表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
770/873

765話 白熊さん


 白熊に発見されないよう、ゆっくりと斜面を下りていく。どうみてもボスだし。このエリアのボスに俺たちだけで挑んだって、勝てるわけがない。


 発見される=死だ。


 俺たちは息を殺し、少しずつ進んだ。


 よし、白熊はまだ寝ているな。このまま皆で慎重に――ピッポーン。


「!」


 アナウンスの告知音! やっべー、体がビクッてしちゃったよ!


「……」


 セーフッ! あっぶねー!


 何てことしてくれんだ運営め! いや、通知切ってない俺が悪いんだけどさ!


 運営によって殺されかけるというアクシデントはあったものの、俺たちは何とか丘を降りきっていた。白熊までは50メートルほどの距離だろう。


 このまま波打ち際に広がる岩場を越え、流氷へと向かうのだ。ここからでも、遠目にペンギンがいるのが見える。


 だが、俺たちはその場で足を止めた。


「……」


 静かに白熊を見つめる。今、動かなかった? 気のせいか? しかし、モンスたちの表情を見れば、俺の気のせいではなかったと分かる。本当に動いたのだ。


 寝返り的なことか? ビビり過ぎて、白熊のありとあらゆる変化が恐ろしく感じてしまうのだ。


 俺たちは白熊を気にしながら、さらに歩を進めた。そして、再び動きを止める。


「?」


 なんか、俺も体の震えが大きくなってないか? それに、寒くなってきた。暖房石の効果はまだ生きているのに……。


 今まで以上に寒いエリアに入ったってことなのかもしれない。より慎重に動かないと、転んでしまいそうだ。


 コケて大きな音を上げたら、絶対に白熊が起きてくるだろう。慎重に、慎重に――。


「へくち!」


 ちょ、俺の口から可愛いくしゃみ出たー! さすが美形アバター。あざといくしゃみだ! 違う! どうして!


「くしゅん!」

「くちゅん!」

「はふん!」


 アイネとファウのくしゃみは分かるよ? アコラのそれはくしゃみなの?


 いや、今はそれよりも重大なことがあったぁ!


「ガアアァァ!」

「ですよねー!」


 寝起きの白熊さん激オコですわー!


「くっそ! 逃げるぞ!」

「クマー! クママー!」


 うん、今のクママが何を言いたいのか分かるぞ? なんでくしゃみしたんだと、文句を言っているに違いない。


 俺だって知りたいよ! そもそもこのゲームのアバターに、くしゃみをする機能があるだなんて初めて知ったよ!


「ボスフィールドは発生してないし、逃げ切れるはず――」

「ガアアウゥゥゥゥ!」

「うぎゃっ!」


 背中になんか当たったぁ! ぶっ飛ばされながらも首を捻って背後を確認する。すると、俺がどんな攻撃を食らったのかよく分かった。


 大きな雪玉が飛んできていたのだ。さらにその攻撃を食らい、俺は雪に埋もれることとなる。ダメージもかなりあるが、それ以上に体に纏わり付く雪が邪魔だ。


 手で払い落とそうと思っても、全く取ることができなかった。状態は『氷雪』となっている。行動阻害の効果があるようだ。


 そこに白熊が突っ込んでくる。


「ガァァァァ!」

「クックマ!」

「フマー!」


 クママとアイネが果敢に割って入ってくれるが――。


「ガオオオオ!」

「クーマー!」

「フママー?」


 一撃で吹き飛ばされた! 死に戻ってはいないが、相当なダメージだろう。しかも、白熊は一切の動きを止めず、たった数歩で俺の目の前へと迫る。


「やべぇ! 超帰還の玉、起動! ホーム!」


 俺が叫んだ瞬間、クイックメニューに設定してあった超帰還の玉が起動した。このアイテムは、フィールド上のどこからでもホームかリスポーンポイントのどちらかに戻れるというアイテムだ。


 お高いので乱発はできないが、ここぞという時の緊急脱出用に1つ買っておいたのである。持っててよかった超帰還の玉!


 畑に戻ってきた俺たちは、精神的疲労のあまりへたり込んでしまう。


「メッチャ強過ぎないか? あれ、普通に勝てる相手? 前衛のクママと、受け技能があるアイネが一瞬で抜かれたぞ?」


 負けイベントじゃないかと疑いたくなる強さだった。まあ、最前線で戦うには、俺たちが弱過ぎたってことなんだろう。


「クマー……」

「フマー……」

「クママ、アイネ。お前らのせいじゃないさ。俺なんか何もできなかったし」


 一撃でぶっ飛ばされたせいで落ち込むクママとアイネを慰めつつ、俺はメールボックスを開いた。


 気分転換に運営からのメールを確認しようと思ったのだ。メールは2つ来ていた。一番上のメールを開いてみる。


「えーっと何々? 第3陣ログインについてのお知らせ?」


 リアルで1週間ほど先に予定されていた第3陣の参戦が前倒しになるらしい。なんと、リアルで明後日。ゲーム内では6日後だ。


 そこで、本来予定されていた第3陣迎え入れイベントを前倒しで行うという。また、突然の決定のお詫びとして、イベントの賞品を少しだけ豪華にするという。


 イベントの名前は、『第3陣にLJOの良さを教えてあげよう! 大撮影大会!』である。最短10秒、最長1時間の動画、もしくは静止画をゲーム内で撮影し、それを公開していいね数を競うというイベントだ。


 動画、静止画、合わせて3つまで出展可能であるという。


 誰でも参加できそうなイベントだ。動画内容は公序良俗に反していなければ何でもいいらしい。


「面白そうなイベントだな!」


 これなら俺も気軽に参加できそうだし、クリエイター(自称)ユートの実力を見せつけちゃおっかな!


6/29に開催されるサイン会ですが、先日から参加券の配布が始まっております。

ホームページやXで詳しい参加方法が記載されておりますので、ぜひチェックしてご参加を!

まじでお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
軽くおウチの日常風景だけで優勝……そして皆も同じ事をしようとすると難易度高過ぎで……
勝ったな!ガハハ!
[良い点] クリエイターというかなんというか シロガネイター?w 白熊は火に弱そうだからガチ攻略になったらファウのあれが文字通り火を吹きそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ