791話 白銀爆弾投下後の運営の場合
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「……とりあえず、北の島っぽい環境のミニチュアフィールド作製決定だな」
「っす」
「途中で社内各所から悲鳴聞こえてたのは、絶対に俺たちのお仲間がいるってことだよな？」
「まあ、社員間でも話題になることありますし。動画チェックしてる人もいるでしょう」
「で、爆弾直撃か」
「そうっす。動画爆弾で絶叫or悲鳴っす」
「ふん。デカい声出せる気力がある時点で、まだまだ余裕あるってことだな」
「白銀さん初心者たちっす」
「俺たちくらいになると、もう叫ぶ余裕もないもんな」
「っす」
「はぁぁ……。部下ラッシュ、俺はもう疲れたよ……」
「誰がブービエ・デ・フランダースですか」
「あ？」
「パトラッシュの犬種っすよ」
「し、知らんかった」
「もう突っ込む気力もないっす」
「お前、目が死んでんぞ？」
「主任こそ、乾いた笑みが消せてないっすよ？」
「途中から変な笑いが止まらなかった」
「人間、絶望すると笑うんすね」
「ただでさえ仕事詰まりまくっているっていうのに……」
「アミミンさんのプレデターテイム動画のせいで、色々と調整中っす」
「テイム可能プレデターがいるって分かれば、検証班がすぐに丸裸にするぞ」
「後半のプレデター大量テイムとか、ゲームバランスが！」
「他にも、妖精の進化動画とかな」
「アミミンさんの2体だけで10種類くらい知られましたね」
「考察も的を射てるしよ」
「まあ、あっちは妖精担当に地獄を見てもらいましょう」
「KTKの動画の方はどうなってる？」
「各町の猫の好感度フラグの調整と、出現率の調整中っす」
「まさか、町中の猫の全居場所と、好物を全てバラされるとは……。さすが猫王」
「猫マスコット10匹集めると、密かに幸運値上昇する仕様もどうするか会議中っす」
「で、今度は白銀さんか。雑貨屋はまだいい。好感度フラグの調整程度だ。慣れてる奴ならすぐ終わる」
「慣れたくなかったっす」
「連絡船やら、ペンギンの紹介やらもいい」
「第三陣向けかどうかはともかく、いいガイドになってるっす。あと、これのお陰でペンギンに関する問い合わせが減ってくれるのはありがたいっすね」
「問題は、北の島がほぼ丸裸にされてしまったことだ。フィールドギミック、ボス熊、真珠、ベリー」
「一番ヤバいのは、もっと後で発見される予定だった海底洞窟の裏ルートがもうバラされちゃったことっす」
「あれは、地上ルートを開拓したプレイヤーたちが満を持して発見する予定だったんだがなぁ」
「まさか、あの位置の海底洞窟をモンスたちが見つけてしまうとは……」
「自由度が高いせいで、自由行動時の活動範囲が広いんだろうな」
「そこの計算が甘かったっすね」
「で、それと同じくらいヤバいのが、例のかき氷だ」
「激ヤバ超レアかき氷っすね」
「普通、現状最高レアのアイテムを、あっさりかき氷にしちまうか？」
「俺なら絶対できないっす。さすが白銀さんす」
「あれも、もっと後に見つかる予定だったんだがなぁ」
「装備品でも薬品でもなく、最初に料理に使われるなんて想定外っすよ！」
「ある程度永久氷河が出回って、ようやっと料理に使われる想定だったのに」
「そもそも、入手確率がメッチャ低いっすからねぇ」
「本来は天気が猛吹雪の場合に、低確率で入手。他の場合は、超々低確率、だったよな？」
「白銀さんは、一発入手したっすけど」
「リアルラックとスキルとモンスの自由度とNPC好感度による幸運値補正が手を組んで、バッチリ仕事しちゃってるんだよなぁ」
「招福でアイテムテーブルが1段上昇&幸運でレアアイテム獲得確率上昇って感じっすね」
「上位陣どころか第2陣でも、あのかき氷があれば氷獄熊倒せちゃうぞ？」
「楽勝っす。ボスのパターンバラされなかったのがせめてもの救いっす。でも、プレイヤーが到達し始めたらすぐバレるっすよ」
「うむ。丸裸だ」
「氷獄熊、下手したら周回が一番楽なボスとかになりかねないっす」
「あのレベルの素材が大量流通とか……」
「第3陣に出回ったら、バランス崩壊まっしぐら的な？」
「ヤベーかなぁ？」
「ヤベーっすね」
「だよなぁ。まだ白銀さん級のかき氷は用意できないだろうが、10分無敵になるだけでもトップ層には十分だぞ？ ああああ！ ヤベー！」
「みんな、あの映像で満足して、北の島目指さないとかなりませんかね？」
「ならん。特殊プライベートエリアもバッチリバラされたし」
「辿り着いただけでゲット可能な庭付きログハウス。そりゃあ、みんな欲しいっすよねぇ」
「あれも、社長が別荘とかあるといいんじゃないって言って実装したんだが……」
「社長ぉぉぉぉ！」
「まあ、いい案だとあの時は思ったんだよ」
「この先へ行くための中継地点にプライベートエリア。確かに悪くはないっすけど……」
「白熊戦の後のアレが映ってなかったのが、不幸中の幸いだな」
「さすがの白銀さんも、自重してくれたんすかね？」
「撮影できてないのに気付かなかっただけだと思うぞ？」
「っすね」
「お前は大急ぎで北の島のミニチュアフィールドの仕様書作れ」
「主任手伝ってくださいよぉ！」
「俺はこれから緊急会議だよ！」
「あ……」
「とりあえず……社長に文句言ってくるわ」
「頼んだっす！ 我々運営一同、応援してるっす！ なんならぶん殴っていいっすよ！ この戦犯がぁぁぁ！ って」
「やらんわ！」
「えー」
「ともかく、いってくる」
「屍は拾うっす」
「おー」
「いってらー」
