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767話 料理動画


 とりあえず、ブラッドオーガとの再戦までに1つ目の動画を撮影してしまうことにした。


 料理動画なわけだが、どんな料理にしようか? そう悩んでいたら、インベントリにある食材があることを思い出す。


「これなら見栄えもいいし、話題性抜群だろ! 絶対にいける!」

「フムー!」

「ペペン!」


 料理技能があるルフレと、あまり関係ないペルカも大喜びだ。


「マグロの解体ショー! やってやろうじゃないか! ルフレ、手伝ってくれよ?」

「フムー!」

「ペーン!」


 だからなぜペルカが気合を入れる? おこぼれ狙いで手伝ってくれるの? まあいいけど。


 足りない食材や調味料、食器の手配を終えたら、早速撮影開始だ。


「それじゃ、動画撮っていくぞー。カメラは自動撮影モードにしてっと」


 自動撮影モードはちょっと離れた場所から、最適な距離や画角を保ちつつ撮影を行ってくれるという初心者用のモードだ。


 撮影玄人には敵わないだろうけど、仕方ないのだ。それに、動画はあとで編集も可能だしね。やったことはないけど、結構簡単らしい。


「どもー。テイマーのユートです。今日はイベントに向けて動画を撮っていきます! 手伝ってくれるのは、うちのモンスたちです。まずは、水精のルフレ!」

「フムー」

「やる気満々のペルカ! 氷要員ですね」

「ペペーン!」

「さらに、手先が器用なサクラ」

「――♪」

「最後は腕力要員のドリモさんだー!」

「モグモ」

「それ以外にも、にぎやかし要員たちがチョロチョロと登場するかもしれません」

「ムムー!」

「キキュー!」


 カメラの奥ではオルトと、その頭の上のリックがアピールしている。色んなモンスがワイワイ見切れるのも楽し気でいいだろう。


 愉快なメンバーたちを紹介しつつ、俺は丸のままのマグロをキッチンの台に取り出した。やっぱマグロ一匹は迫力があるね!


「このビギニマグロを解体していきます!」

「フム!」

「ペン!」


 リアルなら素人がマグロ解体なんて無謀でしかないが、ここはゲームの中。料理スキルがあれば何とかなるのだ。


「まずは頭を落としていきます! ここで活躍してくれるのが助手のルフレさん!」

「フムー!」


 ルフレが前に出ると、包丁を高々と振り被った。すると、そのサイズが見る見る大きくなっていくではないか。これは、包丁術の効果の1つであった。


 素材の劣化などを防ぐだけではなく、包丁の形を料理に相応しいものへと変化させることができるのだ。


 現在は刀のような、マグロ包丁の形へと姿を変えている。そのマグロ包丁をシャキーンと構えるルフレ。形状がまんま武器なので、ちょっと強そうだ。


「フームムー!」

「おー! すごいぞルフレ!」


 テンションアゲアゲのルフレはマグロのエラ部分に包丁を当てると、さほど苦労した様子もなくその頭を綺麗に落とす。料理スキルのお陰なのだろう。


「よっ。結構重いな。ドリモ、そっちに置いてくれ」

「モグ」

「ペルカ、氷で冷やしておいてくれ」

「ペペン!」


 本当はしまった方がいいんだが、今回は撮影がメインだからな。マグロを解体するルフレの後ろに、巨大な頭がドーンと置いてある絵はぜひ欲しいのだ。


「次はどうする?」

「フム!」


 そこからはルフレの独擅場だった。腹を裂いて内臓を取り出し、各ヒレを落とし、マグロを部位ごとに切り分けていく。


 小さい魚を捌くのとそう変わらない速度だ。横にいるサクラに時おり手助けしてもらいながら、5分ほどで解体を終えていた。


 俺はその間、切り分けられた各部位をカメラに映してにぎやかしである。だってやることないんだもん。いやー、持つべきものは料理が得意で魚介好きの従魔だね!


「おー! 大トロがこんな大量に!」

「ペーン!」

「味見を……いや、ダメだ! ちゃんと全部完成してからな!」

「ペペン……」


 そんなしょんぼりされたら罪悪感が! でも、つまみ食いをし始めたら絶対に止まらなくなる自信があるのだ。ここは心を鬼にして、先へと進むぞ。


「まずは、この巨大な頭だな! 何を作ろうか」

「フム!」

「お? ルフレには何か作りたい料理があるのか?」

「フムムー!」


 ルフレはマグロの頭を頭上高々と持ち上げると、そのまま調理場のオーブンへと突撃していった。


 オーブンの中にマグロの兜を入れると、香草類を周囲に並べ、その上から醤油や酒の合わせ調味料をかけていく。扉をパタンと閉じて、スイッチを押せばあとは兜焼きの完成を待つだけだ。


「楽しみだな」

「フム」


 時間をチェックしてみると、なんと30分もかかるらしい。これは、ゲーム内の料理では破格の時間だ。まあ、デカいし、それだけ量もできるのかな?


 オーブンが1つ埋まってしまったが、あと1つあるから大丈夫かな? 実はこの撮影の前に、ホームの万能工房・二型を三型にアップデートしたのである。


 5000万もかかってしまったが、その価値はあるだろう。キッチンはさらに巨大になり、色々な調理器具が充実していた。


 オーブンは業務サイズのものが2つ付いているし、おいしいピッツァが焼けそうな石窯や、業務用の電動ホイッパーや、全自動ミンサーなども面白そうだ。


「俺はお寿司を作るかな。サクラ手伝ってもらっていいか?」

「――!」

「フム!」

「ペペン!」


 ルフレはペルカと一緒に何かを作ろうとしているようだ。なんだ? あっちも楽しみだな。そしてドリモさん。


 自分の仕事は大体終わったと悟ったのか、オーブンの横に静かに移動している。番をしてくれるってことなんだろう。


 仕事をしっかり理解しているできる漢! さすがだぜ!


今月末に出遅れテイマー最新12巻が発売されます。

特典SSが付く店舗さんなどもありますので、ぜひよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
ビギニマグロをビキニマグロに空見した( '-' )
[一言] よくある不遇職扱いされた生産スキルの戦闘応用みたいな感じで敵を食材に見立てて包丁で解体とかは…厳密なゲームだから無理か
[気になる点] そういえば、現状のプレイヤーのお財布事情が気になりますね。 確か、日本家屋の価格が数百万でしたが、なんとなくですが今でも一千万以上の買い物はエンドコンテンツレベルで、装備や手持ちの加工…
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