770話 ブラッドオーガ・リベンジ
ブラッドオーガ戦は2度目ということで、皆の動きに迷いはなかった。当然、対策もしているからな。
ジークフリードたちは同じように騎乗してはいるが、その装備が違う。以前よりも重装備なのだ。馬たちも鎧を着こんでいる。
あえて重装備をすることで、機動力を削っているらしい。前回は狭すぎて速度を活かせなかったからな。
最高速で駆けたら、あっという間に壁にドンだ。ならばと、自分たちの速度をわざと落とすことで、狭い場所でも安定して戦えるだろうと考えたらしい。
狭い場所での試運転は既に済ませてあるようなので、問題ないだろう。
俺もキャロに乗っている。ぶっちゃけ俺のプレイヤースキルじゃブラッドオーガから逃げ続けるの無理だもん。
「キャロ、また頼むぞ?」
「ヒヒン!」
「メルムもな」
「ニュ!」
うちの面子はキャロ、メルム、ファウ、ルフレ、ペルカ、アイネ、リリスという面子だ。雪上戦闘ができる子がやはり多いね。
あと、闇吸収が使えるメルムは要と言えるので、外せないだろう。
序盤は、こちら有利で進んでいく。攻撃パターンも分かっているので、被弾はほぼナシだ。それどころか、ジークフリードたちが相手のモーションを説明したり、回避方法の説明をする暇さえあった。
「ぬふっ! このモーションは真上からの振り下ろし! サイドステップにて簡単に回避ができます! これこのように!」
「この攻撃は出が速いが、軽い! 前衛なら盾で捌くのがいいぞ!」
どうやら、攻略動画になるように気を使ってくれているようだ。迫力ある映像を撮れたらよかったんだが……。余裕あるな。いや、有難いけどね!
「ここが隙だぁぁ!」
「このタイミングで背中ががら空きになる。そこで一回攻撃を入れられるよ!」
騎士たちによる騎乗モードでの攻略動画は、順調に撮影が進んでいく。まあ、需要がどこまであるかは分からんけど、やつらの華麗な戦闘を見るだけでも十分面白いだろう。
「ここで――」
「ガァァァ!」
「ぶげらっ!」
「ちょ、ラモラーック!」
あいつカメラ目線してたせいで攻撃くらいやがった!
ただ、重装備だったお陰で死に戻りはしなかったのだ。ある意味、今回の作戦の正しさが証明された瞬間だった。
その後も、映え狙いで無理したリチャードがぶっ飛ばされたり、カメラに映りたがったハナズオウがちょっとだけ無茶してレーが死にかけたりはしたけど、なんとか全員揃って終盤を迎えていた。
「ガアアアァァァ!」
「よーし、ここからは作戦通りで!」
「おう! メルム、これが最後だ! 頼んだぞ!」
「ニュッニュー!」
「ファウもだ!」
「ヤヤー!」
メルムがブラッドオーガの背中に上手く引っ付き、オーラを吸収していく。そして、やつの身を守る光が消え去った瞬間、俺たちはいっせいに動き出した。
「ヤーヤヤー!」
ファウが炎聖召喚exを使い、大きな火炎を生み出す。そして、最も強いバフを重ね掛けした。これはファウの歌には珍しく、攻撃力を上昇させる代わりに防御力を減らすデメリット有りの曲である。
その分、効果はかなり高いけどね。それが二重なので、メリットもデメリットもさらに倍だ。本当に、最後の最後に使う決戦用の使い方だろう。
「よっしゃ! アクアチャージ!」
俺がまず使用するのは、次に放つ水魔術の威力を上昇させる代わり消費を三倍にするという術だ。
長丁場では使いどころが難しい術だが、トドメを放つには最適だった。そこから放つのは、俺の持つ一番強い攻撃だ。
「人馬流奥義・五連星! そして、アクアクラッシャー!」
アクアクラッシャーは、覚えたばかりの水魔術だ。直径2メートルほどの水の塊を頭上に生み出し、それを高速でぶつける単体攻撃用の術である。
特殊効果はないが、威力は現状で一番強い。アクア・チャージを使ったことで、いつもよりサイズが大きいな。それに人馬流奥義・五連星を併せることで、一気に5つの大水塊が出現した。
「お、俺もついに、ボス相手に自信を持って使える技が……!」
「ペン?」
「おっとぉ! 感動してる場合じゃなかった! みんなもやれ! 本気でいいぞ!」
「ペペーン!」
「デビー!」
「ニュニュニュー!」
メルムの風魂覚醒が、ブラッドオーガのHPを目に見えて削る。やっぱ強いね! 俺はそこからさらにモンスたちを入れかえ、それぞれの最強技をドンドンぶっ放していった。
ドリモとアコラのダブルドラゴンが痛撃を与え、ファウの地魂覚醒がさらにダメージを積み重ねる。しかも、ファウはそれで終わりじゃないからね。
「ヤヤヤー!」
炎聖がブラッドオーガに命中し、大爆発を引き起こす。だが、まだ倒せていないか! あとちょっとなんだが――。
「ぬふふふ! 白銀さんたちが作ってくれたこのチャンス! 無駄にしませんよぉぉ!」
レーとハナズオウが突っ込んだ。相変わらず諸刃の剣系バフてんこ盛りの、やるかやられるか状態である。あいつ、動画向きの超ロマンビルドだよな。
「私のこの太く鋭いランスをあなたの尻にぶち込んで昇天させてやりましょぉぉぉぉぉ!」
「グオオォォォォ!」
いかがわしい! やめて! 決着の場面が動画に載せられなくなっちゃうから!
7/15に、書泉ブックセンター様で呪われ料理人の発売記念サイン会を行わせていただきます。
書泉様のオンラインストアでまだ参加券が購入可能ですので、前回参加できなかった方もぜひ。




