794話 久々絶叫
椅子に座らされ、強面の相手から尋問される。映像作品ではよくある光景だが、自分が体験することになるとは思わなかった。
まあ、相手は強面の悪徳警官とかじゃなくて、アリッサさんだけど。顔が怖いっていうのは、同じかな?
「それじゃあ、話を聞かせてもらいましょうか?」
カウンター前の椅子に座った俺のことを、メッチャシリアスな雰囲気のアリッサさんが見つめている。今回は、尋問系ロールプレイってことか?
「話せって言われても、どこから話せばいいものか……」
「全部! 全部よ! どうせ隠したいことなんてないんでしょ? だったら全て話してちょうだい!」
「わ、わかりました」
演技って分かってても気圧されてしまう。さすがアリッサさん、迫真の演技だぜ。
「北の島の情報、絶対に色々あるはずでしょ」
どうやら、すでに俺がアップした北の島の映像も既に見たらしい。
「今回はリアルだったら喉潰れるくらい事前に叫んでるから、もう無様な姿はさらさないわよ!」
ブツブツと呟くアリッサさんを前に、北の島のログを読み返す。すると、色々と忘れてたこととかも思いだせた。
まあ、メインは難破船の話だけど、イベント用に公開した画像外の売れそうな情報が細々とあるな。
「えーっと、それじゃ――」
マグロを買った時のやり取りから始まり、雑貨屋を発見したときの状況、モンスたちのかき氷好物化の所感、北の島の話などを語っていく。
アリッサさんの反応は薄いな。黙って話を聞いている。でも、リアクションがないわけではなかった。
両手をグッと握りしめて腰の辺りで構え、足を軽く開いて腰を落とした状態で話を聞いているのだ。戦闘開始寸前っていうか、今にも「界〇拳10倍だぁぁぁ!」って叫びそうな感じ?
これは、新しいリアクションか? 新し過ぎて、良いのか悪いのかわからんな。でもロールプレイ継続ってことは、喜んでくれてるってことでいいんだよな?
画像を見せながら、説明を続ける。そうして俺が氷獄熊に勝つところまで語り終えると、アリッサさんがようやく声を上げた。
「ぬぅぅぅぅ……ぬなぁぁぁ!」
「うぉ!」
マジで戦闘開始?
「はぁはぁ……叫ばなかった。叫ばなかったわよ!」
確かにいつもみたいに叫んではいないけど、デッカイ声は出ちゃってますよ? これでいいんですか?
「今回は私の勝ちよバイタルチェッカー! ふははははは!」
まあ、アリッサさんが満足げだからいいか。
「いやー、素晴らしい情報の数々だったわね! さすがユート君!」
「は、はぁ」
晴れやかな笑顔のアリッサさん。何故か迫力凄いけど。
でも、まだ終わりじゃないんです。いや、アリッサさんも分かってるだろうけど。ここで終わりって感じの雰囲気出しておいて、俺の追加情報待ちってことでしょ? 分かってるんですよ!
「特に氷獄熊の戦闘パターンとか、かなりいいわ!」
「そうっすか?」
「ええ! あとあまり目立ってないけど、真珠! あれもいい! 良アイテムの匂いがプンプンよ!」
「いやー、褒めてもらえて嬉しいです。でも、まだ終わりじゃなくて」
「は? え?」
「まだ続きがあるんです」
「……嘘でしょ?」
「本当です」
「……え?」
アリッサさん、いい反応だ! もっとすごい話をしなきゃって気にさせてくれるもんな! これが早耳猫が色々な情報を手に入れる秘訣なのかもしれない。
「これなんですが……」
「ふ、船?」
「はい。熊を倒したら情報が出まして。で、こちらが探索した情報なんですが、このスクショ見てください」
「!」
俺が地図のスクショを見せると、アリッサさんがその場でピョンと飛び跳ねた。アニメだったら可愛いSEが入っているだろう。
耳と尻尾が逆立つように天を衝き、目を見開いている。これ以上ないってくらい驚いていると分かるな。
「この地図の下の方に描かれているのが、俺たちが今いる大陸だと思うんです。ということは、この北にあるのが例の白の大陸ってやつじゃないかと」
「し、新大陸……」
「多分、この船って白の大陸から来たんだと思うんですよ。停泊地とかの情報も書き込まれてますし」
地図のスクショを凝視するアリッサさん。
「それと――」
「ま、まだあるのっ?」
「はい。これが、難破船で発見した船の設計図です」
「う――」
これは、もしかして? きたかな? 期待を顔に出さぬように気を付けながら、設計図をアリッサさんの前で広げる。
「これがあれば、船作れるんじゃないですかね? 北海の町には船大工さんとかもいるっぽいですし」
「ぐぬ――」
「動かし方は分からないですけど、船乗りさん集める感じになるんですかね? これも、北海の町のNPCさんに頼めそうな気はします」
「ぬぐうぅぅ――うみゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ! やっぱ出るぅぅぅ!」
きた! きたよ!
いやー、いい絶叫ですな!
これがなきゃ満足できない体になってしまったぜ。
「ああああぁあぁ! どうせこうなるだろうって思ってたけど、やっぱなったぁぁぁぁ!」




