786話 白熊さん?
名称:かき氷・スペシャルベリーソース
レア度:8 品質:★6
効果:満腹度を35%回復させる。使用者に1時間、耐寒・大、氷雪無効、雪の民を付与する。
な、なんか、すんごいのできちゃったんじゃないか? 耐寒・大と氷雪無効って……。
それに、雪の民? 聞いたことないな。
調べてみると、掲示板に情報があった。砂の民とか、炎の民といった種類があり、対応地形にいる際にステータスアップ、スキル威力上昇、自然回復強化のバフが乗るらしい。
このかき氷、メッチャ強くない? これ食ったら、この近辺で無敵になれるんじゃ……。
少なくとも、地形ダメージはほぼ無効化できるだろう。氷柱とかも物理ダメージに見えて、実は氷雪属性のダメージっぽいし。
ここでみんなで食ってしまうのが勿体ないほどだ。上手に活用したら、きっと攻略に役立つだろうに……。
「勿体ない! ああ勿体ない! 勿体ない! でもいただきます!」
いまさらモンスたちに、食べるななんて言えんからね!
「外で食うか!」
「フムー!」
「ペペーン!」
ログハウス前の雪の積もった庭に絨毯と炬燵を設置して、温まりながらかき氷を食べる。何とも贅沢だねぇ。
「クックマー!」
「ララー!」
「そうか。美味いか」
「キキュ!」
「ヒヒーン!」
「な、なんか光ってるな! バフが効いてるから?」
「ペペーン!」
「フムー!」
「ニュニュー!」
全員が跳び上がって喜んでいる。永久氷河は勿体なかったけど、モンスたちが喜んでくれるなら削った甲斐があるというものだ。
特にかき氷好物組は、大喜びだな。
「ヤ、ヤヤ……!」
「あー一気にがっつくから」
どうやらファウは頭がキーンとなっているらしい。かき氷好物化には、頭キーンの防止の効果もあるんだろうな。他のモンスたちは普通に食べているのだ。
「ヤー」
「取らないから、ゆっくり食べなさい」
「ムー」
「フマ」
他の子たちはファウの失敗を見て、ゆっくり食べ始めたな。ちゃんと学習してるね!
そんな風にかき氷を作って、食べて、ファウが頭キーンとなって。
30分くらいはかき氷ピクニックとしゃれ込んでいただろうか。モンスたちはすでにかき氷を食べ終わり、庭で遊んでいる。
いやー、このままずっとここでヌクヌクとしていたいなぁ。正直、また吹雪の中に突入するのが億劫なので、何となくダラダラしてしまっているわけだが。
「はぁ、そろそろ行動再開するか」
「ヤヤ!」
モンスたちも飽きて来てるしね。
とりあえず炬燵などを仕舞って、探索を再開することにした。オルトたちに見送られつつ、プライベートエリアから氷塊前へと戻る。
「いやー、近くで見ると改めて綺麗だな」
「ヤー」
プライベートエリアへの転移装置だったわけだし、この島で一番の重要地点はここだろう。
「ここから――」
「――オォ――」
「うん? ファウ、なんか音鳴らした?」
「ヤ?」
なにか聞こえた気がして、肩に乗っているファウに尋ねる。しかし、可愛く首を傾げるだけだ。
「気のせい――」
「ガオオォォォォォ!」
「うわっ?」
聞こえた! やっぱ聞こえたんだけど!
間違いなく、咆哮だ。
「みんな、集まれ!」
「ヤーヤー!」
モンスたちも即座に俺の周りに戻ってきた。今の咆哮を聞いたからだろう。
「クマ」
クママがいつになく真剣な顔だ。新装備の白マントを翻して周辺を睨んでいる。いや、マントを格好良くバッてやりたいだけか?
クママを思わずジト目で見ていると、吹雪の壁がドンという爆音とともに外側から爆ぜた。同時に、何か大きい物が飛び込んでくる。
「グラアアアァァァァ!」
「は?」
まじ? 巨大白熊さんですやん。なんでここに? あんたがいるのは海挟んであっち側のはずでしょうが!
「グルルル!」
半透明の壁が、吹雪の内側をグルッと囲むのが見えた。
ボスフィールド発生したぁぁぁ! 絶対に逃げられないんだけど! 何で? 何でこんなことになったんだぁぁ!
「ええい! もうやるしかない! ファウ、バフを!」
「ヤヤー!」
「クママ! 前衛を頼む!」
「クックマ!」
モンスたちはやる気だが、絶望しかない。レイドボスじゃないかってくらいデカい白熊が、歯をむき出して唸っているのだ。
セーフティエリアがボスフィールドに早変わりとか、罠過ぎるだろうが!
アコラと、盾役のオルトを入れ替えるか? さすがにまだレベル的にこの相手とは戦えないだろうし……。
「ララ!」
「や、やる気だねお前」
「ラ!」
拳を構えて、臨戦態勢だ。とりあえず、やれるところまでやらせるか。
そんなことを考えていたら、白熊に先制攻撃を許していた。
「グオオオォォォオォン!」
「ヤベッ!」
ガパッと大きく開いたその口から、白い吹雪を吐き出しやがったのだ。範囲攻撃なのだろう。逃げる間もなく、俺たち全員を白い絶望の波が包み込む。
いきなり全滅か?
だが、何故か俺たちにはほとんど影響がなかった。冷たいとか感じることもなく、ただそよ風が吹き抜けるような感覚があるだけだ。ダメージもない。
「え?」
「ガウ?」
互いに唖然とした顔で、白熊さんと見つめあっちゃったよ。
「こ、攻撃だ!」
「ララー!」
「キキュー!」
よく分からんが、攻撃のチャンスだ! こうなったら全力で戦ってやらぁ!
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