781話 フロストベリー
「キキュー!」
「ヤヤー!」
「よしよし、よくやってくれたな。助かったぞ!」
「キュ!」
「ヤ!」
断崖の木の採取ポイントから戻ってきたリックとファウは、何故か俺の頭の上で胸を張ってドヤ顔をしている。
褒めろって事? まあいいけど。
とりあえず頭上に手を伸ばして、2人をワシャワシャしてやった。
「キキュー!」
「ヤー!」
キャッキャと笑う2人を構いつつ、ウィンドウを確認する。
インベントリには、フロストベリーの実、フロストベリーの枝、フロストベリーの樹皮という素材が入っている。
なんと、どれもレア度7。スノウサッカーやブラッドオーガの素材と並ぶ高レア度だ。
思いがけず、いい素材ゲットできちゃったな。
ここまでスノウベリーというレア度5の紫の実はいくつも手に入っていたが、フロストベリーは初めてなのだ。
名称:フロストベリー
レア度:7 品質:★8
効果:使用者の空腹を10%回復させる。使用者の氷雪耐性を1時間大きく上昇させる。クーリングタイム5分。
青紫色のフロストベリーは、そのまま食べるだけでも氷雪耐性がゲットできるらしい。効果はスノウベリーと同じだ。
名称:スノウベリー
レア度:5 品質:★9
効果:使用者の空腹を10%回復させる。使用者の氷雪耐性を1時間上昇させる。クーリングタイム5分。
表記はフワッとしているが、フロストベリーの方が効果がかなり高いのだろう。じゃなければ、レア度が2も違わないだろうし。
「フロストベリーは3つあるし、1つは畑で育てよう」
普通に育つか分からないけど、そこはオルトに相談だな。
残りの2つは――。
「キキュ!」
「え? どうしたリック?」
「キュ」
自分に寄こせって? そりゃあ、リックが好きそうな木の実だけど、さすがに独り占めしたら他のモンスたちが怒ると思うぞ?
「食べるなら全員分手に入れるか、なんか分けて食べるやり方じゃないとダメ!」
「キュー!」
「え? 違うの?」
「キキュ!」
俺の頭の上から飛び降りたリックが、なにやらピッチャーの投球練習のようなことをし始める。振り被っては投げ、振り被っては投げ。
ここまでされては、俺も理解できるのだ。
「木実弾で投げたいって事?」
「キュ」
「……いやー、さすがにそれは……」
「キュキュー!」
そんな縋りついて見上げられても! ウルウルした目で見んな! お前が計算してんの、分かってるんだからな!
「キュー?」
「くっ……」
小首傾げるんじゃない! 可愛いなこの野郎! そんなあざとい仕草に毎回やられると思うなよ!
「もー、仕方ないなぁ」
「キュ!」
はっ! いつの間に……! 普通にリックに渡しちゃってたぁぁぁ!
「て、適当な時には使うなよ? 本当にピンチの時とかに使うんだぞ?」
「キキュ」
「クマー……」
「ヤー……」
し、視線を感じる……!
「いや、ほら、リックも一人で食べる訳じゃないからさ? な?」
「クマ……」
「ヤ……」
圧倒的ジト目!
「分かった! 残った1つはみんなで分けよう! ほら、かき氷作るって話だったし、それのシロップにこれの果汁を混ぜるんだ! 他のベリー系と一緒にさ! な? おいしそうだろ?」
「クマ!」
「ヤヤ!」
「え? 指切り?」
こんなことどこで覚えてくるんだよ……。仕方ない、ここはちゃんと約束しておこう。
「ゆーびきーりげーんまーん」
「クーママーマ」
「ヤヤヤー」
クママは指デカすぎるし、ファウは逆に小っちゃすぎて、小指絡めるの難易度高すぎ! まあ、何となくで済ませたけど。
フロストベリー、もうちょっとほしいな。できれば人数分。
そう思っていたんだが、その後入り江でフロストベリーをゲットすることはできなかった。どうやらレアであるらしい。
ただ、フロストベリーは手に入らなかったが、またまた違う発見があったのである。
飽きもせず、全ての入り江で海中探索を行うペルカとルフレ。俺としてはありがたいけど、そんなに貝が食べたいのか?
浜辺で貝殻やスノウベリーを採取しつつ待っていると、2人が勢いよく海から上がってくる。ただ、妙に勢いがあるな。
「ペペーン!」
「フムムー!」
「ど、どうした2人とも? ていうか、引っ張るなって! 海に引きずり込まないで! ちょ!」
海の中から慌てた様子で上がってきたペルカとルフレが、俺のことをグイグイと引っ張り始める。
多分、海の中で何か大きな発見したんだろうが――。
「あ! 冷たい! メッチャ冷たい!」
「ペーン!」
「フムー!」
「ぎゃー!」
「ペペーン!」
「フームムー!」
ちょっと待ってぇぇぇ!
体調不良のため、更新を1度飛ばします。次は8/28予定です。申し訳ありません。




