761話 島影
「あー、もう! とりあえず港にいって海でも見ようぜ!」
ルフレとペルカばかり買い食いできてずるいと、ジト目でこっちを見るモンスたちを強引に誤魔化し――誤魔化しきれてないけど、無理やり港に向かった。
途中の露店は全部無視だ!
俺が駆け始めると、モンスたちも後を追ってくる。そのまま走っていると、ちょっとずつ楽しくなってきたらしい。
「フームムー!」
「クーマー!」
「ペペペーン!」
先頭は進化したルフレだ。体が大きくなって、走るのも速くなったらしい。まあ、中身は変わってないけど。一見おしとやかなのに、スカートをバサバサと蹴立てながら全力疾走だ。
その後ろを走るクママは、ボスボスとゆったりした感じなんだけど、大股なのでそれなりに速い。
そんなクママを、雪の上を腹ばいで走るペルカが追い抜き、リックはその背の上にちゃっかりと便乗中だ。
完全にレース状態だな。
ファウやアイネは左右を飛びつつ応援している。アコラは相変わらず俺の背中にいるけどね。マイペースな子である。
というか、あっという間に追い抜かれたぜ。敏捷低いから仕方ないけど。
そのまま大通りを走っていくと、前方が開けているのが分かる。
「うぉー、海だー!」
「ペペーン!」
「フムー!」
ペルカとルフレは大喜びだけど、他の子たちは「まあ、海だよね」って感じだ。さっきも来たし、もう普通に感じるんだろう。
「さっきまでいた港よりも、大きいな」
それに、柵やベンチが整備され、ちょっとだけ公園っぽくなっている。
俺たちは波止場に設けられた柵に近寄り、海を眺めた。雪がチラチラと舞い落ちるあいにくの天気だが、北の海にはこれが似合っている気もする。
湾には流氷が浮き、オホーツク感満載だ。アザラシとかがひょっこり顔をのぞかせそうな雰囲気すらある。
ワクワクしながら海を見つめていると、俺はあることに気が付いた。
「海の向こうに、山みたいなのない?」
「フム!」
「ペン!」
「やっぱ見えるよな」
曇って煙る灰色の海の向こう、大きな何かの影が見えるのだ。少し大きめの氷山というレベルじゃない。
明らかに大きな島影だ。
海がマップの終着点かと思っていたが、そうじゃないのか? もしかして港の大きな船でさらに進める?
考えてみたら、まだサービス開始したばかりだ。マップが埋まり切るわけがない。ここがこの大陸の端だとしたら、海を越えて違う大陸へと行く方法があるはずなのだ。
俺は急いで港へと向かい、そこで釣りをしている男性に声をかけた。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだい? 今日はあまり釣れてないよ」
おっと、話しかける人を間違えたか? ちょっと不機嫌そうだ!
だが、ここで話を切り上げるのも不自然だ。俺はできるだけ下手に聞こえるように、男性に質問をした。
「あー、その、釣果じゃなくて、あの大きな島影について聞きたいんですけど……」
「ああ、北の島のこと?」
お? 興味を持ってくれたか? しかし、島だって?
「やっぱり島があるんですか?」
「ああ。結構大きな島があるよ。人も住んでいて、色々な産物もあるんだ。だから、船が行き来してるよ」
「お、俺たちでもその船に乗れますかね?」
「さあ、そこまでは分からないなぁ。確か定期船があるはずだけど」
おお! 定期船! それなら俺たちも乗れるんじゃないか?
まだこの町の周辺も探索してないのに! でもデカい船に乗ってみたい!
「ど、どこに行けばその定期船に乗れますかね?」
「そこの海洋ギルドに行ってみるといいよ。色々担当してるはずだから」
「ありがとうございます! 行ってみます!」
「フムー!」
「ペペーン!」
「はは、頑張って」
釣り人さんに見送られながら向かった海洋ギルドは、かなり大きな建物であった。さすが港町だけあって、仕事も多いんだろう。
そう言えば、従魔ギルドもまだ見つけてないんだよな。探さないと。
やばい、行きたいところがあり過ぎる。でも、今は目の前の海洋ギルドだ。
「いらっしゃいませー」
中に入ると受付にいる美少女が出迎えてくれた。水色の髪の毛の、ちょっとルフレにも似た容姿の女性だ。海に関係したNPCって感じだった。
ユルフワな髪の毛と、垂れ眼がおっとりとした印象を与える。
3人娘のフィルマと同じ、人魚系の種族なんだろう。耳が魚のヒレのようになっている。
「海洋ギルドにようこそ。何か御用ですか?」
俺は港から見える北の島に行きたいという目的を告げた。すると、普通に定期船の運賃を教えてもらえる。
「従魔ちゃんも、1人として数えますけどいいですか?」
「それは、はい。運賃払えれば、普通に乗せてもらえるんですか?」
「勿論です。北の島への渡航は、特に制限されてるわけでもないですし」
特に乗船の条件とかはないらしい。
1日に6回往復しているそうなので、時間を調べておけばそうそう乗り逃すことはないだろう。
「北の島、簡単に行けそうだな」
「フム!」
「ペペーン!」
まあ、島へ行く前にログアウトだけどね!
GCノベルズ10周年記念企画の1つとして、サイン会を行わせていただくことになりました。
日時:6/29 13:30~ 場所:秋葉原メロンブックス様 店舗受取会館3F
詳しいことは、GCノベルズ様のXやメロンブックス様のHPにて確認できると思います。
正直、当日人が集まらなかったらどうしようと、今からドキドキ状態なんですよ……。
興味が少しでもあるという方、ぜひ参加してください!
あの伝説のジョイマンさん状態を回避するためにも! よろしくお願いいたします!




