ねて喜び始めた。
「――♪」
「トリリ!」
「――!」
「トリーリー!」
全身を使って興奮を表現した後、左右から俺にしがみ付いてくる。
「――!」
「トリリ!」
「わ、分かったって! 凄いのは俺にも見えてるから! 揺らすなってば!」
アレアレ! アレ見て! と言った感じで巨大樹を指さしながら俺をグワングワン揺する2人。いつもはおしとやかなサクラでさえ、この状態だ。
樹精である2人にとってよほど凄い存在なのかね? 水臨大樹の精霊様に出会った時とはまた違った興奮のように見える。もしかして、好感度的なものが上昇してるのか? だったらいいな。
「トリリ!」
「――!」
「はいはい。分かってる分かってる」
グイグイと俺を引っ張る2人を先頭に、俺たちは歩き出した。
町の入り口にある木造の巨大な門を潜ると、ごく普通の街並みが続いている。
上を見上げたら巨大な樹がドーンと立っているんだけど、そのこと以外は始まりの町とそう変わらないように見えるな。
下町とでも呼べばいいのかね?
まあ、その巨大樹が無視しきれない存在感を放ってるわけだが。その巨大な幹や、町全体を覆い隠すドームのような枝葉だけではなく、家々の間に聳え立っている巨大な壁のような根もまた凄まじい。
そんな巨大な根には、階段や梯子が設置されている。あれを使って、樹の上へと昇れってことか?
まあ、階段も梯子も造りがしっかりしているみたいだし、水臨大樹よりは上りやすそうだ。
「とっとと転移陣登録して、探索にいきたいな! ジェミナたちのお父さんの農園を探したいし。みんなはどうする?」
「僕も一緒に行っていいですか?」
「私たちも探索するつもりなんだけど、ついていっていい?」
「どうせ、ブラブラするだけだしな。だったら、白銀さんたちと一緒の方が楽しそうだ。というか、付いていかせてほしい」
エルフ的には何か探したいものとか、あるんじゃないの? まあ、みんながそれでいいなら構わんけどさ。
本日誤って2話更新しています。




