813話 隠れ里の情報
アミミンさんとマッツンさんという心強い仲間も加わったし、早速フィールドに――とはならない。
早耳猫でマップを買うつもりなのだ。普通じゃ知られていない情報とかもゲットできるかもしれないしね。
冒険者ギルドで情報を集めてくるというアミミンさんたちといったん分かれ、俺たちはエルファンの町の中心に向かう。実はこの町にも、早耳猫の支店があるのだ。
エルファンはエルフの町ってことで、ログハウスとツリーハウスが並ぶ緑豊かな森林都市である。ツリーハウスはNPCの住居で、プレイヤーはログハウスが立ち並んだ区画に家を借りることが可能らしい。
早耳猫の支店は、他の町と違って緑色の芝生が敷き詰められた中央通り沿いにあった。
エリアも進んでどこの店舗も賃料がかなり高いはずだけど、一等地に支店を構えられるなんてかなり儲けてるんだろう。さすが早耳猫。
店舗の中には、何度か見かけたことがある早耳猫の男性プレイヤーさんがいた。ほとんど話したことはないけど、顔は覚えている。
「えええ? し、白銀さん?」
「あ、俺のこと知ってる?」
「し、知らないわけないっすよ! うちの一番の大お得意様じゃないですか!」
ええ? お得意様とか言われると照れるね! まあ、一番はさすがにリップサービスだろうけど。
「う、売りっすか? 買いっすか? いいもん揃えてますぜ? へ、へへ」
言い方がなんか不穏! 売人系のロールプレイヤーってことなの? まあ、情報屋っぽいと言えば情報屋っぽいけど。
「えーっと、買いたい情報があるんだけど」
売れる情報って何かあったっけ?
ソーヤ君と相談して、とりあえず売れそうな情報を羅列していく。ジェミナの植物園の情報や炎海の町の路地裏の店の品揃え、溶岩の川で釣れる魚の種類とかの情報だ。
ソーヤ君は魔司書の性能の検証情報を語っているな。
「こんなもんかな?」
「そうですね」
「……」
「あれ? もしもーし?」
「……」
し、白目剥いとる! アリッサさんの絶叫とはまた違ったアプローチだな!
「あのー?」
「……はっ! 意識飛んでた! 危ない! こ、これが白銀現象! サブマスが壊れるのも分かるわー」
大げさに驚いてブツブツ呟いていた店員さんだったが、何やら悩み始めた。そして、申し訳なさそうに謝ってくる。
情報の価値が高すぎて彼だと判断できないから、アリッサさんに相談したいそうだ。まあ、遅れるお詫びに知りたい情報をタダにしておくって言われたら、了承しちゃうよね。
銀行システムがしっかり実装されて、お金振り込んでもらうのも楽になったし。それで問題ないってのもある。
「じゃあ、隠れ里の情報はあるか?」
「おー、タイムリーっすね!」
「どういうこと?」
「実は――」
ピッポーン!
店員さんが口を開こうとしたその時、彼の言葉を遮って聞き覚えのある音が鳴り響いた。そして、ワールドアナウンスが流れてくる。
《南の樹海の回廊を踏破したプレイヤーが現れました》
これって、今から俺たちが向かおうとしてた場所のことだよな?
「ジャストタイミングでしたね! 今、うちのマスターたちが南の第12エリアに到達したらしいっす! エリアボス倒したってメール来てたんですよ!」
「え? このアナウンス、ハイウッドたちだったの?」
「はい!」
なんと、今日丁度、早耳猫のプレイヤーたちが隠れ里を発見し、さらにその先のエリア解放ボスへと挑んでいたそうだ。そしてたった今、攻略を成し遂げたということらしい。
「へへへ、さすがギルマス……あ」
「うん?」
「なんでもないっす。そ、その、すんません」
誇らしげだったのに、急に謝り始めたぞ。はしゃいでしまってごめんなさいって事?
「ハイウッドたち凄いな! じゃあ、その情報、俺たちに売ってもらえるのか?」
「えーっと、そうっすね……」
「あと、ハイウッドたちって何か称号でも手に入れたのか? 多分、全エリア最速解放報酬みたいなの貰えてるんじゃないか?」
もう称号はたくさんあるけど、第12エリア最速全解放報酬ともなれば、結構有用な称号かもしれない。さすがにちょっと気になるのだ。
「最初の旅人って言うユニーク称号が貰えたみたいです。NPCの好感度補正がかなり高いみたいですねぇ。あとはお金とボーナスポイント5点みたいです」
「あー、そう言う感じか」
好感度補正は実感しづらいんだよね。メチャクチャいい称号ってわけじゃないのか……。
「後は隠れ里の場所と、ボス戦の情報が欲しいんだけど」
「隠れ里への行き方は問題ないっす。ボスの情報は確実ってわけじゃないので、そこは頭に入れておいてほしいっす」
その後、何故か恐縮した感じの店員さんに、知りたい情報をだいたい教えてもらった。
「いやー、ハイウッドたちに感謝だな! おかげで、攻略がかなり楽になりそうだ。お礼言っておいてくれ!」
「い、一番乗りを逃したというのに……。さ、さすが白銀さん……! 大物! これがサスシロ……!」
「うんうん。それでこそユートさんですよね」
ああ、一番乗りを逃したから、ハイウッドたちに怒っているとでも思われたのか? だからなんかペコペコしてたんだな。
そりゃあ多少残念ではあるよ? でも、早い者勝ちのことだし。
それに、これから延々と広いフィールドを探索しなくちゃいけないのかと思って、ちょっとうんざりしていたところだったのだ。そこに完璧な攻略情報だよ? むしろありがたい気持ちの方が大きい。
「ユートさんそろそろ行きましょうか。外、混んできたみたいだし」
「え? あ、まじだ」
早耳猫の外に、すんごい数のプレイヤーが! ワールドアナウンスを聞いて、さっそく情報を仕入れにきたんだろう。
「じゃあ、情報助かったよ」
「はは……毎度」
これからめっちゃ忙しくなるだろうけど、頑張ってくれ!




